著者
宮本 顕二 宮本 礼子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.186-190, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
8

わが国では終末期の高齢者が経口摂取困難になると経管栄養(胃ろう)や経静脈栄養などの人工栄養を行うことが多い.しかし,筆者らが現地調査したスウェーデン,オランダ,オーストラリアではそれらは行われず,アメリカ,オーストリア,スペインでもまれにしか行われていなかった.これらの国では高齢者が終末期に食べられなくなることは自然なことであり,人工栄養で延命を図ることは倫理的でないと考えられている.
著者
若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.81-86, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
16

誤嚥性肺炎患者には,発症前からサルコペニアや低栄養を認めることが多い.また,誤嚥性肺炎の発症でサルコペニアや低栄養がさらに悪化して,摂食嚥下機能や呼吸機能が低下しやすい.そのため,誤嚥性肺炎とサルコペニアの悪循環を断つことが,誤嚥性肺炎予防に重要である.それには,リハビリテーション栄養の視点による医原性サルコペニアの予防や,攻めのリハビリテーション栄養管理によるサルコペニアの改善が求められる.全身のサルコペニア予防が,摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防につながる.また,誤嚥性肺炎入院時の「とりあえず安静」「とりあえず禁食」「とりあえず水電解質輸液」の指示が,医原性サルコペニアやサルコペニアの摂食嚥下障害の原因であり,誤嚥性肺炎の再発につながる.サルコペニアとリハビリテーション栄養を視野に入れたチーム医療を臨床現場で実施して,医原性サルコペニアと誤嚥性肺炎を予防してほしい.
著者
佐竹 將宏 塩谷 隆信 高橋 仁美 菅原 慶勇
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.286-290, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
23

6分間歩行試験(6MWT)は,運動耐容能を評価するフィールド歩行テストのひとつであり,呼吸運動療法には必須の評価項目である.6MWTは2002年ATSからガイドラインが発表され方法の統一が提案された.2014年にはERS/ATSからシステマティック・レビューとテクニカル・スタンダードが発表された.6MWTの一次評価項目は6分間歩行距離(6MWD)である.6MWDの予測式はEnrightらによって報告されている.日本人の予測式は間もなく本学会から報告される予定である.6MWTは,「6分間にできるだけ長い距離を歩くこと」と定義されている.我々は6MWTの運動負荷は定常負荷であること,また携帯型呼気ガス分析装置等を用いて,6MWTの負荷強度は嫌気性代謝閾値以上であることを示唆した.近年,6MWTは多くの呼吸器および循環器疾患の運動耐容能の評価に必要な検査となってきている.6MWTについて,その生理学意義や特性を理解し,さらにどの施設においても標準的な方法で実施できることが大切である.
著者
寺本 信嗣
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.231-235, 2012-10-31 (Released:2016-04-25)
参考文献数
13

経口摂取困難な高齢者や誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者に対する,栄養摂取は重要な課題である.このような高齢者では,経口摂取を一時的に中止し,経管や経静脈的な栄養管理が必要になる.この際,経皮内視鏡的胃瘻増設術percutaneous endoscopic gastrostomy(PEG)は,重要な選択肢の一つである.しかし,PEGは優れた栄養療法であるが,不顕性誤嚥に対する十分な予防策ではない.脳梗塞後の患者で早期に栄養介入を行うことは予後を改善するが,PEGを選択することで肺炎が減るわけではない.したがって,PEGによる栄養療法を導入する場合,平行して肺炎予防策を講じる必要があり,食事を摂っていなくとも,口腔ケア,嚥下リハビリテーションを行い,胃腸の蠕動運動の改善,胃食道逆流の予防などを行うことが大切である.
著者
垣内 優芳
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.206-209, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
17

【背景と目的】最長発声持続時間が嚥下障害者の自己排痰の可否とどのような関係にあるのかは不明である.本研究の目的は,自己排痰可能群と不可能群の最長発声持続時間を比較検討することである.【対象と方法】対象は入院中のFood Intake LEVEL Scaleが10未満の患者である.基本情報,自己排痰の可否を調査し,対象者を自己排痰可能群と不可能群に分類した.両群において,最長発声持続時間を測定した.【結果】対象者は自己排痰可能群10名,不可能群10名であった.不可能群の最長発声持続時間は3.3秒であり,可能群の8.8秒に比べ有意に低値であった.【考察】不可能群の最長発声持続時間低値は,嚥下機能の低下に関連し,同時に咳嗽メカニズムの第3相(圧縮)不足による咳嗽機能低下を併発していると考えられた.【結論】不可能群の最長発声持続時間は,可能群に比べ有意に低値であり,嚥下障害患者の自己排痰の可否を判断する見極めに最長発声持続時間が有用である可能性が示唆された.
著者
井元 淳 甲斐 尚仁 真名子 さおり 片山 亜有 新貝 和也 千住 秀明
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.385-390, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
38

本研究では,誤嚥性肺炎発症の因子を考察し,その予防や発症後のアプローチの検討を行うため,誤嚥性肺炎患者と非誤嚥性肺炎患者の唾液分泌量と日内リズムについて明らかにすることを目的とした.対象は誤嚥性肺炎で入院となった10名(誤嚥群)と,その他の疾患で入院となった10名(非誤嚥群)の計20名(年齢87.9±7.9歳)であった.方法として唾液分泌量,摂食・嚥下能力,食事の種類,身体活動性などを評価した.その結果,誤嚥群では摂食・嚥下能力とともに身体活動性が低いことで誤嚥性肺炎のリスクが高まっていた.また唾液分泌量の日内リズムでは夜間の唾液分泌量は両群とも低下していた.以上の結果から,誤嚥群では口腔環境の不良による肺炎発症のリスクを高めていることが示唆された.本研究によって,肺炎の発症を予防するためには,唾液分泌量の増量と睡眠前の口腔ケアなどによる口腔環境の改善を図ることの重要性が示された.
著者
和田 治 飛山 義憲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.163-167, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
30

人工膝関節全置換術のリハビリテーションは術前期,急性期,回復期,維持期に分けることが出来る.これまで諸外国を中心に各々の時期のリハビリテーションに関するエビデンスが蓄積されてきている.具体的には術前からの患者教育を含めたリハビリテーションが術後の期待値調整や不安の軽減に有効であることが示唆されている.急性期から回復期では低周波刺激装置を用いた筋力トレーニングが術後の筋力回復に効果的であることが報告されている.一方,回復期から維持期では,身体活動量の向上が目標の1つとなるが,身体活動量向上のための介入方法に関するエビデンスは極めて少ない.当院ではこれらのエビデンスを元に,術前患者教育を含めた介入,術後翌日からの低周波刺激を併用した筋力トレーニング,回復期から維持期での身体活動量向上を目的としたウォーキングプログラムを実施してきた.本論文ではシンポジウムにて発表した内容をまとめることとする.
著者
篠原 史都 飯田 有輝 森沢 知之 山内 康太 小幡 賢吾 神津 玲 河合 佑亮 井上 茂亮 西田 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.84-90, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
20

【目的】重症患者における入院関連能力障害(HAD)と退院後の介護予防の必要性との関連を調査することである.【対象と方法】2021年9月から2022年3月にICUにて48時間以上の人工呼吸管理を施行した20歳以上の患者を対象とする前向き観察研究である.HADの有無の2群で背景因子,退院3ヵ月後の転帰と生活状況等について比較した.生活状況の調査は基本チェックリストを用いて郵送にて行った.また,多重ロジスティック回帰分析を用いてHAD発生に関与する因子を抽出した.【結果】65例が解析対象者となった.HADは21例に発生した.HAD群で退院3ヵ月後の運動機能低下とフレイルの割合が有意に高かった.また,HAD発生の関連因子としてICU退室時の握力とFunctional Status Score for the ICU合計が抽出された.【結論】HAD群で退院3ヵ月後にフレイルを呈した症例が多かった.
著者
磯村 毅
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.62-65, 2019-05-31 (Released:2019-06-28)
参考文献数
9

喫煙には他の依存症と共通する神経学的変化(1.依存対象に対する永続する報酬系の過敏化,2.依存対象以外の報酬(食事・金銭など)に対する報酬系の反応性低下,3.前頭葉による制御機能の低下など)がある.しかしこれらの神経学的変化を喫煙者は必ずしも自覚しておらず,認知のゆがみが生じ,心理的にも禁煙が困難となっている(失楽園仮説).特に2の変化は自覚されにくく,ニコチンにより手軽に報酬が得られる喫煙の評価・優先順位が高くなってしまう.例えば食後の喫煙は至福の時と考える喫煙者は多いが,当人たちの認知とは裏腹に,これはニコチンの慢性作用に起因する食事の幸せに対する感受性低下を喫煙で対償しているに過ぎない.また禁煙後の生活を悲観する喫煙者は多いが,逆に禁煙に伴う報酬系機能の回復の可能性も示唆されている.これらの知見は喫煙者に客観的な視点を提供し,自らの喫煙行動を再考し禁煙への内的動機を高める契機となると期待される.

7 0 0 0 OA 吸入療法のABC

著者
玉置 淳
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-52, 2015-04-30 (Released:2015-09-11)
参考文献数
11

吸入療法では薬剤が局所に高濃度かつ急速に到達するため,経口投与に比較してより高い薬理作用と迅速な効果発現が期待できるのみならず,全身的な副作用が少ないというアドバンテージがある.吸入された粒子の肺への沈着は,粒子径,比重,親水性,荷電などの他,吸入操作や呼吸機能によって規定される.喘息やCOPDの長期管理における吸入療法では,MDI, DPI, SMIなどのデバイスを用いてβ2 刺激薬や吸入ステロイド, 抗コリン薬,それらの配合剤などが投与される.しかし,これら慢性気道疾患のコントロールは必ずしも良好とはいえず,その要因の1つに患者の服薬アドヒアランスが低いことが挙げられる.したがって,疾患コントロールの向上を目的とした対策として,患者教育とならんで,病診連携や病薬連携による丁寧な吸入指導が必須である.
著者
百瀬 泰行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.337-344, 2015-12-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1

気管支喘息,COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の薬物治療において吸入薬は中心的な治療薬であり,治療効果をあげるには適切な吸入指導が必要となる.吸入指導は,単に吸入薬の操作や吸入動作を説明するのではなく,治療効果ならびにアドヒアランス向上を目指すことを念頭におき指導内容を考える必要がある.そのためには,少なくとも,吸入薬の重要性の説明,吸入操作指導,吸入動作指導,副作用防止についての説明は必須である.これら項目を適正に,かつ指導に関わる多くの医療職種間で連携しながら実施してくことが重要である.
著者
菊池 弘恵 長谷川 悠子 三宅 裕子 大野 典子 山根 正也 細井 慶太 閔 庚燁
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.176-181, 2013-08-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
12

フィルム材の鼻根部への貼付,熱吸収シートの鼻根部への貼付と白色ワセリンの非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)マスク面への塗布の3つの方法によるNPPVマスク接触部の皮膚の発赤発生率の低減効果を41例の患者を対象として一部前向き介入研究を含む観察研究で比較検討した.鼻根部の発赤発生はフィルムを貼付した20例では11例(55%),熱吸収シートを貼付した7例では4例(57%),白色ワセリンを塗布した例14例では1例(8%)であり,白色ワセリンが他の2法より有意に少なかった(p<0.05).また白色ワセリンのもつ,ずれ応力の低減性や保湿性は褥瘡予防ケアに基づいており,皮膚の脆弱な高齢者でも安全に使用できるだけでなく管理が簡便で経済的な方法であることが示された.白色ワセリンをマスクの皮膚接触面に塗布する方法はNPPVマスクによる皮膚障害を予防する方法として広く利用されることを推奨したい.
著者
片山 均 三好 誠吾 片山 晋 都築 佐枝 片山 衣子 石井 美喜 山口 和子 水内 泰子 片山 純
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.120-125, 2019-05-31 (Released:2019-06-28)
参考文献数
22

【背景】一般人の肺への健康意識を高めるために肺年齢の普及が進められているが,測定には最大努力呼気が必要である.【目的】安静換気中に測定可能な強制オシレーション法(Forced Oscillation Technique: FOT)を用いて肺年齢を推定する.【対象と方法】2017年4月から2018年5月までにFOTとスパイロメトリーを行った18歳以上の男女114例を後ろ向きに検討した.84症例で肺年齢と実年齢の差(実測肺年齢差)とFOT測定値との相関を求めてFOT測定値から肺年齢の推定式を作成し(開発研究),別の30症例で作成した肺年齢推定式を検証した(検証研究).【結果】開発研究において実測肺年齢差は呼吸リアクタンス,共振周波数および低周波数面積との間に有意な相関を認めた.開発・検証の両研究において,推定肺年齢と実測肺年齢に強い相関を認め,推定値と実測値の一致度も高かった.【結論】FOTを用いて肺年齢を推定出来ることが示唆された.
著者
辻村 康彦 平松 哲夫 小島 英嗣 田平 一行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.48-53, 2017-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
14

【目的】短時間作用性β2刺激薬(SABA)によるアシストユースがCOPD患者の身体活動量に及ぼす影響を検討した.【対象】長時間作用性気管支拡張薬を使用しているにもかかわらず,日常生活において強い呼吸困難と活動制限があり,SABAのアシストユース未経験の男性10例.【方法】身体活動量の測定には加速度センサー付歩数計を用い,吸入前,吸入後4・12週で評価し比較検討した.また,息切れとHRQOLもあわせて評価した.【結果】アシストユースにより身体活動量は有意な向上を認めた.また,息切れやHRQOLも有意な改善を認めた.【考察】動作前にSABAを吸入することで得られる労作時息切れの改善により,身体活動量は向上し,HRQOLも改善したと考えられた.SABAのアシストユースはCOPD治療において考慮されるべき治療方法であることが示唆された.
著者
井上 順一朗 酒井 良忠
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-40, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
33

がん患者では,がんそのものやがん治療に伴う有害事象や合併症により,体力低下や身体的・精神的な機能障害が生じ,日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下してしまうリスクが高い.そのため,がん種や病巣部位,進行度を考慮したリハビリテーション治療や,がん治療後に生じることが予測される合併症や機能障害を治療開始前から予防するリハビリテーション治療を行うことが重要となる.また,がんの進行に伴い機能障害の増悪や二次障害が生じるため,それらへの適切な対応も必要となる.近年,がん領域のリハビリテーション医療においては,身体的・精神的な機能障害の改善だけでなく自宅療養や社会復帰支援,治療と就労の両立支援などの社会的な側面をも考慮したがん患者のライフステージに応じたサポートを行うことが求められている.これらのリハビリテーション治療やケアを行う際には医学的エビデンスに基づいたアプローチが必要である.
著者
野々山 忠芳 重見 博子 成瀬 廣亮 重見 研司 松峯 昭彦 石塚 全
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.350-354, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
18

症例は59歳男性.出血性ショック,敗血症となりICU入室し,人工呼吸器,PCPS,CHDF管理となった.第4病日よりリハビリテーション開始となったが,平均MRC sum scoreは1.8点であり,ICU-AWと考えられた.同日より両下肢に対する神経筋電気刺激療法を開始した.ICU退室後は離床を開始するとともに,①神経筋電気刺激療法を併用した運動療法,②タンパク質摂取量の 1.3-1.5 g/kg/dayへの設定,③HMBの摂取を開始した.その結果,MRC sum scoreの改善,四肢の骨格筋量の増加を認めた.杖歩行が可能となり第257病日に転院となった.ICU入室中は著明な筋力低下や安静度制限により積極的な運動が困難であったが,神経筋電気刺激療法により早期から筋収縮を促すことが可能であった.また,ICU退室後より運動療法と栄養療法を併用し,筋力,骨格筋量の改善が得られた.
著者
富井 啓介
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.53-57, 2015-04-30 (Released:2015-09-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1

ネーザルハイフロー(NHF)は患者の一回換気量や呼吸数の影響を受けずFiO2をある程度一定に保ちながら,上下気道の死腔に溜まった呼気ガスを鼻腔内への高流量ガスで洗い出し,死腔換気量を減少させることで,呼吸仕事量を減らすことができる.また口を閉じれば気道をある程度陽圧に保つこともできる.さらに加温加湿器と熱線入り回路で37℃相対湿度100%の混合ガスを供給でき,快適性と気道の粘液線毛クリアランスを維持し排痰を促すことができる.このような利点から高い陽圧を必要としない酸素投与全般,すなわち高圧PEEPを必要としないⅠ型呼吸不全や積極的な換気補助を必要としない軽症のⅡ型呼吸不全などが適応となる.多くの場合NPPVの前段階もしくは離脱期に使用され,会話,飲食,排痰,リハビリなどが可能で一般病棟でも実施できるが,終末期を除いて改善が得られない時はNPPVのすぐ開始できる環境での実施が望ましい.
著者
日野原 重明
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.143-148, 2002-12-20 (Released:2018-04-10)
参考文献数
4

チーム医療は,チーム参与者が,医学や看護はサイエンスに基づくアートであるという考え方を認識した上で,患者にはその医療の結果がどういう outcome を示すかを絶えず考えながら,各自の専門性を生かさなければならないことを強調した.そして,EBMとクリニカル・パスがどういう関わり合いをすべきかという点にも触れた.また,ケアは医学的・看護的,そして家庭的ケアに統合されるべきことを述べた.