著者
寺沢 捷年 松田 治己 今田屋 章 土佐 寛順 三潴 忠道 鳥居塚 和生 本間 精一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.131-136, 1984-10-20 (Released:2010-09-28)
参考文献数
5
被引用文献数
4 4

慢性関節リウマチと全身性進行性硬化症の合併症例に対し, 自家製の桂枝茯苓丸を投与したところ, レイノー現象と手指屈曲制限が著しく改善した。この効果が桂枝茯苓丸によるものであることを急性投与実験により明らかにした。この効果は同一生薬を用いた水煎剤では得られず, 丸と丸料との相違を示唆する所見である。今後は剤型の相違による適応病態の差異について慎重に検討すべきものと考える。
著者
寺澤 捷年 土佐 寛順 檜山 幸孝 三浦 圭子 今田屋 章
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-10, 1987-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

奔豚気病と考えられた5症例を報告した。第1例は19歳女性, 発作性の胸内苦悶感と動悸を主訴とし, 苓桂甘棗湯が著効を奏した。第2例は30歳主婦。交通事故を契機に発症した発作性の身体の熱感と動悸である。桂枝加竜骨牡蠣湯と苓桂朮甘本湯のエキス剤で完治した。第3例は63歳男性。息切れ, めまい感を主訴に来院した。苓桂味甘湯に加味逍遥散を兼用して好結果を得た。第4例は35歳主婦。右半身のシビレと筋肉のヒキツリを主訴に来院。良枳湯が一時奏効したが, 再発し, 小品奔豚湯により寛解している。第5例は47歳主婦で, 動悸発作を主訴に来院。苓桂甘棗湯で主要な症状は改善したが, 心下の痞鞭と熱候があり金匱奔豚湯で良好な経過である。文献的にみると奔豚湯は金匱, 肘後, 小品, 広済など数多く, その方意も異なっている。治験としては苓桂甘棗湯がもっとも多く, 良枳湯, 桂枝加竜骨牡蠣湯, 金匱奔豚湯, 肘後奔豚湯も数例ずつみられる。しかし苓桂味甘湯と小品奔豚湯の報告はなく, 本報告が近年においてははじめての記載である。浅田宗伯は奔豚気病の認識と関心が深く,「独嘯庵, 奔豚気必ずしも奔豚湯を用ひずと言はれたれど, 余の門にては, 奔豚湯必ずしも奔豚を治するのみならずとして, 活用するなり」と貴重な口訣を残している。
著者
伊藤 隆 寺澤 捷年 桧山 幸孝 三潴 忠道 土佐 寛順 今田屋 章
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.199-206, 1987-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
4 1

金匱要略所載の赤丸を料として, 80症例 (延87例) に投与した。赤丸の処方構成は茯苓, 烏頭, 細辛に桂枝または半夏を加えるとされている。その有効例, 無効例の解析を行ったところ, 桂枝の加わった赤丸料により高い有効性が得られた。赤丸料は“表”に主座をもつ病変に比較的有効であるが, 有効率を高めるためには鳥頭を一日2g以上用いることが必要であることが示唆された。脈候・腹候に本方に特徴的な所見は得られなかったが, 電気温鍼法による負荷試験で20分以上を示すことが必要条件である。また自覚的には身体の寒さを異常に訴えるもの, 易疲労を伴うものに適応となるものが多い傾向が示された。金匱要略には「寒気厥逆」とのみその適応病態が記されているが, 今回の研究により本方の適応病態がより具体化されたものと考える。