著者
田中 篤 林田 憲明 石川 陵一 櫻井 健司
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.377-385, 2004-12-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8

聖路加国際病院では研修医の採用試験として, 学科試験・面接に加え, 1998年から適性検査であるSPI検査を導入している.今回われわれは, SPI検査の結果と, 研修医の知的能力・学科試験の成績・研修中の評価との相関を解析した.SPI検査のうち, 基礎能力検査は, 知的能力とは相関するものの, 学科試験の成績とは相関しなかった.高い基礎能力・身体活動性, 外向性は2年間平均した高い評価と関連があった.一方, 思考・実践の重視, 協調性が, 1年目から2年目への高い成長と相関していた.基礎能力は成長とは関連していなかった.以上より, SPI検査の結果は研修医のさまざまな人物特性と相関があることが明らかとなった.
著者
櫻井 健司 日石 智紀
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1333, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】Elbow push test(以下EPT)は,原テストの11項目の1つで野球肩・肘障害の理学的評価として用いられ,陽性であるものは肩甲帯や体幹の機能不全として捉えられている。今回,EPTと肩関節屈曲のBreak test(以下BT)の肢位での前鋸筋と外腹斜筋の筋活動の違いを,表面筋電図(以下EMG)を用いて比較し検討した。【方法】対象は,運動器疾患を有しない健常男性12名の右上肢である。平均年齢は28.6歳であった。被験筋は,前鋸筋中部線維,下部線維,外腹斜筋としEMGを記録した。測定肢位は,原テストのEPTの方法に準じ,被験者は両足底を床から離した端座位にて,肩・肘関節屈曲90°とした。検者は肘頭部に抵抗を加え3秒間保持した。BTには徒手筋力検査の方法に準じ,被験者は端座位にて肩関節屈曲130°,肘関節伸展位にて上腕部に抵抗を加え3秒間保持した。EMG導出は多チャンネルテレメーターシステム(WEB-1000,日本光電社製)を用いた。双極導出法で,電極間10mm,筋電図周波数帯域30~500Hzとして,筋活動電位をサンプリング周波数1000Hzで記録した。EMGよりRMS値を算出し,肩関節屈曲130°保持した肢位でのRMS値を1として両テストの測定値を正規化し,%RMSとして表した。統計学的検定には,Wilcoxonの検定,Speramanの順位相関係数を用いた。【結果】外腹斜筋の%RMSは,EPTが9.41,BTが2.15でありEPTにて有意に高かった。前鋸筋下部線維では,EPTが1.13,BTが5.08とBTが有意に高かった。前鋸筋中部線維は,EPT5.97,BT5.91と両テストに有意な差は認めなかった。前鋸筋中部線維,前鋸筋下部線維,外腹斜筋の間に有意な相関は認めなかった。【結論】伊藤らは,EPT時の筋活動では前鋸筋,外腹斜筋で高値であったが,前鋸筋と外腹斜筋の関係性は低かったと述べている。今回の結果からも前鋸筋と外腹斜筋に相関は認めなかった。EPTはBTと比べ,外腹斜筋の筋活動が高く,前鋸筋中部線維に差がなく,前鋸筋下部線維の筋活動が低かった。EPTは,前鋸筋中部線維の収縮により肩甲骨の肋骨面に固定するとともに,外腹斜筋によって体幹回旋作用するものと思われる。そのため,EPTはBTよりも体幹機能の影響が高かったものと考えられた。また五十嵐らは,前鋸筋の作用として中部線維は肩甲骨外転,下部線維は下角を外転・上方回旋に作用するとしている。EPTの評価では肩甲帯機能に加え外腹斜筋による体幹の影響を受けるが,BTにおいては,肩甲骨上方回旋機能の評価の可能性が示唆された。