著者
水谷 哲也 大場 真己 本道 栄一
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

「植物ウイルスはヒトを含む動物には感染しない」これは常識と考えても良かった。しかし、少しずつではあるがヒトや動物において増殖している可能性を示唆するデータが出てきている。このことから、生野菜を食べて植物ウイルスが大量に体内に取り込まれた場合にはある種の病気を起こすのではないか、という発想も成り立つ。これまでは常識にとらわれて、植物ウイルスとヒトや動物との関係が真剣に研究されてこなかった。それゆえ、本研究において植物ウイルスがヒトや動物に感染する可能性を科学的に検証する。
著者
本道 栄一 前田 健 水野 拓也 竹松 葉子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、ヒトに致死的な病原性を示すコウモリ由来新興・再興ウイルス感染症が世界を震撼させている。本研究では、東南アジア・オセアニア地区で潜在的な同感染症キャリアとしてのオオコウモリに着目し、そのベールに包まれた生態調査を行った。本研究により、世界的な大都市近郊のオオコウモリも、ヒトに致死的なウイルスに対する感染履歴が確認されるとともに、Argos 衛星を利用した追跡調査によって、その驚異的な飛行能力が明らかとなった。本研究で明らかにした飛行データは、タイ王国、フィリピン共和国のものであるが、調査を行ったオーストラリアシドニー王立植物園のデータと照らし合わせると、東南アジア・オセアニア地区のオオコウモリは長距離飛行によって互いに交通している可能性がある。また、新興感染症の出現予測として環境インデックスとオオコウモリの飛行の関係についても解析を行った。結果、オオコウモリの長距離飛行開始には、季節性の風向の変化が大きく関与しているものと思われた。
著者
本道 栄一 井上 直子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、マウスの子宮内膜間質細胞の分化、脱分化の機構を解析した。マウスの生殖周期中にはエストロジェン(E2)とプロジェステロン(P4)が複雑にからみあって間質細胞の分化制御を行っているが、特にE2がこの制御に強く関わっていることが明らかになった。不完全生殖周期中ではLIF、Oct3/4およびNanogタンパク質が発情後期から前期にかけて発現する一方で、E2は単独で、Oct3/4を制御するKlf4 mRNAの発現誘導を起こすことが明らかとなった。
著者
木曽 康郎 森本 将弘 岩田 祐之 山本 芳美 奥田 優 本道 栄一 前田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、受胎産物と子宮内膜との相互作用の解析を行い、(i)免疫担当細胞の特異性、(ii)子宮内サイトカインネットワーク、(iii)MHC発現の特殊性、(iv)補体調節因子、等の4点の変化を中心に複雑な母子境界領域の免疫応答機構と胎盤特異的情報との関連を総括的に捉え、胎盤の免疫抑制機構への環境因子の毒性的影響を明らかにし、適切なモデル動物を見いだすことであった。目的達成のため、生殖能力に多少なりとも問題が見られた多種多様なマウスモデルを使用した。これらと内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスと比較検討の結果、胎盤形成期に流産が誘起されたものは、両者の間で驚くべき相似性を見せた。すなわち、胎盤迷路部の発達不全、脱落膜の異常、ラセン動脈の異常、間膜腺の発達不全である。特に、迷路部の非化膿性炎症(胎子間葉組織肥大)、栄養膜巨細胞の分化異常、脱落膜細胞のアポトーシス不全、ラセン動脈血管内皮および中膜の肥厚、子宮NK細胞の異常、であった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果と考えられた。一方、サイトカインや成長因子およびそれらのmRNA発現は、むしろ内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスで上昇するなど、まったく異なった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果、母子境界領域で重要な免疫応答を担当する細胞(特に子宮NK細胞)にサブセットの変化を含めて、質的変化が誘導されたことを示唆した。今後の課題として、これまでの成果を基に絞り込んだ各因子を、胎盤および子宮内膜の各構成細胞株から作成した再構築組織様塊(オルガノイド)に導入し、これに生理活性を与え、妊娠現象を母子間免疫と胎盤特異情報との相互関連からブレークスルーさせたい。
著者
森垣 孝司 九郎丸 正道 金井 克晃 向山 満 本道 栄一 山田 純三 アグングプリヨノ スリハディ 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.773-779, s・iii-s・iv, 2001-07
被引用文献数
14

ジャワオオコウモリとコキクガシラコウモリの精上皮周期を光学顕微鏡下で観察し, 両種の精子形成における特徴を比較した. ジャワオオコウモリでは精上皮周期は11ステージに分類され, 精子形成は13ステップに区分されたのに対し, コキクガシラコウモリでは精上皮周期は10ステージに, 精子形成は13ステップに区分された. また, 形態にわずかな違いが見られるものの, 両極の先体の形成における特徴は非常によく似たものであった. ジャワオオコウモリではステップ7以降で先体が徐々に伸長, 扁平化し, 最終的にスコップ状の形になるのに対し, コキクガシラコウモリではステップ8以降に先体が伸長, 扁平化してわずかに退縮し, 精子放出直前には先体が細長いへらのような形になった. この両種で見られた先体の伸長と扁平化は食虫目の動物種でも認められており, この特徴は翼手目と食虫目の近縁性を反映するものだと推測された.