著者
武本 京子 伊藤 康宏 石原 慎 川井 薫 飯田 忠行
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

これまでの研究結果をもとに、新たにソルフェジオ音階を用いた楽曲を作曲し、これを実験に供した。ソルフェジオ音階とは174Hz、285Hz、396Hz、417Hz、528Hz、639Hz、741Hz、852Hz、963Hzの9種の音を指す。これらの音を用いた楽曲は、聴き心地が良く心身に何らかの良好な影響をもたらす可能性がある。近年、何の根拠もなくソルフェジオ音(単音)が身体に良いというマスメディアによる誇張が広がり、商品化さえされている。しかし、消費者に受け入れられること自体が何らかの効果を生じている証拠ではないかとも考えられる。したがって、本研究課題を進めるのにあたり、本年度はソルフェジオ音階による楽曲を用いた。実験方法は「イメージ奏法」を用いたイメージファンタジー(イメージ画像+演奏)を実験参加者に供与し、これまでと同じ実験方法により質問紙による状態不安得点と、唾液中生理活性物質の濃度変化を指標にソルフェジオ音階の効果の解析を行った。今回は新たに実験参加者の一部に目隠しをし、聴覚のみの入力と視聴覚入力との差異も含めて検討した。その結果、気分(mood)に関しては、目隠しした方が負の感情・気分が低下しなかった。一方、陽性の気分「活気」、「友好」については視聴覚対聴覚に差はなかった。すなわち、負の感情である「怒り」、「不安」などの亢進は音楽による誘導ではなく、色彩・言語による知覚感情効果であったと考えられた。逆に、陽性の気分は音楽だけで誘導されたことが示された。これは、音楽が喜びや幸福感をもたらすことを意味しており、個人の持つ記憶やそれらに裏打ちされた共感性に基づくものと考えられる。
著者
福田 博美 七條 めぐみ 神谷 舞 小川 真由子 髙木 久美子 松橋 俊太 武本 京子
出版者
愛知教育大学健康支援センター
雑誌
Iris health (ISSN:13472801)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.9-14, 2019-12-31

音楽療法に関する文献検討は多く出されているが、国内の論文について経年的に数量を含めて検討された論文は見受けられない。本研究では、音楽療法についてどのような内容が経年的に語られているかCiNiiの文献タイトルから数量的に検討し、日本においては1955年に紹介された文献がCiNii上で確認され、かなり早くに医療・福祉領域で着目されていた。さらに、2000年以降論文数は100件を超えほぼ維持してきていた。そして近年の傾向を2000年以降の論文から質的に確認し、EBMに基づく音楽療法に向けての量的研究と「演繹的・機能的」研究との相互補完となる研究の必要性が指摘されていた。今後は音楽の生態への影響を含め、さらなる研究の発展が期待された。