著者
高橋 有里 菊池 和子 三浦 奈都子 石田 陽子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.36-45, 2014-03-20 (Released:2014-03-28)
参考文献数
33
被引用文献数
7 6

目的:BMIを指標とした実践に即した筋注時の針の刺入深度を明らかにすることである. 方法:18歳以上の553名(男性259名,女性294名)を対象とし,身長,体重,三角筋部と中殿筋部の皮下組織厚,および三角筋厚を測定した.BMIと皮下組織厚の関連を明らかにし,また筋厚を参考にし,筋注に必要な実際的な針刺入深度を明らかにした. 結果:三角筋部においては,皮下組織厚(cm)は男性0.04×BMI−0.25,女性0.04×BMI−0.17と表せた.ただし,BMI<18.5の対象者の場合三角筋厚が薄いため,骨膜を損傷する恐れがあった.したがって,針の刺入深度は,18.5≦BMI<30.0で1.5 cm,BMI≧30.0で2.0 cmとするのが適切と考えられた.中殿筋部においては,皮下組織厚(cm)は男性0.05×BMI−0.38,女性0.05×BMI−0.03と表せた.ただし,皮下組織厚の厚さからBMI≧30.0では皮下投与になる可能性があった.したがって,針の刺入深度は,BMI<18.5では1.5 cm,18.5≦BMI<30.0では2.0 cmとするのが適切と考えられた. 結論:BMIを指標とした実際的な筋注における針の刺入深度は,三角筋部では18.5≦BMI<30.0は1.5 cm,BMI≧30.0は2.0 cm,中殿筋部ではBMI<18.5は1.5 cm,18.5≦BMI<30.0は2.0 cmが適切と考えられた.
著者
藤田 景子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.198-207, 2014-08-20 (Released:2014-09-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

目的:周産期および育児期を通じたDomestic Violence: DV被害女性のDV被害に対する認識の回復過程を明らかにすることを目的とした.方法:質的記述的研究デザインを用い,21名のDV被害女性に半構成面接を行った.結果:DV被害女性の周産期および育児期を通じたDV被害からの回復過程として,段階1〈家族維持のためにDV被害の認識を意識下におしこめている〉,段階2〈夫への期待が失望に変わりDV被害を認識していく〉,段階3〈アンビバレントな感情を抱えたままDVの関係から抜け出す〉,段階4〈DVの関係から心身ともに出る〉の4つのカテゴリーが抽出され,コアカテゴリーとして《自分らしさを取り戻していくDV被害からの回復過程》が明らかになった.周産期には多くのDV被害女性はDV被害を認識しておらず,気持ちが揺れ動く不安定な状態も存在していた.結論:周産期および育児期は家族を維持させなければならないという思いが強く,夫の態度が変わることを期待しやすいためにDV被害を認識できない構造があると考えられる.看護者がDV被害女性の被害からの回復過程を理解し,その人らしくあることを支援するケアはDV被害からの回復を促すことにつながることが示唆された.
著者
沖中 由美
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.19-29, 2006-12-20
被引用文献数
3

本研究は,身体障害をもつ高齢者が老いと身体障害をもつことについていだく自己意識を明らかにし,介護老人保健施設入所中の高齢者9名に面接を行い,比較分析した結果を記述した.<br>身体障害をもつ高齢者の自己意識は7カテゴリーに分類された.高齢者は,【身体障害や老いることについての過去の意識】をもちながら,身体障害をもつという逃れられない現実を【「蜘蛛の巣」に絡まる身体】と意識し,施設で生活する自分を【籠の鳥】と意識していた.また,【支えてくれる家族と帰れる家】があることによって不安定な自己を支え,一方では帰る家がないことで生きる意味を見出せないでいた.さらに,高齢者は過去の自分との比較で【「輝いていた」ときと「輝かない」今】と意識し,他の高齢者との比較で【先行きは不安でも今の自分は幸せなほう】と意識していた.高齢者はこうした自己意識をいだきながら自らの【生と死】について考え,生きる意味を探していた.<br>この結果から,身体障害をもつ高齢者が自己実現を目指し前向きに老いを生きるためには,ケア提供者が高齢者にできる自分を意識させ,施設内の高齢者同士の関係性を築けるようにし,高齢者が自分の居場所を確保できるように援助する必要性が示唆された.
著者
田中 浩二 吉野 暁和 長谷川 雅美 長山 豊 大江 真人
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.184-193, 2015
被引用文献数
1

<b>目的:</b>精神科看護師が日常的な看護実践の中で意識的あるいは無意識的に経験している患者看護師関係における共感体験の特徴を明らかにすることである.<br><b>方法:</b>精神科看護経験を5年以上有する看護師30名を対象として非構造的面接を実施した.面接では関係性が深化し印象に残っている事例とのかかわりについて語ってもらい,Bennerの解釈的現象学に依拠して解釈した.<br><b>結果:</b>精神科看護師の患者看護師関係における共感体験として,4つのテーマが解釈された.「患者との関係性への関心と患者理解に向かう欲動」「患者と看護師の人間性や生活史が影響しあう」というテーマには,看護師が患者にコミットメントし,患者の負の感情や苦悩を緩和したいという看護師の願望が現れていた.また「ケアの効果の現れで体験する確かに通じ合えた感覚」「時空を超えた一生の絆」というテーマには,患者と看護師が通じ合え,両者の間で喜び,感動,驚きなどの感情体験や安心感,満足感が共有されたことが現れていた.<br><b>結論:</b>精神科看護師の患者看護師関係における共感体験は,ケアの一場面を取り出して説明できる現象を超えたものであり,日常のケアの連なりの中や両者の生きる時間が影響しあう中で体験されることが考えられた.
著者
千葉 理恵 宮本 有紀 船越 明子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.32-40, 2010
被引用文献数
6

目的:わが国で地域生活または入院している精神疾患をもつ人の,疾患の経験によるベネフィット・ファインディングの特性を,質的に明らかにすること.<br>方法:2008年6~9月に,精神疾患をもつ20歳以上の者を対象として,ベネフィット・ファインディングに関する質的項目を含む,調査票を用いた横断調査を行った.調査の同意を得られた193名のうち,有効回答者107名の回答を,ベレルソンの内容分析の手法により分析した.<br>結果:分析の結果,『人間関係の深まり・人間関係での気づき』『内面の成長・人生の価値観の変化』『健康関連の行動変容・自己管理』『精神の障害に関する関心や理解の深まり』『社会の中で新たな役割を見出すこと』『宗教を信じること』および『その他』の7カテゴリーが抽出された.<br>結論:精神疾患をもつ人のベネフィット・ファインディングには多彩な内容があり,さまざまな慢性身体疾患をもつ人のベネフィット・ファインディングと共通点をもつことが明らかになった.
著者
田中 浩二 長谷川 雅美
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-10, 2014-03-20 (Released:2014-02-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的:高齢者のうつ病からの回復について,生活世界との関連の中で明らかにすることである. 方法:うつ病と診断され精神科治療を受けており,寛解または維持期にある65歳以上の高齢者8名を対象に,非構成的面接を行い,Giorgiの科学的現象学的方法で分析した. 結果:高齢者は,うつ病の発症から急性期にかけて心身が【生活世界からの疎外や圧迫】を受けており,生活世界の中で自由に生きることができなくなっていた.そのような疎外や圧迫が強くなることによって,【厭世観による死の衝動からの支配】に至っていた.これらの体験は,治療につながるきっかけとなり,精神科治療を受ける中で【生活世界へ帰還するきっかけを実感】することができていた.生活世界への帰還は,うつ病からの寛解を意味していた.うつ病高齢者にとっての生活世界への帰還のあり方は【なじみの人間関係や日常生活に帰還】し,【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】に至ることであった. 結論:看護師は,高齢者のうつ病からの回復を支援するために,【なじみの人間関係や日常生活への帰還】【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】を重視した環境創りをすることが重要である.
著者
谷口 綾 大久保 功子 齋藤 真希 廣山 奈津子 小田柿 ふみ 三隅 順子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.94-102, 2014-03-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

目的:帝王切開で出産した女性の,妊娠中から産後1か月までの帝王切開に対する心理的プロセスとその影響要因を明らかにし,看護支援への示唆を得ることを目的とした.方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い,帝王切開後の女性18名に半構造化面接を行って分析し理論化を試みた.結果:女性は帝王切開に対する〈心づもり〉と〈意味づけ〉のプロセスをたどることで,帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕に至る.それらは〈帝王切開の可能性の認識〉をした時点から始まり,〈手術への恐怖〉や〈自然分娩への未練〉は阻害要因,医療者や経験者とのやりとりは促進要因となる.〈意味づけ〉は分娩後にも続く.緊急帝王切開では〈心づもり〉や〈意味づけ〉ができないまま手術に臨む場合があるが,〔納得〕するためには,分娩後に〈意味づけ〉が行われる.考察:帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕の理論を軸に,〈心づもり〉と〈意味づけ〉を促すような具体的な看護支援が示唆された.
著者
渡邊 里香 荒木田 美香子 鈴木 純恵
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.52-61, 2010
被引用文献数
3

【目的】経験1年目と5年目の看護師の離職意向に影響する要因を検討し,若手看護師の職業継続のための職場環境づくりについて示唆を得ることを目的とした.<br>【方法】2007年9~10月に近畿・東海・関東圏の13病院に勤務する経験5年未満の若手看護師2,443名を対象に質問紙調査を実施した.今回の分析対象は,1年目347名と5年目240名,合計587名とした.<br>【結果】1年目,5年目に共通して離職意向と関連があった組織要因は,話しやすい雰囲気,学習意欲,休憩空間,夜勤回数,給料であり,個人要因は研修活用度であった.1年目のみ関連があった要因は助け合いと自尊感情であり,5年目のみは,話し合う場,役割達成意識,ケア物品,ケア設備,勤務の融通のよさ,年休取得率であった.<br>【結論】職業継続のための職場環境づくりのためには,話しやすい環境づくり,業務に見合った報酬の提供,休息の確保,個人的要因に配慮した学習環境の整備が重要である.さらに1年目では,教育体制の整備,5年目では話し合える場,ライフスタイルに合わせられる勤務体制の整備が重要であると考えられた.
著者
飯塚 麻紀 水野 道代
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.245-254, 2014-10-20 (Released:2014-11-13)
参考文献数
23
被引用文献数
1

目的:日本語版“Managing Uncertainty in Illness Scale-Family Member form:MUIS-FM”(MUIS-FM-J)の信頼性および妥当性を検討する.方法:脳神経疾患で入院中の患者の家族204名を対象に調査を行った.調査用紙は,MUIS-FM-J,新版STAI状態–特性不安尺度(STAI),対象者の基本属性と家族の病気に関する認識で構成した.併存的妥当性はMUIS-FM-JとSTAIの状態不安との相関関係により確認した.構成概念妥当性は,主にMUIS-FM-Jの因子構造により確認し,対象者の病気に関する認識の違いによるMUIS-FM-Jの得点の差を算出して弁別性を確認した.結果:MUIS-FM-Jは原版同様の1因子構造で,Cronbachのα係数は0.91であった.MUIS-FM-J得点は,STAIの特性不安得点との相関係数がr=0.34,状態不安得点との相関係数がr=0.66と正の相関を示した.MUIS-FM-Jは,疾患の種類,発症後の日数,意識レベルや生活動作,現状の予測などにおいて有意な得点の差を認めた.結論:内的整合性および併存的妥当性,構成概念妥当性の結果から,本尺度は信頼性と妥当性を有すると判断した.
著者
堀内 成子 近藤 潤子 小山 真理子 木戸 ひとみ 大久保 功子 山本 卓二 岩澤 和子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.8-17, 1990
被引用文献数
1 5

本研究は, 妊婦および褥婦の睡眠の主観的評価と睡眠ポリグラフ所見との間の関連性を明らかにすること, および妊婦各期と産褥早期の睡眠推移を明らかにすることを目的に終夜睡眠を分析した.<BR>妊婦11週~37週までの正常妊婦7例と, 産褥1週~7週までの正常褥婦4例を対象とし, 終夜睡眠をポリグラフ装置で連続3夜測定した. 睡眠段階はRechtshaffen & Kalesの判定基準を用いた. 対照群として健康な非妊期の女性4例を選び, 測定した.<BR>その結果, 主観的な睡眠深度経過では, 前半単相性パターンと前半多相性パターンとに分かれ, ポリグラフ所見との間に関係が認められた. 睡眠パラメータでは, 妊婦群が非妊婦群に比べて睡眠率が低く, 特に末期群では眠りが浅くなっていた. 産褥早期には, 妊娠末期よりさらに睡眠率が低かったが, 妊婦末期に比べて%S4は増加の傾向が認められた.
著者
松岡 恵 小山 真理子 近藤 潤子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.33-41, 1988
被引用文献数
1

日本の母性領域における看護の研究の数, テーマ, 研究方法, 結果の分析方法の動向を明らかにする目的で1952年から1985年までに発表された論文356件を規準に従って分類し分析した. <BR>その結果, 研究数は増加し, 特に教育機関と臨床看護者との共同研究が多いことが明らかになった. 研究の焦点はどの年次も妊産褥婦の身体に関するものが最も多いが1980年以降, 父親, 思春期, 妊産褥婦の心理など様々なテーマを取り上げるようになった. 研究方法は, 1960年までは事例に関する報告が60%以上であったが, 1980年以降は調査研究が60%以上を占めるようになった. データ収集方法はどの年次も既存の記録によるものが最も多く, ついで質問紙によるものが多かった. <BR>今後改善が望まれる点は, 研究課題に関する充分な文献検索, 考察の論理的な記述, 統計的手法の活用などであった.
著者
横山 美江 杉本 昌子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.189-197, 2014-08-20 (Released:2014-10-03)
参考文献数
17
被引用文献数
1

研究目的:本研究では,4か月児健康診査のデータベースの分析から,母親の喫煙が児の出生時の身体計測値(体重,身長,頭囲,胸囲)ならびに出生後の発育にどのように影響するかを明らかにすることを目的とした.方法:本研究で用いたデータベースは,4か月児健康診査を受診した児の健診データのうち,個人情報を全て除外し,連結不可能匿名化したデータファイルを用いた.統計解析には,母親の喫煙と児の身体計測値を重回帰分析等を用いて分析した.結果:3494人の単胎児のデータを分析対象とした.妊娠中に喫煙をしていた母親は全体の2.9%であった.妊娠中の母親の喫煙は,他の要因の影響を調整しても,出生体重,出生身長,出生頭囲と有意な関連が認められた.さらに,4か月児健康診査時の身長および頭囲においても関連が認められ,喫煙していた母親から出生した児は,喫煙していなかった母親から出生した児よりも有意に身長および頭囲が小さく,他の要因を調整しても有意であった.結論:妊娠中の母親の喫煙は,出生時の身体計測値のみならず,4か月児健康診査時の身長や頭囲にも影響していることが明らかとなり,禁煙支援のための対策をさらに強化する必要性が示された.
著者
吉田 久美子 神田 清子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.23-31, 2010-06-21
被引用文献数
3

目的:がん治療が外来へと移行している動きに伴い,がん患者には治療や進行に伴い変化する心身の状態を調整する能力が求められている.本研究の目的は,がん患者のセルフケアの構成概念を導くことである.<br>方法:分析方法はRodgersのアプローチを用い,概念分析を行った.これまでの看護実践をもとにしたがん患者のセルフケアに焦点をあてるために医中誌とPubMedから文献を検索,収集し,質的に分析した.<br>結果:対象となった76文献の中では,がん患者のセルフケアについての明確な定義づけはされていなかった.分析により,がん患者のセルフケアの概念は,4つの先行要件,4つの属性,2つの帰結,2つの関連概念が抽出された.<br>結論:がん患者のセルフケアの定義は,『がんに関する情報の探索と活用により,生活を保持するための意思決定を行うことである.そしてがん治療に伴う副作用や状態の変化へ対処し,がんの進行を抑えるための保健行動の実行から構成される』と定義づけられた.
著者
松下 年子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_63-4_66, 2013

消化器外科病棟で手術を受ける65歳以上の患者84名を対象に,看護師が日本語版NEECHAM混乱・錯乱状態スケールを用いて,術後1~7日目までの患者の混乱・錯乱状態を評価した.その後看護師31名を対象に,NEECHAMの使用をルーチンワークとする可能性等について質問紙調査を実施したところ,「スケールを使用してせん妄の観察力や判断力がアップした」という者は全体の22.6%,「スケール使用による業務負担が大きい」という者は76.7%,病棟でのスケール使用のルーティン化については,「今の忙しい病棟では望まないが,もう少し余裕のある状況であれば望む」が35.5%,「望まない」が38.7%,「なんともいえない」が22.6%であった.今後の課題として,事前研修や業務量などの環境調整,NEECHAM評価をいかに患者ケアに生かすかという観点からのスーパービジョンや,事例検討会の開催等の必要性が示唆された.