著者
水野 伸子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.13-24, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
23

本研究は, 生演奏とDVD再生演奏という異なる演奏形態に対する聴取者の集団的手拍子反応の違いを, 主として打拍率, 打拍同期度の観点から検討した。実験曲は《きらきら星変奏曲ハ長調k. 265》 (モーツァルト作曲) のピアノ演奏である。手拍子情報は, 先行研究 (安藤ほか 2014) で開発してきた音楽リズム反応記録装置を用いて時系列的に計測し, 記録した。装置に入力されたすべての情報から4分音符レベルの手拍子を抽出して解析した。その結果, 生演奏群における聴取者集団の打拍同期度はDVD再生演奏群より高く, 生演奏群の方が手拍子のタイミングはよく揃うことがわかった。打拍率の推移をフーリエ級数展開した結果, 第12変奏において生演奏群からのみ3拍周期を示すスペクトルが顕著に認められた。生演奏群は手拍子の拍節構造を階層的に変化させて2拍子から3拍子への拍子の変化を知覚していることが示唆された。