著者
梅田 将志 三竿 貴彦 妹尾 知哉 鹿谷 芳伸 青江 基 中村 聡子
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.531-535, 2022-07-15 (Released:2022-07-15)
参考文献数
23

胸腺リンパ上皮腫様癌は,胸腺癌の一亜型に分類され,未分化型上咽頭癌であるリンパ上皮腫癌に類似した病理組織像を有している.国際胸腺悪性腫瘍研究会は,胸腺リンパ上皮腫様癌は胸腺癌全体の6%程度と稀であると報告している.今回我々は,胸腺リンパ上皮腫様癌に対して外科的切除および術後放射線療法を施行した一例を経験したので,文献的考察を加えて臨床像について報告する.症例は68歳,男性.検診の胸部CT検査にて前縦隔に10 mm大の小結節影を認め,精査加療目的に当科紹介となった.前縦隔の小結節影は緩徐に増大傾向を示したため,正岡I期の胸腺腫疑いで左胸腔鏡下胸腺部分切除術を施行した.病理組織検査では,胸腺原発のリンパ上皮腫様癌であると診断された.術後は放射線照射療法を施行し,術後37ヵ月現在,無再発生存中である.
著者
川名 伸一 三竿 貴彦 松原 慧 吉川 武志 青江 基
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.150-155, 2019-03-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

肺切除術中の偶発症の一つとして,稀ではあるが迷走神経刺激による心停止が起こることがある.症例は69歳,女性.左上葉肺腺癌に対して完全胸腔鏡下にて左肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清術を予定して手術を開始した.肺門前方での左主肺動脈の剥離操作中に突然高度の徐脈から心静止となった.直ちにツッペルと示指を用いて心臓を叩打したところ,心静止後約1分で自己心拍は再開した.迷走神経刺激が原因と考えアトロピンを投与して手術を続行した.大動脈弓下リンパ節郭清の際に再び高度徐脈となったが,操作の中断により徐脈は改善した.その後,徐脈誘発に注意しつつ郭清を完遂し手術を終了した.肺切除術中の迷走神経刺激による心停止例の誌上報告は,本症例を含めていずれも左側手術であった.肺切除術,特に左側手術においては徐脈の出現に注意を払い,心停止の前兆として捉えて機敏に対応することが,心停止への移行を回避するために重要である.
著者
岡谷 泰治 宇高 徹総 高木 章司 永廣 格 三竿 貴彦 山中 正康 青江 基 岡部 和倫 伊達 洋至 安藤 陽夫 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.870-874, 1995-11-15
参考文献数
10
被引用文献数
5

成熟型奇形腫は時に隣接臓器に穿孔を来すことが知られており,その発生頻度は36%に及ぶと報告されている.今回我々は,胸部単純X線写真で急速な腫瘤陰影の拡大を認め,術後に肺への穿孔が確認された縦隔成熟型奇形腫の一例を経験したので報告する.症例は12歳の女児で1993年5月20日頃より肺炎様症状を認め,6月12日に突然の前胸部痛,激しい咳嗽および発熱が出現し近医に入院した.6月17日に当科に入院するまでの5日間に胸部単純X線写真上で腫瘤陰影の明らかな拡大を認めた.精査の結果,縦隔奇形腫と診断して,6月21日に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は前縦隔右側にあり,右肺上葉の一部と強固に癒着していたため右肺上葉の一部の合併切除を要した.病理組織検査で腫瘍と癒着していた肺内には膿瘍の形成を認め,肺穿孔を伴った成熟型奇形腫と診断された.