著者
上間 匡 永田 文宏 朝倉 宏 野田 衛
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.102-107, 2018

カキは成長過程で海水中の微生物を取り込むことから,ヒトノロウイルス(NoV)等の糞便由来病原ウイルスによる汚染リスクが存在する。Pepper mild mottle virus(PMMoV)はヒト糞便や環境水に豊富に存在する植物ウイルスで,近年環境水中のヒト糞便汚染指標の候補ウイルスとして認識されている。本研究では2016年7月から2017年3月に国内13のカキ生産地の市販カキ138バッチを採取し,RT-PCRによりPMMoVとNoVの検出を比較した。PMMoVは116バッチ(84.1%),NoVは67(48.6%)バッチからそれぞれ検出され,両者が同時に検出されたのは52バッチ(37.7%)であった。PMMoVは2016年7月から2017年3月までのカキ採取期間を通してすべての月で検出されたが,NoVは11月から3月の冬季にのみ検出された。PMMoVは12の生産海域のカキから検出された。以上の結果は,我が国においてPMMoVがカキに幅広く分布していることを示唆する。PMMoVをカキやカキ生産海域におけるヒト糞便由来ウイルスの汚染指標として利用するためには,PMMoVと糞便由来病原ウイルスの定量検査の導入が必須であると考えられた。