著者
加納 なおみ Kano Naomi カノウ ナオミ
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究 = Studies in mother tongue, heritage language, and bilingual education (ISSN:21868379)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-22, 2016-03

特集 : すべての言語資源を活用したマルチリンガル教育をめざして招待論文Featured Topic : Aiming for Multilingual Education Utilizing All the Language ResourcesInvited Papers多言語・多文化化が世界的に進行するなか、言語及び記号システムの混用に関する研究が増加している。本稿では、そのうちの代表的な概念である「トランス・ランゲージングj を理論、教授法、学習ストラテジーの観点から論じる。トランス・ランゲージングは、マルチリンガルの全ての言語資源を、言語の境界線を超越した一つのレノパートリーとしてとらえる。そこで、本稿はまず、グローノバル化とスーパー・ダイバーシティーの進展を背景に、多言語話者の言語混用の実態をふまえた「動的バイリンガリズム」とトランス・ランゲージングの関係を論じ、今世紀におけるバイリンガル教育の変遷を概観する。次に、コミュニケーションのマルチリンガル化、マルチ・モーダル化を視野に入れ、トランス・ランゲージングを認知的、社会文化的な機能から考察する。さらに、コード・スイッチングやトランスレーションとの比較を通じてトランス・ランゲージングの特質を論じ、その課題や批判、今後の展望を検討する。As the world increasingly becomes multilingual as well as multicultural, the number of studies on the mixed use of semiotic systems, including language, proliferates. This paper discusses translanguaging, a representative concept that encompasses such mixed-language practices, focusing on its theoretical conceptualization, pedagogical techniques, and learning strategies. Translanguaging views multilinguals' whole linguistic resources as one single repertoire beyond linguistic boundaries. Given a highly globalized and super-diversified world's demography, the paper first examines the relationship between translanguaging and dynamic bilingualism that considers multilinguals 'fluid language practices, followed by a brief overview of the changes bilingual education has experienced since the past century. Then, taking into consideration the nature of communication that becomes increasingly multilingual and multimodal, it looks into translanguaging from cognitive as well as sociocultural perspectives. Furthermore, a comparison between translanguaging and other related concepts, such as codeswitching and translation, is examined to highlight the intrinsic value of translanguaging. The paper concludes with a discussion on the challenges and critiques faced by the concept and future research agenda.
著者
バトラー後藤 裕子 バトラーゴトウ ユウコ Butler Goto Yuko
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.42-58, 2010-03-31

本研究は、国立国語研究所が開発中の小学校・中学校の教科書コーパスを用いて、日本語学習児童生徒、および日本語を母語とする児童生徒が、教科学習を行うにあたり必要だと考えられる学習語のリストの作成を試みたものである。リストの作成は、基本的にCoxhead(2000)によって行われた英語における新学習語リスト(NAWL)の選出手順に従ったが、頻度だけでなく、日本語教育実践者による重要度の判断も加味し、最終的に1230語が選出された。ただ、このリストは現段階では試案としての位置づけである。今後、教育現場で使用してもらうことにより、妥当性や有効性の検討を行い、教科による特殊な意味や使い方などの情報を付加する必要があるのかなども吟味することで、質・量ともに、修正を重ねていく必要がある。
著者
櫻井 千穂
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-26, 2008-03-31

外国人児童の学びの場を考える際には、従来からの研究対象である取り出し授業や日本語教室だけではなく、最も重要であるはずの在籍学級のあり方をも視野に入れるべきである。本研究では中島(2007)が示す「ダブル・リミテッド/一時的セミリンガル現象を阻止する学校環境」を基盤とした「在籍学級と取り出し授業の連携モデル」の実践を行い、その有益性を検証した。そして、外国人児童の学びを促す在籍学級の仕組みとして、児童中心且つ探求型の「全員発表」という授業形態が機能することが確認できた。また、その仕組みを十分に活かすには、他の目本人児童たちの言語意識(Hélot&Young2006)への働きかけが重要であることもわかった。外国人児童は、日本人児童たちの助けを得ながら全員発表に参加することで、在籍学級の中での自分の居場所と、母語を使って思考する機会を確保することができ、母語の力を伸ばすことが可能となった。またその在籍学級での活動は児童の日本語のインプットの場としても機能していることが確認できた。
著者
バトラー後藤 裕子 Butler Goto Yuko バトラーゴトウ ユウコ
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.42-58, 2010-03-31

本研究は、国立国語研究所が開発中の小学校・中学校の教科書コーパスを用いて、日本語学習児童生徒、および日本語を母語とする児童生徒が、教科学習を行うにあたり必要だと考えられる学習語のリストの作成を試みたものである。リストの作成は、基本的にCoxhead(2000)によって行われた英語における新学習語リスト(NAWL)の選出手順に従ったが、頻度だけでなく、日本語教育実践者による重要度の判断も加味し、最終的に1230語が選出された。ただ、このリストは現段階では試案としての位置づけである。今後、教育現場で使用してもらうことにより、妥当性や有効性の検討を行い、教科による特殊な意味や使い方などの情報を付加する必要があるのかなども吟味することで、質・量ともに、修正を重ねていく必要がある。
著者
タン グラディス Tang Gladys
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究 = Studies in mother tongue, heritage language, and bilingual education (ISSN:21868379)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.38-54, 2019-05

招待論文この論文では、手話言語学研究の最新の知見、とりわけ手話言語と音声言の同時獲得―バイモーダル・バイリンガリズムに関わる研究などのもたらす知見に照らしてバイリンガルろう教育の概念を考察する。この研究は現在進行中であるが、すでに学校環境におけるバイモーダル・バイリンガル習得を支援する最適条件を明らかにし始めている。本稿では、ろう者であれ聴者であれ、参加者である生徒も教員も、互いに支え合い、また学び合う教学環境がそうした最適条件の一つであると論じている。そして、香港におけるろうバイリンガル・コエンロールメント教育プログラムを例にとり、教室における香港手話と広東語のインプットがどのようにろう児と聴児、そして聴者教員のバイモーダル・バイリンガル習得に貢献するか、そしてそれによっていかにバリアフリーな教育環境を達成しているのか報告する。
著者
奥村 三菜子 オクムラ ミナコ Okumura Minako
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.80-95, 2010-03-31

近年、日本語補習授業校幼児部の在籍率は増加の傾向にあるが、就学前児童は在外教育の対象には含まれていない。本稿では、補習校幼児部が在外教育の対象外に位置することから生じている問題を示し、その改善を目指して行った実践とその成果について、主に実践者側の視点から報告している。実践の結果、補習校と家庭とが「意識的」かつ「密に」連携することの意義が再認識できたと同時に、目的を明確にした活動を継続的に実践することが成果を生みだすためには重要であることが示唆された。しかし、補習校において継続的な実践を行うには困難を伴う現状があることも新たな課題として浮かび上がってきた。小学部や中学部へとつなげていけるような幼児部実践のためにも今後の問題改善に期待したい。
著者
奥村 三菜子 オクムラ ミナコ Okumura Minako
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.80-95, 2010-03-31

近年、日本語補習授業校幼児部の在籍率は増加の傾向にあるが、就学前児童は在外教育の対象には含まれていない。本稿では、補習校幼児部が在外教育の対象外に位置することから生じている問題を示し、その改善を目指して行った実践とその成果について、主に実践者側の視点から報告している。実践の結果、補習校と家庭とが「意識的」かつ「密に」連携することの意義が再認識できたと同時に、目的を明確にした活動を継続的に実践することが成果を生みだすためには重要であることが示唆された。しかし、補習校において継続的な実践を行うには困難を伴う現状があることも新たな課題として浮かび上がってきた。小学部や中学部へとつなげていけるような幼児部実践のためにも今後の問題改善に期待したい。