- 著者
-
武久 洋三
大和 薫
荒尾 徳三
武久 敬洋
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.3, pp.347-359, 2022-07-25 (Released:2022-09-07)
- 参考文献数
- 28
目的:慢性期病院において2010年と2020年の入退院先の変化を調査すること,および年齢,性別,入院時血液生化学検査値について生存期間への予後不良因子を明らかにすること.方法:対象は2010年と2020年の各年に慢性期病院12病院に新規に入院した症例とした.評価項目は年齢,性別,入院元,入院90日後の転帰と退院先,生存期間,入院時の血液生化学検査6項目(ヘモグロビン,アルブミン,総コレステロール,血糖,尿素窒素,ナトリウム).入退院先情報は2010年と2020年の10年間の変化を調査した.生存期間解析は,年齢,性別,6項目の入院時血液生化学検査値を使用して入院後の生存期間を解析した.結果:8,007例の新規入院症例を解析した.入院元の調査では,慢性期病院において2010年から10年間の経過で急性期病院からの入院は増加し,介護系施設からの入院は減少した.同様に入院90日後の転帰では,自宅退院と在宅系施設への退院は増加し,介護系施設への退院と死亡率は低下した.生存期間解析では,多変量解析において高年齢,男性,アルブミン低値,総コレステロール高値,尿素窒素高値,ナトリウム低値が予後不良因子であった.一貫して予後不良因子であった5変数(年齢,性別,アルブミン,尿素窒素,ナトリウム)でスコア化した生存期間解析では,5変数のスコアが生存期間に対して用量依存的に強く相関することが示された.結論:本研究において,慢性期病院の入退院先情報の調査を行った.慢性期病院において入院時の高年齢,男性,尿素窒素高値,ナトリウム低値,アルブミン低値は強力な予後不良因子であることが示され,入院後に水分電解質状態および栄養状態の改善を図ることの重要性が示唆された.