著者
水野 翔大 瀬尾 雄樹 西山 亮 亀山 哲章 秋山 芳伸
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.069-072, 2019-01-31 (Released:2020-03-24)
参考文献数
4

症例は76歳,男性。46歳時に統合失調症を発症し,長期間精神科病院に入院中であった。下腹部痛を訴え,腹部CTでS状結腸を閉塞機転とする大腸閉塞,多発肝転移の所見を認めたため精査加療目的に当院転院搬送された。経肛門イレウス管の挿入を試みたが,ガイドワイヤーが穿孔したために緊急手術をすすめた。しかし本人が手術を拒否したため,保存的に経過観察した。その10日後に一転し手術希望があったため,横行結腸人工肛門造設術を施行した。術後2日目の夜間,人工肛門を自身で牽引し,横行結腸が腸間膜ごと脱出している状態になったため,緊急で人工肛門再造設術を施行した。精神疾患合併患者の術後管理において当院ではさまざまな工夫をしているが,人工肛門の自己抜去という想定外の事象を経験した。精神疾患合併患者の術後管理においては人工肛門も自己抜去の対象となりうることを念頭に置く必要があることが示唆された。
著者
水野 翔大 篠崎 浩治 藤田 翔平 笹倉 勇一 田口 昌延 寺内 寿彰 木全 大 古川 潤二 小林 健二 尾原 健太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.234-244, 2018-03-01 (Released:2018-03-28)
参考文献数
65

症例は58歳の男性で,近医において50歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,アミノサリチル酸製剤,ステロイドで治療が開始された.ステロイド依存例であり免疫調節薬,インフリキシマブ,血球成分除去療法が導入されたが寛解に至らず外科的治療が検討されていた.今回,直腸穿孔による汎発性腹膜炎を発症し緊急手術を施行した.直腸Ra前壁に穿孔を認めHartmann手術を施行した.切除腸管の病理検査で異型リンパ球の全層性浸潤像と腸管壁全層の線維化を認めた.免疫染色検査の結果,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.切除腸管の粘膜部分に活動性の潰瘍性大腸炎を示唆する所見は目立たず,悪性リンパ腫に起因する直腸穿孔が示唆された.潰瘍性大腸炎と悪性リンパ腫の合併はまれであり,潰瘍性大腸炎治療薬によるEpstein-Barr(以下,EBと略記)ウイルス感染の合併と悪性リンパ腫の発生の関連が報告されている.本症例でも病変部へのEBウイルス感染を認め,その関連が示唆された.