著者
檜垣 彰吾 岸 昌生 永野 昌志 片桐 成二 高橋 芳幸
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.100, pp.20113, 2007

【目的】マウス未成熟卵子の体外成熟培養時の気相中の酸素濃度および培養時間は研究者間で様々であるにも拘らず、それらが卵子の成熟にどのように影響するかを調べた研究は限られている。そこで、本研究では、成熟培養時の気相中酸素濃度と培養時間が卵子の核成熟動態および胚盤胞への発生能にどのように影響するかを検討した。【方法】供試卵子はICRマウスにウマ絨毛性性腺刺激ホルモンを投与して48時間後に胞状卵胞より採取した。成熟培養は5%ウシ胎子血清、0.23 mMピルビン酸、1 IU/mlブタ卵胞刺激ホルモン、10 ng/mlヒト組み換え上皮増殖因子および、50 μg/mlゲンタマイシン添加したWaymouth's培地に用いて5あるいは20%の酸素を含む気相下で行った。実験1では0-15時間の成熟培養後に核相の判定を行った。実験2では10-17時間の成熟培養を行った卵子を体外受精(TYH培地、5時間、20%酸素下)および体外培養(KSOM培地、120時間、5%酸素下)に供試し、胚盤胞への発生率を調べた。【結果】5および20%酸素下で成熟培養した卵子の卵核胞崩壊は共に培養開始2時間後から見られ、それぞれ培養開始後15および4時間後までに全ての卵子で終了していた。また、第二減数分裂中期(MII期)卵子の出現は共に培養開始7時間後から見られ、その8および3時間後にMII率はプラトーに達した。以上の結果より5%酸素下では20%酸素下に比べて核成熟の進行が同調していないことが示唆された。胚盤胞への発生率は成熟培養時の酸素濃度の影響は認められなかったが、培養時間によって差が見られた。すなわち、両酸素濃度下で10時間培養群(10%)に比べ、12-17時間培養群(30-45%)では有意に高く、12-17時間の成熟培養群間には有意な差は認められなかった。以上の結果より、卵子が十分な胚盤胞への発生能を獲得するためには成熟培養時の酸素濃度に拘らず12時間以上の培養時間が必要なことが示唆された。