著者
田中 伸明 水足 邦雄 塩谷 彰浩
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.86, no.13, pp.1097-1101, 2014-12-20

はじめに 頭内爆発音症候群(exploding head syndrome:EHS)は,主に入眠時や覚醒時に突然爆発音を感じる良性の疾患であり1),器質的疾患や神経疾患,てんかんの検索を含めた各種精査を行っても異常がないことが特徴とされており,一般に痛みは伴わない。EHSは睡眠関連疾患国際診断分類第3版(International Classification of Sleep Disorders-Third Edition:ICSD-3)においては睡眠時随伴症群に分類されており,診断基準も示されている(表1)2)。本疾患は,下丘が関与している聴覚原性発作(audiogenic seizure)と病態が類似していることが指摘されているほか3),音の振幅を圧縮する蝸牛または聴覚中枢における自動利得制御の破綻によって生じると推測されているが4),その原因や発症機序はいまだ不明である5)。 わが国におけるEHSの報告は睡眠学の分野を中心に散見されるが,耳鼻咽喉科領域での文献的報告はない。今回われわれは,耳漏を主訴に来院した患者でEHSを診断・治療する機会を得たので,考察を加えて報告する。
著者
水足 邦雄
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.174-180, 2020-06-30 (Released:2020-07-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

要旨: 適切な補聴器フィッティングの評価をする上で, 補聴器適合検査は不可欠である。実耳測定は補聴器適合検査の指針にも掲載されているが, 充分に普及しているとは言えない。本稿では実耳測定の実際と特に小児とオープンフィッティングでの活用方法を紹介する。また, 新しい中耳機能測定装置であるワイドバンドティンパノメトリについて解説し, その補聴器適合での活用の可能性について具体例を提示した。従来の補聴器適合検査では不安が残る症例では, これらの検査を追加することでよりよいフィッティングを行うことができる。
著者
水足 邦雄
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.101-107, 2023-04-28 (Released:2023-06-01)
参考文献数
23

要旨: 近年世界的に難聴者の増加が大きな社会問題となっており, 世界各国で対応が行われている。本稿では, 音響性聴覚障害の病態に焦点を当てて, 特に急性音響性聴器障害による外有毛細胞障害, および近年注目されている内有毛細胞のシナプス障害である cochlear synaptopathy について概説する。このような蝸牛病態を理解することで, 臨床の現場で患者の訴えをより正確に把握することが可能となり, より適切な対処をすることが出来るようになると著者は考えている。さらに, 聴力が正常であっても聞き取りに問題がある場合は cochlear synaptopathy の病態を理解することで正確な対処の参考になる。また, 近年の研究によって音響性聴器障害の病態と, 他の加齢性難聴の病態が極めて類似していることが明らかとなっている。このことは加齢性難聴の予防に騒音対策が最も重要である事を示唆しているだけでなく, これまでの音響性聴器障害に対して行われてきた研究成果が加齢性難聴に対しても応用可能であることを示している。
著者
関 雅彦 水足 邦雄 田所 慎 塩谷 彰浩
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.20-26, 2020-02-28 (Released:2020-04-02)
参考文献数
23

Abstract: We herein report the rare case of a patient who developed cerebellar infarction due to vertebral artery dissection, initially suspected as a perilymph fistula, immediately after a bout of sneezing. A 61-year-old man developed spontaneous vertigo and tinnitus immediately after a bout of sneezing. Initially there were no obvious findings on head CT, and he was referred to our department as a probable case of peripheral vestibular dysfunction. Since left hearing loss and rightward nystagmus were observed, we initially made the diagnosis of perilymph fistula. However, a repeat CT revealed cerebellar infarction of the region supplied by the posterior inferior cerebellar artery with vertebral artery dissection. This patient had complex mixed symptoms, including peripheral vestibular findings and central nervous system findings. We speculated that this patient might have had infarction of the posterior inferior cerebellar artery region, accompanied by decrease of the blood flow in the anterior inferior cerebellar artery, which caused hearing loss.