著者
永廣 格
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.726-730, 2009-07-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
16

症例は59歳女性.咳嗽・喀痰・呼吸困難で近医を受診後胸部異常影で当科紹介となった.臥位では咳漱を生じるため半座位で眠っていた.来院時の血液検査ではWBC 14600/μl,CRP 12.9mg/dlと炎症所見を認めた.胸部X線では左横隔膜の挙上と拡張した大腸ガス像が左下肺野に認められた.胸部CTでは巨大結腸と左横隔膜の頭側への著明な圧排が認められた.主訴は呼吸器症状であり腹部臓器の観察の必要はないと考え胸腔側から手術を行った.左第7肋間開胸で弛緩した横隔膜を部分切除後マーレックスメッシュで補強した.術後呼吸器症状は改善し臥位でも睡眠できるようになった.横隔膜弛緩症を修復し巨大結腸を腹腔側へ圧排することに伴う腹部症状の悪化を懸念していたが,もともと存在した便秘以外は認めなかった.
著者
岡谷 泰治 宇高 徹総 高木 章司 永廣 格 三竿 貴彦 山中 正康 青江 基 岡部 和倫 伊達 洋至 安藤 陽夫 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.870-874, 1995-11-15
参考文献数
10
被引用文献数
5

成熟型奇形腫は時に隣接臓器に穿孔を来すことが知られており,その発生頻度は36%に及ぶと報告されている.今回我々は,胸部単純X線写真で急速な腫瘤陰影の拡大を認め,術後に肺への穿孔が確認された縦隔成熟型奇形腫の一例を経験したので報告する.症例は12歳の女児で1993年5月20日頃より肺炎様症状を認め,6月12日に突然の前胸部痛,激しい咳嗽および発熱が出現し近医に入院した.6月17日に当科に入院するまでの5日間に胸部単純X線写真上で腫瘤陰影の明らかな拡大を認めた.精査の結果,縦隔奇形腫と診断して,6月21日に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は前縦隔右側にあり,右肺上葉の一部と強固に癒着していたため右肺上葉の一部の合併切除を要した.病理組織検査で腫瘍と癒着していた肺内には膿瘍の形成を認め,肺穿孔を伴った成熟型奇形腫と診断された.