- 著者
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中川 篤
柳瀬 陽介
樫葉 みつ子
- 出版者
- 言語文化教育研究学会:ALCE
- 雑誌
- 言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.110-125, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)
社会学者のバウマンが指摘する「個人化」の潮流は本来協働的な営みであるはずのコミュニケーションを個人化して考える傾向と連動しているように思われる。しかし,ますます複合的になり,個人で解決困難な問題が増加していく社会においては,多くの人間が協働的に問題への対処を目指すコミュニケーションこそが重要となる。そこで本研究では共同体による問題対処のコミュニケーションについて,精神保健福祉の分野で目覚ましい成果を挙げる当事者研究を題材にして再考した。その際の理論的枠組みは,個人の特性ではなく関係性の特性に注目する関係性文化理論である。再考の結果,当事者研究のコミュニケーションは,特定の関係性を文化として定着させた上でのコミュニケーションであり,その関係性の文化においてコミュニケーションは弱さを力に変えることができることがわかった。