著者
丸川 洋平 大石 尚毅 水腰 英四郎 辻 宏和 山下 竜也 鍛治 恭介 中本 安成 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.354-359, 2004-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

46歳男性. 痛風にて平成13年7月より benzbromarone(商品名: ユリノーム) を処方された. 平成14年1月に肝機能障害と黄疸が出現し, 劇症化が危惧され, 当院紹介入院. ウイルス感染, 自己免疫疾患, 代謝性疾患が否定され, 本薬剤による薬物性肝障害と診断した. 入院後, 肝性脳症が出現し, 劇症肝炎の診断にて人工肝補助療法を開始したが, 肝不全が進行し死亡した. 死亡時の肝組織像では軽度の炎症細胞浸潤を認め, 薬物性肝障害に矛盾しない所見であった. 本薬剤による肝機能障害の発生機序は不明とされているが, 今回の症例にて本薬剤と中間代謝産物の血中濃度測定を行ったところ, いずれも著明な高値を示したことより, 薬物代謝異常が原因である可能性が示唆された. また, 本症例のように服用開始6カ月以降でも重篤な肝機能障害を発症するため, 長期にわたる肝機能検査が必要であり, 異常を認めた場合には薬剤の減量, 中止を考慮することが重要と考えられた.