著者
佐藤 成 中村 雅俊 清野 涼介 高橋 信重 吉田 委市 武内 孝祐
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-52_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】スタティックストレッチング(SS)は関節可動域(ROM)などの柔軟性改善効果が期待でき,臨床現場やスポーツ現場で多用されている.しかし近年では,特に45~90秒以上のSSにより筋力やパワーなどの運動パフォーマンスが低下することから,運動前のウォームアップにおいてSSを行うことは推奨されていない.しかし,実際のスポーツ現場では20秒以下のSSが用いられる場合が多いと報告されており,20秒以下のSSは運動パフォーマンス低下を生じさせない可能性がある.しかし20秒以下のSSの即時効果を検討した報告は非常に少なく,さらにその持続効果を検討した報告はない.そこで本研究では,柔軟性改善効果の指標としてROMと弾性率,運動パフォーマンスの指標として求心性収縮筋力(CON)と遠心性収縮筋力(ECC)を用いて20秒間のSSの即時効果と持続効果を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は健常成人男性20名の利き足(ボールを蹴る)側の足関節底屈筋群とした.足関節底屈筋群に対する20秒間のSS介入前後に足関節背屈ROM(DF ROM),弾性率,CON,ECCの順に各々測定した.先行研究に従ってSS介入後の測定は,①介入直後に測定する条件,②介入5分後に測定する条件,③介入10分後に測定する条件の計3条件を設けた.対象者は,無作為に振り分けられた条件順にて3条件全ての実験を行った.DF ROM,CON,ECCの測定は多用途筋機能評価訓練装置(BIODEX system4.0)を用いて行った.なお,CONとECCの測定は足関節底屈20°から背屈10°の範囲で,角速度30°/secに設定して行った.弾性率の測定は超音波診断装置(Aplio500:東芝メディカルシステムズ株式会社)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,腓腹筋内側頭(MG)に対して行った.統計学的検定は,SS介入前後および条件(直後条件,5分条件,10分条件)間の比較は繰り返しのある二元配置分散分析(時期×条件)を用いて検討した.さらに,事後検定として,SS介入前後における条件間の比較はBonfferoni法,各条件におけるSS介入前後の比較は対応のあるt検定を用いて検討した.【結果】DF ROMに有意な交互作用(p=0.004, F=6.517)と,時期に主効果を認めたが,MGの弾性率,CON,ECCには有意な交互作用及び主効果を認めなかった.事後検定の結果,DF ROMは全条件において介入前と比較して介入後に有意に増加した.またDF ROMは介入直後と比較して介入10分後に有意に低値を示した.【考察】本研究の結果より,20秒間のSSはDF ROMを即時的に増加させるために有効であり,その効果は10分後まで持続するが,5~10分の間で減弱することが明らかとなった.また,20秒間のSSは弾性率,CON及びECCに影響を及ぼさないことが明らかとなった.【結論】20秒間の短時間のSS介入は等速性筋力を低下させずにROMを増加させるが,弾性率を変化させることが出来ないことが明らかとなった.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は本学の倫理審査委員会も承認を受けて実施された.また,本研究はヘルシンキ宣言に則っており,実験開始前に対象者に本研究内容を口頭と書面にて十分に説明し,同意を得た上で行われた.
著者
武内 孝祐 佃 文子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1287, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】実際のスポーツ現場において,どのような頻度・時間・種類・目的のストレッチングが実施されているのかは明らかとなっていない。スポーツ現場で利用可能なストレッチングを検討するためには,実際のスポーツ現場におけるストレッチングの実施状況を明らかにする必要がある。本研究の目的は,スポーツ現場におけるストレッチングの実施状況を調査し,今後のストレッチング研究における基礎的データを得ることである。【方法】対象はスポーツ指導者140名とした(年齢:40.2±12.3歳,指導歴16.0±11.7年)。全ての指導者に,自身のスポーツ指導の中でのストレッチング実施状況に関する自記式アンケートを行った。調査項目は,実施しているストレッチングの種類(静的ストレッチング,動的ストレッチング),時間(1回の実施時間,合計時間),実施タイミング(ウォーミングアップ,クーリングダウン),目的(柔軟性向上,障害予防など),対象部位(全身計15部位)とした。【結果】スポーツ指導者140名のうち,ストレッチングを実施している指導者の割合は91.4%であり,ストレッチングを実施していないものが8.6%であった。また,実施しているストレッチングの種類は,静的ストレッチングのみ33.6%,動的ストレッチングのみ7.0%,静的ストレッチングと動的ストレッチングの併用59.4%であった。ウォーミングアップに静的ストレッチを取り入れている指導者の割合は77.9%であり(1回21.8±13.2秒,合計489.9±343.4秒)であり,クーリングダウンに静的ストレッチングを実施している指導者の割合は66.9%(1回25.5±17.1秒,合計538.5±392.9秒)であった。静的ストレッチングの目的は障害予防が84.7%,柔軟性向上が69.6%であった。ウォーミングアップに動的ストレッチを取り入れている指導者の割合は90.6%(1回22.1±16.2秒,合計598.1±465.0秒)であり,クーリングダウンに動的ストレッチングを実施している割合は18.8%(1回38.5±46.3秒,合計492.6±523.7秒)であった。動的ストレッチングの目的は障害予防64名(75.3%),パフォーマンス向上59名(69.4%)であった。ストレッチングの対象部位は,下腿後面,大腿後面,殿部の順で多かった。【結論】90%以上のスポーツ指導者がストレッチングを実施していることが明らかとなった。また,障害予防を目的として静的ストレッチングと動的ストレッチンは共にウォーミングアップで実施されていた。本研究結果は今後のストレッチングに関する研究を実施する上で重要な基礎的データとなる。