著者
荒井 邦明 山下 竜也 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.37-43, 2014-01-10 (Released:2015-01-10)
参考文献数
4

肝細胞癌サーベイランスを行う高危険群はB型慢性肝炎,C型慢性肝炎,肝硬変症例である.6カ月毎の超音波検査と複数の腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II/AFP-L3分画)測定にてサーベイランスを行うが,超高危険群であるB型肝硬変,C型肝硬変症例においては3~4カ月毎に間隔を短縮することや,危険因子の数,超音波検査での視認性に応じてCTやMRIの併用も考慮される.近年増加している脂肪肝など生活習慣病を背景とした肝発がんに対する効率的なサーベイランス方法の確立が今後求められる.
著者
丸川 洋平 大石 尚毅 水腰 英四郎 辻 宏和 山下 竜也 鍛治 恭介 中本 安成 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.354-359, 2004-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

46歳男性. 痛風にて平成13年7月より benzbromarone(商品名: ユリノーム) を処方された. 平成14年1月に肝機能障害と黄疸が出現し, 劇症化が危惧され, 当院紹介入院. ウイルス感染, 自己免疫疾患, 代謝性疾患が否定され, 本薬剤による薬物性肝障害と診断した. 入院後, 肝性脳症が出現し, 劇症肝炎の診断にて人工肝補助療法を開始したが, 肝不全が進行し死亡した. 死亡時の肝組織像では軽度の炎症細胞浸潤を認め, 薬物性肝障害に矛盾しない所見であった. 本薬剤による肝機能障害の発生機序は不明とされているが, 今回の症例にて本薬剤と中間代謝産物の血中濃度測定を行ったところ, いずれも著明な高値を示したことより, 薬物代謝異常が原因である可能性が示唆された. また, 本症例のように服用開始6カ月以降でも重篤な肝機能障害を発症するため, 長期にわたる肝機能検査が必要であり, 異常を認めた場合には薬剤の減量, 中止を考慮することが重要と考えられた.
著者
金森 岳広 竹下 有美枝 御簾 博文 加藤 健一郎 太田 嗣人 金子 周一 篁 俊成
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.803-808, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
16

症例はCMT病の48歳,男性.45歳時から口渇・多飲多尿を認め,46歳時の検診でHbA1c 10.8 %(NGSP)を認めた.当科に第一回入院時,身体所見で内臓脂肪型肥満(体重84 kg, BMI 28.1 kg/m2,腹囲101 cm)と四肢遠位部の筋萎縮を認め,高インスリン正常血糖クランプ検査はMCR 4.38 ml/kg/分と末梢組織における高度のインスリン抵抗性を示した.また,肝生検にて肝線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断した.食事・運動療法とインスリン療法を開始し,1年半の外来経過中に19.6 kgの減量(体重64.4 kg, BMI 21.8 kg/m2,腹囲75.5 cm)に成功し,HbA1c 5 %台の良好な血糖コントロールを得た.第二回入院時にMCR 6.86 ml/kg/分とインスリン抵抗性の著明な改善を認め,肝生検ではNAFLDの所見が消失した.CMT病合併糖尿病も肥満を伴う症例では,食事・運動療法による減量がインスリン抵抗性の改善と血糖コントロールに有効と考えられた.
著者
鍛治 恭介 鵜浦 雅志 小林 健一 中沼 安二 西村 浩一 坂本 徹 竹内 正勇 寺崎 修一 下田 敦 卜部 健 松下 栄紀 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.872-876, 1992
被引用文献数
4

症例は53歳女性で1991年3月検診時にGOT 329, GPT 306とトランスアミナーゼの上昇を指摘され精査加療目的にて当科入院.検査成績では血沈65mm/hrと亢進,γ-glb 3.5g/dl,IgG 5.5g/dlと上昇,抗核抗体が160倍と陽性,また抗C100-3抗体,PCR法にてHCV RNAが陽性であり,自己免疫型の病型を示すC型慢性肝炎と診断した.プレドニゾロン(PSL) 40mgより加療するも改善は認めず,PSL漸減後α-インターフェロン(α-IFN)投与を開始した.α-IFN投与後GPT値は速やかに正常化し,また,γ-glb値は2.1g/dlまで減少した.一方,抗核抗体は持続陽性であったが,抗体価の上昇は認めなかった.なおIFN投与後22日目の時点で測定したHCV抗体,HCV RNAはいずれも陽性であった.C型慢性肝炎の一部に自己免疫型の病型を示す症例が存在し,また,IFNが有効な症例が存在することを示す貴重な症例と思われ報告した.
著者
山下 太郎 金子 周一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.10-17, 2015-01-05 (Released:2015-01-05)
参考文献数
31

肝細胞癌は世界で年間約70万人が罹患する第3の癌死亡原因であり,現在本邦では年間約3万人が死亡する.多くはウイルス性慢性肝炎,肝硬変を背景に発症するが,近年明らかな肝炎ウイルス感染をともなわない非B非C型肝細胞癌の増加が報告されている.発癌メカニズムとしてはウイルス遺伝子や蛋白に加え,繰り返す壊死,炎症,再生を背景にさまざまな異常が細胞に蓄積し,前癌病変から高分化型肝癌,進行肝癌へ進行すると考えられる.分子生物学的アプローチの進歩により肝細胞癌で認められる遺伝子変異,遺伝子/蛋白発現パターン,悪性形質や微小環境変化の多様性が明らかとされ,再発形式や薬剤感受性との関連について現在解析が進められている.
著者
篁 俊成 御簾 博文 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1670-1676, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
26

肝臓の脂肪化は肥満と独立してインスリン抵抗性と関連する.このことは日本人の糖尿病発症が肥満だけでは説明できず,軽度な肥満域から動脈硬化につながる代謝異常が増大することと関連する可能性がある.2型糖尿病に肥満症を伴った患者の肝臓では,解糖系,糖新生系,それらから派生するPentose phosphate cycle,中性脂肪合成系,脂肪酸合成・酸化系を構成する遺伝子群が協調的に発現亢進する.これらのプロファイルは糖・脂質由来の基質がミトコンドリアに流入することを示唆し,事実,ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)を構成する遺伝子群が活性酸素関連遺伝子群の発現とともに2型糖尿病患者,とりわけ肥満症を合併する患者の肝臓で,協調的に発現亢進する.2型糖尿病患者肝臓の包括的発現遺伝子解析から同定した新規ヘパトカイン「セレノプロテインP」は,抗酸化作用を有するにもかかわらず,一部にAMPキナーゼ活性の抑制を介して,全身のインスリン抵抗性を増大する.
著者
安川 緑 藤原 勝夫 金子 周一 坂本 英之 三谷 徹 伊藤 喜久 小山 善子 染井 正徳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度の研究では、06,07年度の研究成果を基にITを活用した園芸療法の効果の詳細を検証した後、総合的見地から、ITの活用による園芸療法を適用した包括的地域ケアモデルを構築する予定であったが、当初の計画の変更を余儀なくされたため、下記の内容で研究を進めた。1)これまでに得られた園芸療法の研究データの分析を行い、園芸療法の知見を広く社会に還元すべく、論文作成及び投稿準備に充当した。現在、Japan journal of Nursing Scienceに「Effects of Horticultural Therapy for Aged Persons Receiving Home Care」を、また、老年社会科学に「サッケード反応様式からみた園芸療法の元気高齢者の前頭葉脳血流量の変化」を投稿するための準備作業に入っている。これらの論文では、在宅療養高齢者及び元気高齢者のそれぞれの課題に対して園芸療法が効果的に作用して、心身機能の維持・向上や老化予防に独自の効果をもたらすことが実証され、今後における地域高齢者ケアへの提言ともなっている。2)世界初の作業療法ハンドブック、「International Handbook of Occupational Therapy Interventions」(2009)に、「Horticultural Therapy for the Cognitive Function of Elderly People with Dementia」が所収された。このことにより、園芸療法が薬物に依拠することなく認知機能の回復をもたらし、認知症ケアとしての優れた側面を有すると共に、日常生活の活性化を促すための多種多様な可能性持ち合わせていることを世界のケア専門家に紹介し、園芸療法の普及に拍車をかける機会となった。なお、認知症者に対する園芸療法の種々のデータについては、引き続き分析を進め、International journal of geriatric Psychiatryをはじめ国際的学術誌への投稿を予定している。