著者
仲地 博 高良 鉄美 比屋根 照夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1) 研究期間を通して、資料の収集、実態調査、研究会等を行った。その成果の一部は本報告書の研究発表の欄に記載した通りであり、その他にも、講演・シンポジウムという形で社会に還元されている。2) 研究分担者の意見が細部まで完全に一致することはもとよりないが、共通する結論は次のようなものである。1995年の沖縄における代理署名訴訟は、全国的な問題提起となった。代理署名訴訟の渦中の沖縄で独立論が飛び交ったことに見られるように、代理署名訴訟の背景は、広く深い。日本国憲法の意義と限界、地域自立を求める世界的傾向、エスニシティとアイデンティティにかかる政治思想の歴史と動向がそれである。これらの本質的な結節点で、代理署名訴訟は、考察されなければならない、それなくして、「沖縄問題」を分析解決することはできないからである。代理署名訴訟は、最高裁判決で終結し、沖縄問題は、政治の表舞台から消えたかに見える。また、現地沖縄でも住民運動のうねりは過ぎた。しかし、SACO合意にかかる基地移設問題を中心に基地問題はなお進行形の課題である。否、戦後53年基地問題は、とりも直さず、沖縄社会を規定する最大の要因であり、巨大基地ある限り、過去進行形であったし未来進行形であることも疑いない。代理署名訴訟は、沖縄とは何か、沖縄の抱える課題は何か、沖縄は全国民に何を問うのか、を具象的に示すものであった。それゆえ、繰り返し検証される必要がある。3) 本研究は、この報告書で終了するものでは決してない。私達のライフワークの一つとして、継続的に共同研究を続けることを予定している。
著者
比屋根 照夫 前門 晃 赤嶺 守 渡名喜 明 仲地 博 森田 孟進 HIYANE Teruo 小那覇 洋子
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1992

本研究は、復帰後20年を迎えた沖縄の政治・社会変動と文化変容の実態を総括的、構造的に把握することを試みたものである。その結果、明らかとなった成果の概要は次の通りである。政治・社会(1)復帰後もなお基地が沖縄社会を特徴づけるものであり、今なお米国の東アジア戦略に規定されるという点が、復帰20年を含む沖縄の戦後の変わらない実態であることが明らかとなった。(2)復帰前沖縄の社会制度はさまざまな面で「本土」と異なっていた。本土化は画一化を意味するが、沖縄の歴史、文化との葛藤がさまざまな矛盾を生み、そこに新しい可能性も見出されうることが明らかとなった。(3)復帰の結果、沖縄への公共投資は急激に増加し、自然環境が大きく変化した。文化(1)米軍基地の存在は、沖縄の文化にも強い影響を残した。それは、住民の心理のありようにまで及んだ。米軍人と住民のコミニュケーションは、米国文化の受容をもたらし、復帰後もそれは沖縄の中に定着した文化となっている。(2)復帰後の急激な「近代化」のなかで、もっとも基礎的な土着信仰も変容しつつ、なお根強く生き残っている状況が明らかとなった。総体として言えることは、伝統的な文化と社会構造が、米軍占領によって大きな影響を受け、さらに復帰によって急激に変動したこと、それらを含み沖縄の特質は、本土を照射する地位を占めていることを本研究は明らかにしている。