著者
武田 篤志
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.117-124, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
15

1974年に刊行されたアンリ・ルフェーヴルの主著『空間の生産』は,英訳されたのを機に,1990年代以降,都市論や地理学の分野でひろく再評価がすすんでいる.しかし,この書の第Ⅲ部には「空間の建築術(Architectonique spatiale)」⑴と題される章が設けられているにもかかわらず,また,この「建築」が彼の空間論において要諦をなしているにもかかわらず,『空間の生産』における「建築」の意義について積極的な言及はほとんどみられない⑵.本稿は,ルフェーヴルにおける空間論と建築との理論的関連に焦点を当て,この書の建築理論としての可能性を提起することを目的とする.
著者
武田 篤志
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度は、戦前に構成された「杜の都・仙台」の呼称とそれに相関する場所イメージが、終戦以降どのように変容したのかという点に留意しながら、仙台をめぐるローカルアイデンティティの現代的諸相について社会学的に明らかにした。まず、戦前の観光案内書や郷土書で流通していた「杜の都」の呼称が、昭和に入ると仙台をモチーフにした流行歌に用いられ、歌声の経験として場所の記憶となる局面に準目し、戦前に人気を博したレコード曲「ミス仙台」と戦後の仙台を表象する「青葉城恋唄」を取り上げ、両作品の歌詞に描かれた仙台像の比較分析から仙台の場所イメージの変容を明らかにした(その成果は『仙台都市研究』第3巻に論文発表)。加えて、仙台市の戦災復興事業に関与し、主に戦後仙台の緑地行政に従事してきた行政関係者OBへの聞き取り調査をおこない、「杜の都」の呼称が仙台市行政のシンボルとなっていった経緯についてオラールヒストリーをまとめた(その成果は、これまでの諸論文のなかで適宜活用している)。また、東北都市学会編『東北都市事典』(仙台共同印刷)の執筆依頼を受けたのを機に、戦前から戦後・現在にいたる「杜の都」の場所イメージの変化を通時的に概括した(武田担当項目:「杜の都」)。さらに、理論的研究として、近年再評価が進んでいるフランスの都市社会学者、アンリ・ルフェーヴルの空間生産論とその派生的議論を取り上げ、現在の都市社会学で注目されてきている「場所の社会学」論議への道筋を明らかにするとともに、その先駆的な研究として、英国の社会学者、ロブ・シールズの社会空間化論を検討した(その成果は『社会学年報』第33号に論文発表)。