著者
齋藤 豊 菊地 研 鍛 良之 大西 俊彦 魚住 翠子 菊池 仁 正和 泰斗 越路 暢生 和氣 晃司 小野 一之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.685-688, 2018-10-31 (Released:2018-10-31)
参考文献数
8

症例は62歳男性。車の運転中に突然の前胸部灼熱感を自覚し,救急要請となった。救急指令員は救急車の出動に続いてドクターヘリの出動も要請した。救急隊(EMS)は現場で12誘導心電図(12-lead ECG)を記録し,当院へ伝送を行った。そのECGでST上昇を示し,フライトドクターが現場で行った心エコーでECG所見に一致した壁運動低下を認めた。ST上昇型心筋梗塞の診断で,硝酸イソソルビドとアスピリンの投与後に当院へ搬送し,緊急冠動脈造影で左前下行枝に99%狭窄を認め,同部位にカテーテル治療を行って,再灌流に成功した。入院後のCKの最高値は正常域内で心筋障害はほぼ認めなかった。発症からEMSの接触まで28分,door-to-balloon 時間は38分,EMS-to-balloon 時間は78分,発症から再灌流までの時間は106分であった。本症例は,救急車での搬送に40分以上を要する地域でありながら,伝送ECGとドクターヘリを組み合わせることで,発症から再灌流までの時間を120分以内に短縮でき,心筋障害を最小限にすることができた。