著者
本道 栄一 前田 健 水野 拓也 竹松 葉子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、ヒトに致死的な病原性を示すコウモリ由来新興・再興ウイルス感染症が世界を震撼させている。本研究では、東南アジア・オセアニア地区で潜在的な同感染症キャリアとしてのオオコウモリに着目し、そのベールに包まれた生態調査を行った。本研究により、世界的な大都市近郊のオオコウモリも、ヒトに致死的なウイルスに対する感染履歴が確認されるとともに、Argos 衛星を利用した追跡調査によって、その驚異的な飛行能力が明らかとなった。本研究で明らかにした飛行データは、タイ王国、フィリピン共和国のものであるが、調査を行ったオーストラリアシドニー王立植物園のデータと照らし合わせると、東南アジア・オセアニア地区のオオコウモリは長距離飛行によって互いに交通している可能性がある。また、新興感染症の出現予測として環境インデックスとオオコウモリの飛行の関係についても解析を行った。結果、オオコウモリの長距離飛行開始には、季節性の風向の変化が大きく関与しているものと思われた。
著者
奥田 薫 工藤 英一 林 栄里 水野 拓也 永井 美智子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.38, 2016

一般的に、宝石鑑別機関では、①ダイヤモ ンドのグレーディング(4C)と②宝石の鑑 別の 2 種類において、それぞれに証書の発 行およびソーティングを行っている。これ らの証書およびソーティングの依頼は、そ の石の取引を円滑にすることを目的として 行われることが多い。 特に、①のダイヤ モンドのグレーディングに対し、②の宝石 鑑別では、全ての天然石および人工石が対 象となるため、その依頼内容には、実際に、 その時にどのような宝石が市場に流通して いたのかが、反映されていると考えられる。<br>今回、中央宝石研究所(以下、CGL)が過 去 5 年間に受けた宝石鑑別依頼の内容から、 そこに反映されている市場動向について調 査を行ったので、その結果について報告する。 <br>CGLの過去5年の宝石鑑別の実績を調査し たところ、毎年、天然石として約 400 種類、 人工石として約 30 種類の鑑別が行われて いた。 しかし、それぞれの宝石種の鑑別依頼個数 を比較すると、上位 5 種類の宝石種で全体 の約 50%を占める結果となっていた。 <br>年度によって順位は変動していたが、常に上位を占めていたのは、「ルビー」、「ブルー サファイア」、「ダイヤモンド」および「エ メラルドで、特に、「ルビー」および「ブル ーサファイア」を含む「コランダム」は、 調査期間中を通じて、常に全体の約 30%を 占めていた。 <br>鑑別依頼個数の変化では、大部分の宝石種 において、大きな変動は認められなかった が、「さんご」、「エメラルド」および「ブラ ックオパール」において、明らかな増加傾 向が認められた。また、「ジェダイト」、「クリソベリルキャッツアイ」および「こはく」 にも同様の傾向がみられた。 反対に、減少傾向を示した宝石種は少なく、「ダイヤモンド」および「ロッククリスタル」において認められたのみであった。 <br>日本から国内外で消費された宝石に関する 正確なデータを知ることは難しいが、近年、 日本の宝飾業界に「中国市場」と「再流通 市場」が、大きな影響を及ぼしていること は周知の事実である。また、単価が低いな がらも、「パワーストーン市場」の影響も無 視することはできない。今回得られたデー タは、それらの動向を十分に裏付けるものであった。