著者
藤原 崇志 野々村 万智 白 康晴 吉澤 亮 岩永 健 水田 匡信 吉田 充裕 佐藤 進一 玉木 久信
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.143-147, 2019-02-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

2010年4月~2018年3月の間に専攻医が執刀した甲状腺葉切除術の安全性と質を評価するため, 手術時間, 術後半年以上治癒しない声帯麻痺, 術後出血を評価した. 8名の耳鼻咽喉科専攻医が専門領域研修を開始し, 339例の甲状腺葉切除術を執刀した. 声帯麻痺は3例 (0.9%) に生じ, 術後出血は10例 (2.9%) に生じた. 術後出血は執刀10~20例目に多く, 執刀経験が40例を超えると1例も認めなかった. また手術時間は執刀数が45例を超えると手術の約75パーセンタイルが1.5時間以内であった. 術後出血および手術時間の観点から甲状腺葉切除術を安全に行うには45例程度の執刀経験が必要であった.
著者
水田 匡信 土師 知行 阿部 千佳
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.186-194, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
32

ケプストラム解析に基づく音響分析(ケプストラム音響分析)は音声信号の個々の周期の同定を必要とせず,会話音声にも適用でき,また重度嗄声も解析できると考えられる.ケプストラム音響分析の指標であるCPP(cepstral peak prominence)とCSID(cepstral spectral index of dysphonia)の妥当性は,主に聴覚心理的評価との相関解析と,嗄声の有無の診断能に関するROC(receiver operating characteristic)解析により検証されており,英語や日本語を含め多言語において,持続母音だけでなく会話音声での高い妥当性が報告されている.また分析対象とする音声波形の範囲により算出される値が異なる可能性(検査の信頼性)があるが,今回重度嗄声例を用いて検証したところ,CPP,CSIDでは重度嗄声例においても信頼性が保たれることが確認された.このようにケプストラム音響分析は持続母音と会話音声に対して高い妥当性を有し,また重度嗄声に対しても高い信頼性を有すると考えられ,日常の音声障害診療において広く使用されることが望まれる.