著者
寺澤 捷年 土佐 寛順 檜山 幸孝 三浦 圭子 今田屋 章
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-10, 1987-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

奔豚気病と考えられた5症例を報告した。第1例は19歳女性, 発作性の胸内苦悶感と動悸を主訴とし, 苓桂甘棗湯が著効を奏した。第2例は30歳主婦。交通事故を契機に発症した発作性の身体の熱感と動悸である。桂枝加竜骨牡蠣湯と苓桂朮甘本湯のエキス剤で完治した。第3例は63歳男性。息切れ, めまい感を主訴に来院した。苓桂味甘湯に加味逍遥散を兼用して好結果を得た。第4例は35歳主婦。右半身のシビレと筋肉のヒキツリを主訴に来院。良枳湯が一時奏効したが, 再発し, 小品奔豚湯により寛解している。第5例は47歳主婦で, 動悸発作を主訴に来院。苓桂甘棗湯で主要な症状は改善したが, 心下の痞鞭と熱候があり金匱奔豚湯で良好な経過である。文献的にみると奔豚湯は金匱, 肘後, 小品, 広済など数多く, その方意も異なっている。治験としては苓桂甘棗湯がもっとも多く, 良枳湯, 桂枝加竜骨牡蠣湯, 金匱奔豚湯, 肘後奔豚湯も数例ずつみられる。しかし苓桂味甘湯と小品奔豚湯の報告はなく, 本報告が近年においてははじめての記載である。浅田宗伯は奔豚気病の認識と関心が深く,「独嘯庵, 奔豚気必ずしも奔豚湯を用ひずと言はれたれど, 余の門にては, 奔豚湯必ずしも奔豚を治するのみならずとして, 活用するなり」と貴重な口訣を残している。
著者
関矢 信康 林 克美 檜山 幸孝 並木 隆雄 笠原 裕司 地野 充時 大野 賢二 喜多 敏明 平崎 能郎 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.723-728, 2007-07-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1

漢方治療が奏効した蕁麻疹の4症例を経験した。内容はコリン性蕁麻疹2例, 慢性特発性蕁麻疹1例, 寒冷蕁麻疹1例であった。悪化要因として, 第1例は義父の介護と子宮摘出術のストレス, 第2例は家庭内の問題での精神的ストレス, 第3例はパニック障害樣のエピソード, 第4例は家族に対する心配・不安を指摘できた。皮膚症状を改善する上での有効方剤は, それぞれ桂枝茯苓丸, 半夏厚朴湯, 抑肝散加陳皮半夏, 加味逍遙散であった。これらの処方の選択を行う際に, 皮膚症状に関与する心理的背景を聞きだし得たことが大いに役立った。心理的背景について繰り返し丁寧に問診を行うことは, 蕁麻疹難治例の治療において有用であると考えられた。