著者
河股 久司 守口 剛
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.125-136, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年,データを活用したマーケティング戦略を行う企業は増加の一途をたどっている。顧客の理解のために,顧客の製品利用に関するデータを活用した事例も存在する。本稿では,顧客の製品利用データを活用して効率的な顧客維持活動を行っているリコーに焦点を当てる。リコーは,「@Remote」と呼ばれる複合機の利用に関するデータ収集システムを活用し,効率的な顧客維持活動を行っている。インタビュー調査を通じて,複合機利用データを活用した既存顧客維持活動の成功の背景に,それまで属人的であった営業担当者のノウハウや知識が活かされていることなどが明らかとなった。このことは,データの利活用に際し,データと顧客をつなぐ架け橋となる営業担当者の役割の重要性を示唆している。
著者
河股 久司
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.81-89, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
38

本論文は,2015年以降の色彩に関する研究をレビューすることによって,近年の色彩研究の潮流を把握することを目的とする。色に関する研究を,色の三属性である色相・明度・彩度それぞれの視点による研究と,モノクロとカラーの比較による研究の4つに大別してレビューを行った。その上で,色とマーケティングミックスとの関連を検討したところ,今回のレビューの範囲においては,色相に関する研究は,マーケティングミックスの各要素と関連するものが実施されていることが確認できた。一方,彩度に関してはマーケティングミックスのうち製品との関連のみ,明度に関しては製品と流通チャネルとの関連に限られた研究が実施されていることが明らかになった。また,クロスモーダル効果に着目すると,色と味覚や聴覚,触覚との関連についての研究はなされているものの,色と嗅覚との関係を検討している研究がないことが確認された。
著者
權 純鎬 河股 久司 須田 孝徳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.51-62, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
33

コード型モバイル決済サービス(以下,決済サービス)の普及とともに,各社によるポイント還元型のプロモーションが頻繁に行われている。そのため,ポイント獲得を目的とした短期的利用者が増えており,決済サービスの利用定着率の低さが課題となっている。本研究は決済サービス利用時におけるタッチ・インターフェースへの接触に注目し,コントロール感および心理的所有感の向上によって決済サービスの再利用意向を高められるかを検証する。2つの調査を実施した結果,画面への接触回数が増加する金額入力型の決済方法は(vs. 金額非入力型),決済サービスに対するコントロール感を高め,コントロール感の知覚は心理的所有感を高めることが示された。また,画面接触によって知覚された心理的所有感の向上は,決済サービスへの再利用意向を高めることが確認された。
著者
河股 久司 守口 剛
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.39-50, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
42

近年,ブランド・ロゴの変更を行う企業が増えている。変更の仕方はさまざまであるが,ロゴの形状は変えずに,色だけを変更する企業も挙げられる。そこで,本研究は,ブランド・ロゴの変更時における彩度の変化が消費者のブランド態度に与える影響を検討する。色の鮮やかさを示す彩度は,消費者に活力やはつらつさといった印象を与えることが知られている。そこで,ブランド・ロゴの変更時における彩度の変化が,ブランドの活力感や,ブランド態度に与える影響を検討した。3つの実験を通じて,1)彩度が高いロゴマークはブランドの活力感の知覚を高める,2)ロゴ・カラー変更時に彩度を高めることで,ブランドの活力感の知覚が高まり,その結果として,ブランドへの態度を高める,3)ブランドの活力感知覚がブランドへの態度に与える影響は,国際展開しているブランドのほうが,国内展開のみのブランドよりも強まることが明らかとなった。ブランド・ロゴ変更時に彩度がもたらす影響とブランド態度の関係を明らかにした本研究は,ロゴの変更を検討する企業に対して多くの示唆を提供すると考えられる。