- 著者
-
水鳥川 和夫
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社会経済史学 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.1, pp.99-118, 2012-05-25 (Released:2017-06-10)
本稿は前稿で明らかにした畿内・西日本に引き続き,中世東日本で標準的に使われた升の成立と変遷及び使用升の容積を明らかにしようとするものである。15世紀に西日本で標準升であった讃岐斗は,さらに東北日本でも標準升として見出され,畿内でもこれとほとんど同じ畿内本斗が標準升であったから,日本列島の過半をカバーする広域的な標準升が存在したと考えられる。一方,15〜16世紀に畿内から山陽道にかけて売升が市場升として普及していたが,東日本では15世紀に南関東,東海,伊勢にかけて市場京升と等量の下方升を使用する市場圏が存在した。この下方升市場圏は16世紀初頭には近江国を,天文年間には京都を組み込み,京都において市場京升を成立させたと考えられる。この京升は,後に公定升となり,全国に普及した。しかし,民間市場取引では,天下統一が進むにつれて讃岐斗またはこれとほぼ等量の畿内本斗が標準升となり,近世初頭には全国をカバーする標準升となった。讃岐斗と畿内本斗は1%程度の違いがあったが,寛文頃に畿内本斗へと統一されていったと考えられる。