- 著者
-
欠ノ下 郁子
植田 誠治
- 出版者
- 日本精神保健・予防学会
- 雑誌
- 予防精神医学 (ISSN:24334499)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.62-75, 2021 (Released:2021-12-01)
- 参考文献数
- 42
【背景】近年、若い世代の精神疾患患者数が増加しており、精神疾患の好発年齢に当たる児童生徒の早期介入の重要性が高まっている。しかし、児童生徒が生活する学校現場における早期介入には、いくつか課題が報告されている。したがって、早期介入を実現するためには、児童生徒の健康管理を行っている養護教諭と精神科医療機関との連携・協働が求められている。
【目的】精神疾患のある児童生徒の早期介入に関する養護教諭の認識と障壁の実態を明らかにすることである。
【方法】無作為に抽出された全国の公立小・中・高等学校に勤務する養護教諭を対象として、自記式質問紙による調査を行った。調査内容は、DUP(Duration of Untreated Psychosis:精神病未治療期間)の認知、早期受診の利点と欠点、早期受診に対する障壁とした。
【結果】DUPを知っていると回答した割合は4.6%であった。早期受診の利点は「精神症状で苦しい時期が短くなる」が83.6%、早期受診の欠点は「向精神薬の副作用の出現」が37.0%、早期受診に対する障壁は「思春期の特徴の複雑さ」が80.5%と一番多かった。
【結論】養護教諭は、早期受診の障壁を「思春期の特徴の複雑さ」や「学級担任の知識不足」と認識していることが明らかになった。今後学校現場において早期介入を実現するためには、精神疾患の正しい知識と早期介入の意義と限界を教員全体に情報提供する機会や養護教諭と精神科医療機関との連携の在り方を検討することが重要であると示唆を得た。