著者
橋場 貴史 狩山 信生 松田 友和 野崎 寛子 浦田 恵 竹田 幸恵 宮地 知世 神谷 正弘 西 真理 塩本 祥子 表 幹也 魚住 和代 正司 佳久 岩田 健太郎 守山 成則
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0747-C0747, 2005

【はじめに】野球選手における上腕骨・肩甲骨に付着する肩周囲筋群の弱化は,肩周囲の機能障害を引き起こす危険因子と考えられている.今回,高校野球選手の肩関節及び肘関節筋群の筋力を測定し,若干の知見を得たので報告する.<BR>【目的】高校野球選手の肩関節及び肘関節筋群の筋力を測定し,1.野球部員投球肢と非投球肢,2.野球部員と一般学生,3.痛みの有無(野球部員)で比較検討することである.<BR>【対象】石川県内公立高校5校男子野球部部員54名(投手を除く),平均年齢17.1±0.6歳,コントロール群:県内公立高校一般男子高校生39名,平均年齢16.0±0.7歳であった.<BR>【方法】今研究にあたり,各野球部監督,責任教諭及び学生たちに研究の趣旨を十分に説明し,データ収集の了承を得た.筋力測定は2004年6月から約1ヶ月間行った.使用機器はパワートラック2MMTコマンダー(NIHON MEDIX社)を使用した.測定項目は1.肩屈曲(90度),2.肩外転(90度),3.肘屈曲(90度)以上端坐位,4.肩伸展(30度),5.肩外旋(90度:2nd),6.肩内旋(45度:2nd),7.肘伸展(0度:肩外転90度)以上腹臥位の7項目とした.筋力測定は,測定項目を投球肢(利き手)及び非投球肢(非利き手)を無作為に選択し,最大等尺性随意収縮5秒間を測定した.測定前には十分に収縮(練習)を行ってから測定した.また,被検者1名に対し,測定者1名,データ記録者1名,体幹等の代償をチェックする者2名と4人一組で測定を行った.今研究前に被検者9名,測定者3名において同様の測定を行い,検者内の信頼性は0.92-0.94,検者間の信頼性は0.85と優秀若しくは良好の結果を得た上で今回のデータ収集を行った.得られた力(N)は筋力(Nm)に置き換えるため,N×m(運動軸からトランスデゥーサーまでの長さ)として求め,比較した.統計処理は,野球部投球肢群・野球部非投球肢群・一般学生利き肢群・非利き肢群の4グループ間を7項目で各々One-way ANOVAを用い,多重比較はScheffeを選択し検定を行った.有意水準5%とした.また,野球部員の中で肩及び肘に疼痛を訴える者(15名)と問題ない者(39名)に分け,投球肢群・非投球肢群・疼痛投球肢群・疼痛非投球肢群の4グループ間を7項目で各々One-way ANOVAを用い,多重比較はScheffeを選択し検定を行った.有意水準5%とした.<BR>【結果及び考察】野球部員投球肢と非投球肢は,7項目全てに有意差は認められなかった.野球部員と一般学生は,投球肢群と利き肢群で肩外旋筋力を除く全ての項目で投球肢群の筋力が有意に高値を示した.非投球肢群と非利き肢群では,全ての項目で非投球肢群が有意に高値を示した.痛みの有無は,疼痛投球肢群と投球肢群の全ての項目において有意な差は認められなかった.野球部員(野手)の投球肢筋力は一般学生に比し高値であったが,外旋筋力のみ同値を示し,全体的な割合から低下している傾向を示した.また,肩・肘における疼痛の有無は,今回の結果から投球肢筋力の問題ではないことがわかった.
著者
橋場 貴史 清水 康史 橋本 茂樹 疋島 千裕 渡邉 奈津希 小林 尚史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CcOF2080, 2011

【目的】一般的に肩関節周囲炎は自然放置していれば治癒すると認識されているが、その病態や病因は多岐にわたり、炎症の終息が遅れ、拘縮を引き起こし長期化するケースも少なくない。病期によって症状が異なるため、患者自身における疾患への理解と時期を見極めた適切な処方は重要である。このような肩関節周囲炎に対しての治療は第一に保存療法が選択されるが、その保存療法の期間に関連する要因を報告したものは散見する。<BR>柴田らは五十肩(凍結肩)を屈曲135°以下と定義しているが、今回は五十肩までの可動域制限を来たしていない肩関節周囲炎患者における保存療法に影響を与える要因を罹患肢の違いや発症からの期間、そして初診時の肩関節可動域(以下ROM)の状態から検討することである。<BR>【方法】対象は平成21年4月から平成22年10月までに当院で肩関節周囲炎と診断され、初診時の屈曲可動域(他動運動)は140°以上であり、保存療法を施行し経過を追えた34名34肩(男性16名、女性18名、利き手側24名、非利き手側10名、平均年齢57.9±12.3歳)であった。保存療法の内訳は、内服+関節注射+運動療法16名、関節注射+運動療法5名、内服+運動療法9名、運動療法のみ4名であった。<BR>収集したデータの項目は、罹患期間、保存療法期間、初診時の肩関節可動域(ROM)とした。期間の設定は、発症から保存療法開始までの期間を以下、罹患期間とした。また、保存療法を開始し、日常生活での疼痛およびROM等の肩関節機能改善が認められ、その時点から約2~4週間の間その症状が安定し、医師の判断で保存療法が終了となった期間を以下、保存療法期間とした。ROMデータは初診時、他動的に測定された肩関節屈曲、外転、下垂位外旋、外転位外旋、外転位内旋のデータを用いた。<BR>【説明と同意】初診時においてデータ収集の目的、使用用途、プライバシーの保護等を説明し、同意が得られた患者を対象とした。<BR>【データ処理】罹患期間、初診時ROM、保存療法期間の平均値を算出した。また罹患期間及び保存療法期間のデータおいて90日未満の患者をA群、90日以上180日未満の患者をB群、180日以上をC群とそれぞれ群分けを行った。<BR>【データ解析】1.罹患肢側おける保存療法期間を比較する為に対応のないt-検定を用い、検討した。2.罹患期間の違うA、B、C群と保存療法期間の関係をpeasonの相関係数で検討した。3.保存療法期間のちがうA、B、C群のROM(肩関節屈曲、外転、下垂位外旋、外転位外旋、外転位内旋)を一元配置分散分析で比較し、多重比較はscheffeを用いて保存療法期間との関連を検討した。各々の有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】今回対象者の罹患期間日数は161.4±157日、保存療法期間は116.1±70.4日であった。罹患肢側おける保存療法期間は、利き手側は112.9±59.6日、非利き手側は123.8±94.8日であった。これらの比較において有意な差は認められなかった。罹患期間と保存療法期間の関係は、A群(n=11)r=0.71 p<0.05で相関を認めたが、B群(n=11)r=0.14、とC群(n=12) r=-0.1は相関が認められなかった。保存療法期間のちがうA、B、C群のROMの比較においては外転位内旋の項目のみ有意にA群が高い値を示した。<BR>【考察】肩関節周囲炎と診断され、初診時屈曲可動域が140°以上の対象者において罹患肢の違いや罹患期間、ROMの状態が保存療法期間に関連しているかを検討した。本研究からは罹患肢の違いによる影響は認められないが、罹患期間が90日未満で早期に保存療法を開始すれば保存療法期間が短くなり、保存療法期間が短いものは外転位内旋可動域が良好であったことが解った。このことから早期に診断を受け、外転位内旋可動域が良好時から保存療法を開始すれば早期に機能改善、治癒に導くことが出来るのではと考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は肩関節周囲炎の原因究明などには役立つ内容ではないが、早期に適切な診断、治療を受けることが症状の重篤化、長期化を予防する上で重要であることが解った。また予後予測や評価・治療及び患者へのインフォームドコンセントなどの一助になり、今回の結果は有用な情報となりうると考える。<BR>