著者
高橋 学 後藤 文 松本 尚也 菅 重典 秋丸 理世 増田 卓之 石部 頼子 山田 裕彦 細谷 優子 櫻庭 実
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.442-447, 2017-10-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
11

岩手県高度救命救急センターに搬送されたクマ外傷50症例について後方視的に検討した. 平均年齢は69±5歳で男性に多く, 時期としては5月, 時間帯としてはam8 : 00〜11 : 59に, 山菜取りの際中に被害に遭う例が目立っていた. 90%の症例が顔面に被害を受け, 明らかな左右差は認めず, 68%の症例で全身麻酔による緊急手術が必要であった. 全例に予防的抗菌薬が投与され, 創部感染発生率は20%であった. 検出された菌は通性嫌気性菌が7菌種, 嫌気性菌が4菌種の計11菌種で, βラクタマーゼ阻害薬はその内9菌種に感受性を認めていた. 抗菌薬別の創部感染発生率は非βラクタマーゼ阻害薬投与例が28.5%, βラクタマーゼ阻害薬投与例が9.1%でありβラクタマーゼ阻害薬投与例で低い傾向にあった.
著者
高橋 学
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.504-517, 1996-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
32
被引用文献数
3 5

現在,地震の発生を予知することは困難な状況にある.しかしながら,土地の履歴を知ることにより地震の被害を予測することは不可能ではない.埋蔵文化財の発掘調査に際し,過去の災害と土地開発の様子を詳細に検討することは,防災計画を考えるうえで重要なデータをもたらす. 兵庫県南部地震による神戸周辺の被害状況を概観すると,高速道路や鉄道,それに駅舎などの大型建造物と,木造一戸建て住宅とでは被災した場所の土地条件が異なる.大型建造物の場合には,硬軟の地盤の境目で被害が大きい.他方,木造一戸建て住宅の被害は,微地形や埋没微地形に由来する表層部数メートルの堆積物の状況と関係が深い.原型をとどめないほど激しく破壊された家屋は,旧河道や埋没旧河道にあたる部分に多く存在した.また,木造一戸建ての倒壊による圧死者も旧河道や埋没旧河道に集中する傾向が強い.
著者
竹村 貴人 斉藤 奈美子 池野 順一 高橋 学
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.160-164, 2009-08-10
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年の急速な産業技術の発展に伴い,レンズやシリコンウェハなどの先端材料の精密加工の需要が非常に高まっている.そのような背景のもと,砥石は物作り産業をはじめとする産業技術の基盤を支える重要な道具の一つであることはいうまでもない.しかしながら,天然砥石の合砥と呼ばれる仕上げ砥は,未だに人工的に造られた人工砥石よりも優れた研削性能を持つものもあるとされており,現在でも日本刀や和包丁など刃物の研ぎ師が好んで使っている.ここでは,このように優れた研削性能を持つ天然砥石,とくに合砥に関する情報を人工砥石に取り入れることを目的として,合砥の内部構造の特徴を応用地質学的な視点を交えてまとめた.その結果,質の高いとされる合砥はサブミクロンオーダーの空隙が多く存在していることが明らかになった.
著者
高橋 学
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.82-93, 2014 (Released:2013-12-31)
参考文献数
74
被引用文献数
8 41

Development in sheet steels has progressed with a strong relation with automotive industry in Japan. To meet with the requirements from automotive industry, various types of sheet steels including high and ultra-high strength steel sheets have been developed. Progresses in three types of steel series will be discussed by checking the historical facts and technologies and their contributions. Introductions of interstitial free (IF) steel and continuous annealing system are the important events in mild steel developments for panels. Extensive work on finding the optimum mixtures of hard and soft phases to improve elongation of steels contributed to improve the crashworthiness of autobodies. Continuous annealing system also played an important role in producing these advanced high strength steels. Precipitation is used in characteristic ways which is to scavenge solute carbon and nitrogen and to prevent coarse cementite particle precipitation. It is also worth to point out that the strong collaborative activities particularly characteristic in Japan between steel manufacturers and auto companies have affected on the progress in advanced sheet steels.
著者
荻野 太司 高橋 学 Hiroshi OGINO Manabu TAKAHASHI
雑誌
學苑 = GAKUEN (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.892, pp.70-82, 2015-02-01

In Japan, certified social workers are obliged to keep their clients' confidentiality under provisions of the Certified Social Workers and Certified Care Workers Act. Social worker-client privilege is not, however, stipulated in any statute laws or case laws. In this first part of the study, the authors give an overview of Japanese laws regarding confidentiality and introduce some discussions concerning social worker-client privilege, pointing out issues from both social welfare and juristic standpoints. The authors suggest that in Japan social worker-client privilege will possibly be more acknowledged in civil trials than in criminal trials. USA is far more experienced and rich in judicial precedents in this field. For instance, the US Supreme Court has ruled that clinical social workers have the right to privileged communication in federal courts. Part(2)will further examine these American case laws concerning social welfare and examine the differences from Japan, which will lead to the final part(3)in which the authors will clarify in which case the social-worker-client privilege should be respected in Japan and in which case it should not.
著者
高橋 学
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.51, pp.127-134, 1998-03-24
被引用文献数
3

兵庫県南部地震の被災状況と表層地盤との関わりについて環境考古学の視点から検討した。その結果, 震度VIIの分布域は, 縄文海進最盛期の海域や, かつて潟湖であった地域とと密接な関わりがあることが判明した。また, 死亡者の発生場所, あるいは壊滅的に住宅が破壊された場所は, 地表面下数m以内に埋没した旧河道と密接な関わりが認められた。このような地表面下数m以内の表層地盤に関する情報は, 遺跡の発掘調査の際に得ることができる。遺跡の発掘調査を文化財保護といった観点に限定せず, 土地開発と災害の歴史を明らかにするという視点からも観ていく必要がある。ただし, 被害の集中した場所が, 住宅地として開発されていった背景には, 自然環境に関する知識の欠如だけでなく, 高度経済成長期における都市への人口集中など社会, 経済的理由が存在したと考えられる。
著者
安田 喜徳 中川 毅 高橋 学 佐藤 洋一郎 北川 浩之 福澤 仁之 外山 秀一 徐 朝龍
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
COE形成基礎研究費
巻号頁・発行日
1997

平成13年度はプロジェクトの最終年度にあたり、主として研究成果のとりまとめと、補足調査ならびに研究成果の発表を実施した。平成13年度「長江文明の探求」の成果として特筆すべきことがらは、1)世界最古の焼成レンガの発見、2)中国最古の祭政殿の発見、3)中国最古の王宮の発見、4)大型の木柱をもった貯蔵庫の発見、5)城頭山遺跡の城壁が3重構造を持つことの発見、6)城頭山遺跡の住人が苗族であった可能性が高いこと、7)長江文明と日本文明の関係の解明、8)国際シンポジウムの実施し、9)研究成果報告書の刊行、10)記者発表による研究成果の公開などである。1)世界最古の焼成レンガの発見湖南省城頭山遺跡から出土した紅焼土とこれまでよばれてきたものの焼成過程を詳細に分析した結果、それが火事などで偶然できたものではなく、焼成レンガであることが判明した。焼成温度は摂氏600度以上の高温で、均質に焼かれており、かつそれらを大量に生産するシステムが存在したことが判明した。14C年代測定の結果その焼成レンガはすでに6400年前に作られていたことがあきらかとなり、世界最古の焼成レンガであることが判明した。2)中国最古の祭政殿の発見大渓文化の土廣墓の上にこの焼成レンガを敷き詰め、その上に屈家嶺文化早期の正殿・前殿・脇殿の構造をもった建築物が発見された。これは中国最古の祭政殿とみなされる。3)中国最古の王宮の発見祭政殿の西側に焼成レンガの上にさらに40cmほど版築をした上に、列柱回廊を持つ大型の建物が発見されんた。内部には御簾を支えたとみなされる列柱も発見され、これが王宮であった可能性がきわめて高いことが判明した。4)大型の木柱をもった貯蔵庫の発見東門の背後から直径1m以上の木柱をもつ大型の建物跡が発見され、その周辺から大量のイネの籾殻のプラントオパールが集中して発見された。このことから、この大型の木造家屋はイネ籾の貯蔵庫であった可能性が指摘できる。5)城頭山遺跡の城壁が3重構造を持つことの発見、城頭山遺跡の修景保存のための発掘調査の結果、城頭山遺跡の城壁は3回にわたって築造が内側から外側へと城壁が拡大築造されていることが判明した。6)城頭山遺跡の住人が苗族であった城頭山遺跡から出土した木材片の分析の結果、大半がフウの木であることが判明し、城頭山遺跡の住人はフウの木を愛用し崇拝していた可能性が高いことが判明した。現在フウの木を崇拝し愛用しているのは少数民族の苗族であり、城頭山遺跡の住人が苗族である可能性が高いことが指摘された。7)長江文明と日本文明の関係の解明城頭山遺跡周辺では水陸未分化の稲が栽培され、畑作雑穀も栽培されていた城頭山遺跡から出土した大型種子の分析の結果、水田雑草の種子とともに大量の畑作雑草の種子が検出され、遺跡周辺での稲作は水陸未分化の稲であったことが指摘できる。これは縄文時代晩期の唐津市菜畑遺跡の分析結果とよく似ており、稲作の日本への伝播経路が長江下流域から直接東シナ海を渡って日本に伝播した可能性が高いことが明らかとなった。8)国際シンポジウムの開催平成13年11月に長江文明の興亡と環境変動についてて世界の古代文明の研究者を招聘して、国際シンポジウムを実施した。その結果4200年前の気候悪化が長江文明の崩壊に決定的な意味を持ったことが明らかとなった。9)研究成果の報告書の刊行英文1冊、中文2冊の研究成果の報告書を刊行した。英文の報告書は「Origins of Pottery and Agriculture」(Lusre Press Roli Book)384pp.中文の報告書は「神話・祭祀和長江文明」文物出版社200頁と「長江流域乃青銅器」科学出版社200頁である。さらに現在中文の報告書「城頭山遺跡」を編集中であり、平成14年12月までには刊行できる見通しである、予定頁数は1000頁を越える膨大な報告書が出る予定である。10)記者発表平成13年11月2日に記者発表を行い、研究成果の公開を行った。
著者
西山 哲 大西 有三 矢野 隆夫 高橋 学 吉村 公孝 安藤 賢一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.288-298, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

弾性波の伝播速度および減衰の周波数依存性を利用して,地盤の透水特性あるいは間隙流体の特性を調査する手法が検討されている.Biot理論によって分散現象は説明できるが,地盤条件によって観測される分散現象がどの程度相違するのか,あるいは地盤の透水特性がどの程度分散現象に反映されるのかが明確にされていないという問題がある.本研究では岩石供試体を用いた室内実験の結果に基づき,堆積岩と花崗岩で観測される縦波の分散現象の違いとBiot理論の適用性を考察し,さらに分散現象から透水特性を推定することの可能性を検討することにより,分散現象を利用して地盤の透水特性を計測する手法の妥当性を,Squirt flowという局所的な間隙流体の挙動を考慮するBISQ理論の適用性と共に示した.
著者
藤井 幸泰 高橋 学 佐藤 稔
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.193-200, 2016-12-10 (Released:2017-01-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

屋久島に存在する花崗岩亀甲石は,円礫表面に亀甲状割れ目が認められる特徴を有する.亀甲石の断面を観察するとコア部とクラスト部の二層構造を確認でき,亀甲状割れ目は表面からこの境界まで発達している.花崗岩亀甲石を対象に,水銀ポロシメータを用いた空隙測定を実施したところ,以下の事実が判明した.①クラスト部よりもコア部の空隙率が高い②クラスト部とコア部とでは空隙サイズ頻度分布のピーク位置が異なるまた,亀甲石ではない未風化花崗岩や風化花崗岩と比較したところ,風化による変化は空隙サイズ全体が増加するのに対し,亀甲石内部の空隙構造は空隙サイズのピーク位置や量が変化することがわかった.さらに薄片観察なども考慮したところ,亀甲石内部の変化は変質によるものだと推測される.
著者
高橋 学
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.150-164, 1979-04-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
60
被引用文献数
2 3
著者
井澗 裕 越野 武 角 幸博 高橋 学
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.257-262, 1997-12-20 (Released:2017-01-25)
参考文献数
5
被引用文献数
2

This report is a result of survey of existing buildings in South Sakhalin which were built during 1905〜1945. In three principal cities, Hormsk (former Maoka), Yuzhno-Sakhalinsk (former Toyohara) and Korsakov (former Odomari), we visited 128 buildings and ascentained 85 among them still standing. They comprise 10 public buildings, 25 industrial buildings and 50 dwelling houses. Here described are the appearances and alterations of ten buildings selected from them, including the Historical Museum (1938), the former Hokkaido Takushoku Bank (1931, now Municipal Art Museum), both in Yuzhno-Sakhalinsk, and so on.
著者
高橋 学
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.98, 2005

視点 2004年中越地震を事例に、震災発生のメカニズムを検討するのが、本報告の目的である。中越地震は1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と同じ直下型地震であった。しかし、そこ中越地震の震災は共通点を持ちながらも、いくつかの点で、阪神・淡路大震災と異なっていた。それについて検討をしたい。研究方法 1)気象庁・日本気象協会の震度1以上地震について、発生パターンを検討。 2)地震直後、ヘリコプターによって被災地の概要を把握。 3)現地踏査。 4)震災発生メカニズムの検討。結果 1)10月23日に発生した中越地震の本震以前に、中越地方では、9月7日19時43分に震源の深さ1km、M2.4をはじめ多くの前震と考えられる地震が発生していた。M4.0以上の地震については、しばしば同様の前震がみとめられ、今後、地震予測に利用できる可能性がある。 2)北米プレート周辺で発生する地震の場合、一定の地震発生がみとめられる。そのひとつとして、根室沖・釧路沖_-_十勝沖_-_岩手沖_-_宮城沖_-_福島沖_-_茨城沖_-_房総沖と地震が発生する。そして、もうひとつは、宮城沖までは同様であるが、そこから中越_-_秋田沖_-_北海道西方(もしくは西方沖)と展開する。 3)中越地震では、平野域において、比較的被災の程度が軽かった。これは、人口密度が低いために、集落の大半は自然堤防や段丘面に立地しており、旧河道や後背湿地に立地するものが少なかったことに起因すると考えられる。平野域の被害は、老朽化した住宅や悪い土地条件の場所に限定的であった。また、この地域は豪雪地帯であり、それに対応した家屋の構造となっていたことも、災害を小さくした原因であったと考えられる。 4)丘陵域では地すべりや斜面崩壊にともなう被害が顕著であった。丘陵域は、鮮新_-_更新統の砂岩や泥岩からなる魚沼層群から構成されている。このため、丘陵域は、典型的な地すべり地域となっており、棚田地域を形成していた。棚田の開発は、地すべり地域の特性をうまく利用したものであり、この段階では、人間は自然環境にうまく適応して生活を行なっていたということができる。 5)この状況を変更するのに大きなインパクトを持ったのが、1985年に開通した関越自動車道であった。たしかに、それ以前においても、水田漁業として鯉の養殖は行なわれていたけれども、その規模は大きなものとはいえなかった。ところが、関越自動車道路の開通によって、東京へ、関東へ、そして海外へと市場が広がることによって、棚田は爆発的に養鯉池へと姿を変えていったのである。養鯉池の掘削により、地下水環境は変化し、地すべりがより発生しやすい環境となったと考えられるのである。その背景には、バブル経済期に、より収入が多い生業を選択するという住民の考えが反映していた。 6)2004年秋に中越地方地方を襲った集中豪雨や台風23号の影響により、丘陵地域は、充分すぎるほど地下水により満たされており、仮に、中越地震が発生しなかったとしても、ある程度の地すべり被害は発生したであろうと考えられる。 7)魚沼丘陵域の地すべり地帯において、地域の復興策として養鯉業が復活するようなことになった場合、再び、大雨や地震をきっかけに地すべり被害が再発すると考えられ、注意が必要である。 8)阪神・淡路大震災の場合には、経済の高度成長期に都市に集中した過剰な人口を収容するために、土地の履歴を無視した一戸立て住宅の建設が、被害を深刻にした。それに対して、中越地震被害の場合は、バブル経済期を中心にして、土地の履歴を無視した養鯉池の掘削が、被害を大きくしたといえよう。
著者
竹村 貴人 斉藤 奈美子 池野 順一 高橋 学
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.160-164, 2009 (Released:2013-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年の急速な産業技術の発展に伴い, レンズやシリコンウェハなどの先端材料の精密加工の需要が非常に高まっている. そのような背景のもと, 砥石は物作り産業をはじめとする産業技術の基盤を支える重要な道具の一つであることはいうまでもない. しかしながら, 天然砥石の合砥と呼ばれる仕上げ砥は, 未だに人工的に造られた人工砥石よりも優れた研削性能を持つものもあるとされており, 現在でも日本刀や和包丁など刃物の研ぎ師が好んで使っている. ここでは, このように優れた研削性能を持つ天然砥石, とくに合砥に関する情報を人工砥石に取り入れることを目的として, 合砥の内部構造の特徴を応用地質学的な視点を交えてまとめた. その結果, 質の高いとされる合砥はサブミクロンオーダーの空隙が多く存在していることが明らかになった.
著者
林 為人 高橋 学 李 小春 鈴木 清史
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.299-305, 1999-12-10
被引用文献数
4 6

難透水性岩石の透水係数を測定する場合, 供試体を流れる水が極微量であるため, 供試体と被覆材料との間を流れる側面流が発生しないことが正確な透水係数を得る前提条件となる.本研究では, 3種類の異なる方法で被覆を施した白浜砂岩供試体を用いて, トランジェントパルス法透水試験を実施した.その結果, 熱収縮チューブのみによる被覆の場合は側面流が発生し, 透水係数の過大評価を招く恐れがあえることが明らかになった.側面流を防ぐ対策として, 熱収縮チューブを被せる前に, 低粘性シリコンゴムを供試体表面に塗布することによって, 側面流の発生を防げることが判明した.次に, 本研究での実験条件において, 発生した側面流の流量および, 側面流の水みちを円筒形キャピラリーと等価した場合の等価キャピラリー半径を定量的に評価した.等価半径0.01mmほどの側面流水みちは透水試験結果に影響を及ぼすことが明らかになった.さらに, 弾性論に基づいて被覆材料の封圧伝達特性を検討した結果, 岩石供試体の弾性係数が被覆材料のそれ以上あれば, 被覆材料は封圧をほぼ忠実に供試体に伝達できることが判明した.