著者
鹿股 宏之 小林 健二 加瀬 建一 篠崎 浩治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.957-963, 2009-11-30 (Released:2010-01-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】大腸穿孔の予後因子を検討し,エンドトキシン吸着療法(以下,PMX─DHP)の適用について考察した。【対象と方法】対象は2003年4月から2008年3月までの5年間に,当院で経験した大腸穿孔54例である。術前因子9項目,術後因子6項目を選択し,予後についてそれぞれ統計学的検討を行った。【結果】多変量解析で,(1)術前ショック指数1.1以上の症例,(2)手術直後の収縮期血圧80mmHg以下の症例,(3)術後ノルアドレナリンを使用せざるを得なかった症例,(4)術後第1病日の血小板数低下率40%以上の症例,の4項目が独立した予後不良因子として観察された。さらに,死亡例は全例この4項目中2項目以上満たしていた。【考察】われわれはPMX-DHPを大腸穿孔の中でも最重症例に行うものと考えており,検討した予後不良因子~の中で2項目以上満たす症例は,最重症例としてPMX-DHP開始の一つの基準になり得るものと考える。
著者
水野 翔大 篠崎 浩治 藤田 翔平 笹倉 勇一 田口 昌延 寺内 寿彰 木全 大 古川 潤二 小林 健二 尾原 健太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.234-244, 2018-03-01 (Released:2018-03-28)
参考文献数
65

症例は58歳の男性で,近医において50歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,アミノサリチル酸製剤,ステロイドで治療が開始された.ステロイド依存例であり免疫調節薬,インフリキシマブ,血球成分除去療法が導入されたが寛解に至らず外科的治療が検討されていた.今回,直腸穿孔による汎発性腹膜炎を発症し緊急手術を施行した.直腸Ra前壁に穿孔を認めHartmann手術を施行した.切除腸管の病理検査で異型リンパ球の全層性浸潤像と腸管壁全層の線維化を認めた.免疫染色検査の結果,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.切除腸管の粘膜部分に活動性の潰瘍性大腸炎を示唆する所見は目立たず,悪性リンパ腫に起因する直腸穿孔が示唆された.潰瘍性大腸炎と悪性リンパ腫の合併はまれであり,潰瘍性大腸炎治療薬によるEpstein-Barr(以下,EBと略記)ウイルス感染の合併と悪性リンパ腫の発生の関連が報告されている.本症例でも病変部へのEBウイルス感染を認め,その関連が示唆された.
著者
星川 竜彦 小林 健二 鹿股 宏之 篠崎 浩治 加瀬 建一 尾形 佳郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.2135-2140, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
10

症例は42歳,男性.検診で肝機能障害を指摘され,当院を紹介受診し,腹部CT検査と腹部超音波検査で肝内側区域に腫瘤性病変を認め,精査加療目的で入院とした.腹部MRI検査で左肝内胆管の閉塞と右前後区域の分岐部にも胆管壁の不整像があり,腹部血管造影検査では左門脈枝の完全閉塞と門脈本管の左右分岐部付近での狭窄を認めた.以上より切除不能胆管癌と診断し,減黄後にGemcitabine 400mg/body/week投与と放射線照射(50.4Gy)を施行した.3カ月後の腹部MRI検査で腫瘤は縮小し,6カ月後には腫瘤を指摘できなかった.その後,治療開始から9カ月目に溶血性尿毒症症候群(以下HUS)を発症し,血漿交換などを施行したが2カ月後に死亡した.切除不能胆管癌は予後不良であり,今回われわれは化学放射線が奏効した後にGemcitabineによると思われる溶血性尿毒症症候群をきたした1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.