著者
竹原 正也 永浜 政博 小林 敬子
出版者
徳島文理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

宿主は、細菌感染に対して好中球の産生を亢進し対抗するが、一部の細菌感染は致死的である。我々は、ウエルシュ菌が感染したマウスや、α毒素を投与したマウスでは成熟好中球が減少することを発見した。また、本菌の感染は末梢の成熟好中球を減少させた。骨髄細胞をα毒素で処理すると、脂質ラフトが変化し、好中球の分化が抑制された。脂質ラフトの阻害剤を処理した骨髄細胞では、好中球の分化が抑制され、脂質ラフトの阻害がα毒素による好中球の分化抑制に関与することが示唆された。以上の結果より、ウエルシュ菌α毒素は好中球の分化を阻害し宿主免疫を障害する、本菌の新しい免疫回避機構が明らかとなった。
著者
中野 真代 小田 真隆 永浜 政博 山本 博文 今川 洋 櫻井 純 西沢 麦夫 樽井 敬史 渋谷 昌弘 大林 寿美代 玉城 翔太
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.333-338, 2012

Vizantine (3) is a synthetic derivative of treharose-6,6-dicorynomycolate (TDCM) which was characterized in 1993 as the cell surface glycolipid of Corynebacterium diphtheriae and shows a variety of significant biological activities for adjuvant development. In vitro, vizantine activates not only the macrophages of mice sera, but also induces the release of MIP-1β, IL-6, IL-8 etc. from human acute monocytic leukemia cell line cells (THP-1 cells). Because almost no TNF-α is induced in vivo, the lethal toxicity to animals was found to be ncredibly low. However, oral administration of vizantine to C57BL/6 mouse (p.o. 100 μg x 7 times) inhibits lung metastasis of B16-BL6 melanoma cells (which are classified in highly metastatic tumor cell). In recent years, structural components of the outer surface membrane of bacteria have attracted considerable attention as lead compounds for adjuvant development. However, a concern of the use of these compounds is that they can over-activate innate immune responses leading to the clinical symptoms of septic shock. Therefore, an important issue is a detailed knowledge of the immunostimulatory mechanism to harness beneficial effects without causing toxicity. Here, to advance the mechanistic studies of vizantine, we have synthesized magnetic beads-attached 4 that maintain immunological activities and can therefore act as a molecular probe. Using a pull-down assay of 4 and the extract of HEK-293T cells transfected with plasmid for TLR4 and MD2, vizantine was found to act as a ligand of the Toll-like receptor 4 (TLR4) and MD2 complex. Furthermore, the macrophage from TLR4 knockout (TLR4 -/-) mice showed decreased response to vizantine, but that from TLR2 knockout (TLR2 -/-) mice did not. Taken together the results suggest that vizantine suppresses the tumor lung metastasis through the activation of macrophages via TLR4/MD2 complex.
著者
櫻井 純 小林 敬子 永浜 政博 藤井 儀夫
出版者
徳島文理大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ウエルシュ菌α毒素は、致死、壊死、溶血活性、さらには、血管、腸管の収縮活性など多彩な生物活性を有する特異な毒素である。一方、本毒素は、本菌によるガス壊疸の主要毒素であるので、この感染症に対する毒素の役割を明らかにするため、主に、細胞膜に対する作用に焦点を絞り検討した。α毒素をウサギ赤血球に作用させると、毒素量に従って破壊される赤血球数が増加し、さらに、血球膜中におけるホスファチジン酸合成の促進することが判明した。このホスファチジン酸合成の促進は、赤血球膜ゴ-スト本毒素を作用させた場合も認められた。これらの結果から、本毒素による溶血作用発現にはホスファチジン酸合成が密接に関係していると推察される。次に、GTP、NAD存在下赤血球膜ゴ-ストに本毒素を作用させると、ホスファチジン酸合成は、著しく促進されることが判明した。但し、intact赤血球における本毒のホスファチジン酸合成の促進作用に対して、GTP、NADの添加効果は認められなかった。これらの結果から、本毒素による赤血球膜のリン脂質合成促進は、内因性のGTP、NADが重要な因子であると推察される。これらの結果を確かめるため、血小板に対する本毒素の影響を検討した。ウサギ血小板は、毒素の用量に従って凝集し、しかも、血球の場合と同様に細胞膜中のホスファチジン酸量も増加することが判明した。また、赤血球の場合も、血小板の場合も、本毒素による他のリン脂質、そして、アラキドン酸の合成促進は認められなかった。一方、脂肪細胞に毒素を作用させると、毒素量に従ってアラキドン酸合成が促進されることが明らかとなった。以上から、本毒素が生体膜に作用すると、リン脂質代謝が活性化され、その影響によっておのおのの細胞が有する特有の代謝系も活性化されると推察される。その結果、細胞膜が破壊されたり、細胞凝集が引き起こされると思われる。