著者
高橋 学 後藤 文 松本 尚也 菅 重典 秋丸 理世 増田 卓之 石部 頼子 山田 裕彦 細谷 優子 櫻庭 実
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.442-447, 2017-10-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
11

岩手県高度救命救急センターに搬送されたクマ外傷50症例について後方視的に検討した. 平均年齢は69±5歳で男性に多く, 時期としては5月, 時間帯としてはam8 : 00〜11 : 59に, 山菜取りの際中に被害に遭う例が目立っていた. 90%の症例が顔面に被害を受け, 明らかな左右差は認めず, 68%の症例で全身麻酔による緊急手術が必要であった. 全例に予防的抗菌薬が投与され, 創部感染発生率は20%であった. 検出された菌は通性嫌気性菌が7菌種, 嫌気性菌が4菌種の計11菌種で, βラクタマーゼ阻害薬はその内9菌種に感受性を認めていた. 抗菌薬別の創部感染発生率は非βラクタマーゼ阻害薬投与例が28.5%, βラクタマーゼ阻害薬投与例が9.1%でありβラクタマーゼ阻害薬投与例で低い傾向にあった.
著者
櫻庭 実
出版者
岩手医学会
雑誌
岩手医学雑誌 (ISSN:00213284)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.197-202, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
13

顕微鏡下で血管や神経を縫合する技術であるマイクロサージャリーは,臨床応用されるようになってから60年近くが経過する.高度な技術が要求される難しい手術と考えられがちだが,現代では切断指再接着や遊離組織移植による再建外科などなくてはならない技術の一つとなっている.著者がこれまで経験した再建外科の症例を供覧し,更に最近の進歩についても紹介する.
著者
土屋 沙緒 櫻庭 実 宮本 慎平 林 隆一
出版者
Japan Society for Head and Neck Cancer
雑誌
頭頸部癌 = Head and neck cancer (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.31-35, 2008-04-25
被引用文献数
1

喉頭摘出術後の合併症として咽頭皮膚瘻の発生は15~35%とされ,比較的高い確率で生じる。この際大血管周囲の感染とそれに続く出血が起きれば患者にとって致命的であり,未然の適切で早急な処置が必要となる。従来我々は咽頭粘膜の欠損が小さく,一期縫縮が可能な場合には大胸筋皮弁の筋体を頸部の死腔の充填に用い,皮島を頸部の皮膚欠損部に縫合する方法をとってきた。大胸筋の豊富な血流により良好な感染のコントロールが得られるのが長所であったが,大胸筋皮弁の下垂により気管孔が狭小化し,永続的なカニューレの挿入を余儀なくされた症例を数例経験した。同時に頸部としては皮弁がVolume過多となり,整容的な問題も認められた。そこで,積極的に大胸筋皮弁の皮島を切除し,植皮に置き換える工夫を8例におこなった。この方法で手術を行った症例では,皮弁の下垂が見られず,筋体が萎縮するとともに,より頸部らしい自然な形態となった。メッシュ植皮とすれば皮島自体の大きさも従来法よりも小さくてすみ,皮弁採取部の閉創も容易である。皮島への穿通枝を含める必要がないため,乳頭を切除する必要もなく,胸部の整容面でも優れていた。