- 著者
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立花 久大
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.3, pp.341-352, 2021-07-25 (Released:2021-09-06)
- 参考文献数
- 88
人口の高齢化とともに高齢発症パーキンソン病患者が増加している.高齢発症パーキンソン病は若年・中年発症パーキンソン病とは臨床的特徴に異なる点がみられ,診断治療上注意が必要である.パーキンソン病の診断にはパーキンソニズムを有し,二次性パーキンソニズム(特に薬剤性および脳血管性)およびパーキンソニズムを呈する神経変性疾患(特に多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,など)を鑑別し,抗パーキンソン病薬(特にL-dopa)により運動症状が改善されることが重要である.高齢発症パーキンソン病ではL-dopaに対する反応性が低下しているとされており,判定には注意を要する.高齢発症パーキンソン病は進行が速く,生存期間が短い.姿勢保持障害などの体軸症状や歩行障害が出現しやすく,認知症に進展することも多い.また併存疾患,特にアルツハイマー病病理の合併が多くみられ,生命予後を悪くする付加的要因となりうる.高齢発症パーキンソン病患者は抗パーキンソン病薬で精神症状などの副作用が出現しやすい.したがって,高齢発症パーキンソン病の治療の原則は,最も有効な抗パーキンソン病薬であるL-dopaを中心として使用し運動機能障害を改善すること,および薬物副作用が出やすいことに留意することである.さらに,患者のADL,QOLならびに生命予後を改善するためにはパーキンソン病とともに併存症を含めた病態に対する総合的評価に基づいて管理を行う必要があると考えられる.