著者
櫻井 千穂
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-26, 2008-03-31

外国人児童の学びの場を考える際には、従来からの研究対象である取り出し授業や日本語教室だけではなく、最も重要であるはずの在籍学級のあり方をも視野に入れるべきである。本研究では中島(2007)が示す「ダブル・リミテッド/一時的セミリンガル現象を阻止する学校環境」を基盤とした「在籍学級と取り出し授業の連携モデル」の実践を行い、その有益性を検証した。そして、外国人児童の学びを促す在籍学級の仕組みとして、児童中心且つ探求型の「全員発表」という授業形態が機能することが確認できた。また、その仕組みを十分に活かすには、他の目本人児童たちの言語意識(Hélot&Young2006)への働きかけが重要であることもわかった。外国人児童は、日本人児童たちの助けを得ながら全員発表に参加することで、在籍学級の中での自分の居場所と、母語を使って思考する機会を確保することができ、母語の力を伸ばすことが可能となった。またその在籍学級での活動は児童の日本語のインプットの場としても機能していることが確認できた。