著者
武田 正中 立花 久大 奥田 文悟 川端 啓太 杉田 實
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.363-368, 1993-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
20
被引用文献数
6 9

パーキンソン病 (PD) 患者を痴呆群と非痴呆群とに分け, 事象関連電位 (ERP) と視覚誘発電位 (VEP) を測定し, それぞれ比較検討した. 対象はPD痴呆群9例, 非痴呆群19例, 正常対照群28例である. ERPは聴覚刺激の oddball 課題を用い, VEPは図形反転刺激を用いた. その結果PD痴呆群ではERPのN200, P300潜時およびVEPのP100潜時は正常者群およびPD非痴呆群に比し有意に延長していた. 正常者群とPD非痴呆群との間にはERP, VEPともに有意な差は認めなかった. またPD痴呆群でERPのN200潜時とVEPのP100潜時の間に有意な相関関係が認められた. P300潜時とVEPのP100潜時との間にもその傾向が見られた. 以上の結果より, PD患者においてはERPのP300潜時のみでなくN200潜時も認知機能障害の指標となりうることが示唆された. またVEPのP100潜時の延長は, 網膜レベルよりも中枢の視覚伝導路での障害を示唆するものと考えられた. さらにPD痴呆群では視覚刺激に対する大脳反応性の低下は認知機能や情報処理機能の低下とある程度並行して起こっていくことが示唆された.