著者
武本 智嗣 舟場 正幸 松井 徹
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.157-163, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
32

現代的な食生活は脂肪とスクロースの過剰摂取を特徴としており, 低いマグネシウム (Mg) 摂取量もしばしば認められている。本試験では, 脂肪およびスクロースの過剰摂取がMgの生体利用性に及ぼす影響を検討した。5週齢のWistar系雄ラットに, 対照飼料, 脂肪とスクロース過剰 (HFS) 飼料, Mg欠乏 (MD) 飼料, 脂肪とスクロース過剰およびMg欠乏 (HFS + MD) 飼料を4週間給与した。Mg欠乏飼料を給与したMD区およびHFS + MD区で典型的なMg欠乏症である皮膚の炎症が認められ, HFS + MD区ではMD区より早期に皮膚の炎症が生じた。MD区およびHFS + MD区で骨中Mg濃度が低下し, 骨中Mg濃度はMD区よりHFS + MD区で低かった。一方, Mgが充足している場合, 脂肪とスクロース過剰摂取は骨中Mg濃度に影響を及ぼさず, 皮膚の炎症も引き起こさなかった。以上の結果から, 脂肪およびスクロースの過剰摂取は, Mg充足時にはその栄養状態に影響しないが, Mg欠乏飼料給与時にはMg欠乏を増悪することが明らかになった。