著者
藤綱 隆太朗 白川 和宏 石田 径子 井上 聡 鳥海 聡 金子 翔太郎 土屋 光正 宮嶌 和宏 三吉 貴大 植松 敬子 金尾 邦生 春成 学 竹村 成秀 進藤 健 塩島 裕樹 荘司 清 齋藤 豊 田熊 清継
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.285-287, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
14

ナツメグは香辛料としてハンバーグなどの肉料理に用いられ, わが国でも容易に入手可能である。欧米では急性中毒を起こす原因物質として一般的に知られており, 死亡例も報告されている。米国の報告では自殺目的の大量摂取のほか, 意図せずにナツメグ中毒となっている例も半数以上を占めている。しかしわが国では症例報告は少なく, 中毒の原因としてはあまり知られていない。本症例は香辛料としてナツメグ10gを摂取した。その後, 浮遊感, 動悸などが出現, 不穏となった。自身でインターネット検索し, ナツメグ中毒の症状と合致することに気づき, 救急要請した。来院時, 不安感と口渇感を訴え, 興奮気味であったが, 安静にて経過観察を行い, 症状は改善した。本症例は患者自らのナツメグ摂取の申告により診断に至ったが, 本人の自覚なくナツメグ中毒に至る症例もあると思われる。そのため, 急性の精神異常を呈した症例では原因中毒物質として鑑別にあげる必要があると考える。
著者
落合 香苗 齋藤 豊 種田 益造 加藤 啓一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.125-132, 2011-03-15 (Released:2011-06-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

automated external defibrillator(AED)の普及に伴い,医療機関内で医師がAEDを操作する機会も増加している。我々は医師がショック適応と認識した心電図波形に対してAEDがショック不要と判断した2症例につき事後にデータを検証した。事例1:78歳,男性。前立腺腫瘍精査目的に入院し,病棟で心肺停止となりAEDを用いた心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation; CPR)が実施された。AEDモニター画面で医師が心室性頻拍(ventricular tachycardia; VT)と認識した心電図波形に対し,AEDはショック不要と判断した。事後検証にてこのVTは心拍数が少ないためショック適応外と判断されたことが判明した。事例2:56歳,女性。骨髄腫の化学療法入院中に心肺停止となりAEDを用いたCPRが実施された。AEDモニター上で医師はVTを認識したが,AEDはショック不要と判断した。事後検証にてこのVTはAEDの心電図解析中または充電中に振幅が減衰したためショック適応外と判断されたことが判明した。AEDは AHA(American Heart Association)とAAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation)の勧告に基づいて,一般市民による誤ったショック実行を避けるため,感度より特異度を重視した設計となっている。医師はAEDの機能や性能限界を認識するとともにAEDの機種特性について精通し,AEDを使用したCPR中でも手動での除細動に切り替える必要性を常に考慮すべきである。
著者
森 充広 森 丈久 渡嘉敷 勝 中矢 哲郎 藤原 鉄朗 齋藤 豊
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.87-95, 2012

上水道,工業用水などと共用されている農業用水路トンネルは,ライフラインとしての社会的重要度も高く,優先的に機能診断を行うべき施設であるにもかかわらず,断水が困難であり,機能診断に苦慮している.そこで,通水状態での農業用水路トンネルの機能診断を簡易的に実施することを目的として,流水中に高感度CCDカメラを搭載した装置を放流し,覆工に発生しているひび割れ等の変状を記録する一次診断が可能な調査システムを開発した.本システムの特徴は,高感度CCDカメラが常にトンネルの壁面に正対しつづける壁面自動追尾機能を導入したことである.実証試験によって本システムの性能を確認した結果,幅1.5mm以上のひび割れ,遊離石灰,漏水状況などを検出することができ,通水状態での一次診断として有効であることを確認した.
著者
平塚 麻奈 柴 喜崇 三角 友紀 齋藤 豊和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.39-43, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
17

パーキンソン病(以下PD)患者の睡眠障害は,寝返りやトイレに介助を要する確率が高いことから,PD患者の睡眠障害の実態を把握することは介護者も含めた包括的支援を考える上で大切であると考え,PD患者の睡眠障害について追跡調査を実施した。2003年度に調査を実施したPD患者10名のうち,2005年度に追跡可能であった5名を対象に,睡眠に関するアンケート調査であるEpworth Sleepiness Scale,Parkinson's Disease Sleep Scaleと,小型加速度計による睡眠・覚醒パターンの評価を実施した。結果,PD患者は経過が進むにつれて日中の睡眠傾向が延長する可能性が示唆された。夜間の睡眠については一定の傾向はみられなかったが,PD患者は2回の調査共に様々な睡眠の問題を抱えていること,その症状は経過と共に多様な変化をもつことが確認された。客観的睡眠の質の指標である夜間睡眠効率が改善している3名は,オムツの導入や,夜中の入浴の習慣化等,睡眠障害に対して対策を講じており,これにより夜間の睡眠障害が改善した可能性が考えられることから,個々の症状の経過にあわせて理学療法が介入できる可能性が示唆された。
著者
齋藤 豊 菊地 研 鍛 良之 大西 俊彦 魚住 翠子 菊池 仁 正和 泰斗 越路 暢生 和氣 晃司 小野 一之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.685-688, 2018-10-31 (Released:2018-10-31)
参考文献数
8

症例は62歳男性。車の運転中に突然の前胸部灼熱感を自覚し,救急要請となった。救急指令員は救急車の出動に続いてドクターヘリの出動も要請した。救急隊(EMS)は現場で12誘導心電図(12-lead ECG)を記録し,当院へ伝送を行った。そのECGでST上昇を示し,フライトドクターが現場で行った心エコーでECG所見に一致した壁運動低下を認めた。ST上昇型心筋梗塞の診断で,硝酸イソソルビドとアスピリンの投与後に当院へ搬送し,緊急冠動脈造影で左前下行枝に99%狭窄を認め,同部位にカテーテル治療を行って,再灌流に成功した。入院後のCKの最高値は正常域内で心筋障害はほぼ認めなかった。発症からEMSの接触まで28分,door-to-balloon 時間は38分,EMS-to-balloon 時間は78分,発症から再灌流までの時間は106分であった。本症例は,救急車での搬送に40分以上を要する地域でありながら,伝送ECGとドクターヘリを組み合わせることで,発症から再灌流までの時間を120分以内に短縮でき,心筋障害を最小限にすることができた。