著者
松倉 大樹 奥山 みなみ 内倉 健造 山田 未知 片桐 成二 森好 政晴
出版者
公益社団法人 日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第108回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.OR1-9, 2015 (Released:2015-09-15)

【目的】豚の精漿には,子宮や精子の機能調節作用を持つ様々な蛋白質が含まれている。その機能を解析するためには蛋白質組成を知る必要があるが,品種や個体間でその蛋白質組成を比較した報告はほとんどない。そこで本研究では,異なる品種および個体から複数日に渡り精液を採取し,その蛋白質組成を調べた。【方法】精漿は大ヨークシャー種(以下W: n=2), ランドレース種(以下L: n=2)およびデュロック種(以下D: n=4)の3品種と交雑種(以下WLDD: n=1)の計9頭から用手法により採取した精液から分離した。9頭中4頭(W: n=1,D: n=2,WLDD: n=1)からは日をおき複数回(W: 4回,D: 3回, 4回,WLDD: 5回)にわたり精液を採取し精漿蛋白質組成を比較した。精漿蛋白質はSDS-PAGEにて分離し,各蛋白質の分子量および全精漿蛋白質に対する百分比を算出した。【結果】5-180kDaの範囲内では最大19本の分子量の異なるバンドが検出され,組成の約20%を180kDa以上の高分子量蛋白質が占め,約60%を19kDa以下の低分子量蛋白質群が占めていた。19本のうち全個体に共通して見られたバンドは6本であった。その推定される分子量,組成比および組成比のCV値は119.2–122.9kDa,2.3±1.0%, 43%; 96.8–101.4kDa,1.3±0.56%, 43%; 73.3–77.3kDa, 5.8±1.6%, 27%; 61.6–65.3kDa, 7.8±2.3%, 30%; 10.4–11.8kDa,34.7±4.0%, 11.6%; 8.2–9.7kDa, 18.9±3.3%, 17.3%であり(平均±SD),その組成比は個体間でばらつきがあることがわかった。残りの13バンドはその有無が品種で共通のものではなく個体による差が認められた(1–3個体に共通:5本,4–6個体に共通:4本,7–8個体に共通:4本)。採精日間においては,CV値が50%以上のバンドが,Dの1個体で1本(34.0–37.0kDa),Wで1本(61.6–65.3kDa),WLDDで1本(34.0–37.0kDa)あり,CV値はそれぞれ,53%,51%, 56%となった。以上より,個体および採精日によって精漿蛋白質組成比に違いが認められたため,今後はさらに個体数および採精回数を増やして検討する予定である。
著者
檜垣 彰吾 岸 昌生 永野 昌志 片桐 成二 高橋 芳幸
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.100, pp.20113, 2007

【目的】マウス未成熟卵子の体外成熟培養時の気相中の酸素濃度および培養時間は研究者間で様々であるにも拘らず、それらが卵子の成熟にどのように影響するかを調べた研究は限られている。そこで、本研究では、成熟培養時の気相中酸素濃度と培養時間が卵子の核成熟動態および胚盤胞への発生能にどのように影響するかを検討した。【方法】供試卵子はICRマウスにウマ絨毛性性腺刺激ホルモンを投与して48時間後に胞状卵胞より採取した。成熟培養は5%ウシ胎子血清、0.23 mMピルビン酸、1 IU/mlブタ卵胞刺激ホルモン、10 ng/mlヒト組み換え上皮増殖因子および、50 μg/mlゲンタマイシン添加したWaymouth's培地に用いて5あるいは20%の酸素を含む気相下で行った。実験1では0-15時間の成熟培養後に核相の判定を行った。実験2では10-17時間の成熟培養を行った卵子を体外受精(TYH培地、5時間、20%酸素下)および体外培養(KSOM培地、120時間、5%酸素下)に供試し、胚盤胞への発生率を調べた。【結果】5および20%酸素下で成熟培養した卵子の卵核胞崩壊は共に培養開始2時間後から見られ、それぞれ培養開始後15および4時間後までに全ての卵子で終了していた。また、第二減数分裂中期(MII期)卵子の出現は共に培養開始7時間後から見られ、その8および3時間後にMII率はプラトーに達した。以上の結果より5%酸素下では20%酸素下に比べて核成熟の進行が同調していないことが示唆された。胚盤胞への発生率は成熟培養時の酸素濃度の影響は認められなかったが、培養時間によって差が見られた。すなわち、両酸素濃度下で10時間培養群(10%)に比べ、12-17時間培養群(30-45%)では有意に高く、12-17時間の成熟培養群間には有意な差は認められなかった。以上の結果より、卵子が十分な胚盤胞への発生能を獲得するためには成熟培養時の酸素濃度に拘らず12時間以上の培養時間が必要なことが示唆された。