著者
古谷 裕一郎 平沼 知加志 島田 麻里 服部 昌和 道傳 研司 橋爪 泰夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.548-553, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
17

症例は73歳の女性.自動車同士の交通事故にて当院へ救急搬送された.右側腹部に強い痛みを訴え,腹部CTにて肝臓から小腸へ繋がる索状物と索状物による小腸閉塞と口側腸管の拡張を認めた.索状物による腸閉塞と診断し単孔式腹腔鏡下イレウス解除術を施行した.手術所見として,小腸へ繋がるように肝右葉下縁が舌状に伸展し,その部位での腸閉塞を認めた.舌状に伸展した肝をクリップし超音波凝固切開装置にて切離し腸閉塞を解除した.病理学的所見にて肝細胞ならびに胆管の組織を認め,肝副葉(Riedel葉)と診断した.術後経過は良好で,術後7日目に退院した.肝副葉は異常形態の一つで,偶発的に発見されることが多い.また,肝副葉のうち肝右葉より舌状に下方に伸展するものはRiedel葉と呼ばれる.今回われわれは,肝副葉(Riedel葉)による腸閉塞に対して腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する.
著者
大村 健二 金平 永二 佐々木 正寿 疋島 寛 橋爪 泰夫 林 外史英 山田 哲司 北川 晋 中川 正昭 瀬川 安雄 林 守源
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.266-271, 1988-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
8

肝動脈塞栓術(TAE)施行例を, TAE施行前にあらかじめ胆摘を行った群(A群, 8例)と,胆摘を行わなかった群(B群, 50例)に分け, TAE後の生化学検査値の変動および不快な臨床症状と胆嚢梗塞の関係を検討した. TAE後のGOT, GPT, LDHの変動は両群間に差を認めなかった. B群においてTAE後γ-GTP, Al-pはそれぞれ16例(32%), 9例(18%)で上昇したが, A群では1例も上昇しなかった.また,両群ともTAE後高頻度に発熱を認めたが,腹痛はB群で38例(76%)と高率であるのに対し, A群ではわずかに1例に認めたのみであった. B群の8例に対しTAE後に胆摘を行ったが,そのうち6例に胆嚢梗塞の所見をみた. TAE後の血中の胆道系酵素上昇には, TAEによる胆嚢梗塞が関与していることが推測された. TAE後の不快な臨床症状を予防するために,初回手術時に胆嚢摘出術を施行することが有用と思われた.