著者
田澤 聖子 菅野 敦子 秦 規子 小林 昭子 原澤 佳代子 毛塚 剛司 後藤 浩
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-111, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
15

小児の外転神経麻痺は多くの場合、脳腫瘍や頭蓋内圧亢進、外傷などによって引き起こされる。一方、ウイルス感染やワクチン接種に関連した外転神経麻痺の発症は比較的稀である。 インフルエンザワクチン接種後に良性再発性外転神経麻痺を繰り返し発症した5歳女児の症例を経験したので報告する。初回の麻痺は2か月後に回復したが、その1年後に再発した。再発時の麻痺は、約3か月後に回復した。発症の度に頭部CTを施行したが、明らかな異常は発見されなかった。 小児の外転神経麻痺ではウイルス感染やワクチン接種について詳細に尋ねること、再発の可能性を考慮して経過観察を続けることが重要である。
著者
毛塚 剛司
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.5-12, 2014-03-25 (Released:2014-07-11)
参考文献数
13
被引用文献数
5

視神経脊髄炎は特発性視神経炎に比べると頻度が少なく,難治性となりやすい.近年,抗aquapolin 4(AQP4)抗体と視神経脊髄炎との関係性が明らかにされ,治療への道筋が徐々に解明されつつある.抗AQP4抗体陽性視神経炎は,急激な発症であり,一般的にステロイド抵抗性で,多彩な視野変化をきたす.また,抗AQP4抗体陽性視神経炎ではグリア細胞の1種であるアストロサイトが標的細胞となり,男女比が1:9で女性に多い.一方,抗Myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎はオリゴデンドロサイトが標的細胞となり,抗AQP4抗体陽性視神経炎と同様,視神経から視交叉,視索にかけて障害が起きやすい.このため,抗MOG抗体陽性視神経炎は抗AQP4抗体陽性視神経炎とよく似た視野変化を示す.抗MOG抗体陽性視神経炎の予後は比較的良好だが,ステロイド大量療法に対して反応が悪いことがあり,再発しやすい.抗AQP4抗体陽性,もしくは抗MOG 抗体陽性視神経炎の両者とも,治療法はまずステロイドパルス療法を始めに行うが,抵抗性の場合は血漿交換療法や免疫吸着療法,免疫グロブリン大量療法などを行う.