著者
朝倉 宏 山本 詩織 橘 理人 吉村 昌徳 山本 茂貴 五十君 靜信
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.159-166, 2015-09-30 (Released:2015-10-24)
参考文献数
23
被引用文献数
6 4

鶏肉におけるカンピロバクター・ジェジュニ/コリ汚染を流通段階で制御するための一手法として,冷凍処理の有効性を検証した.NCTC11168および81–176株を用いた添加回収試験の結果,鶏挽肉における生存性は,-20℃での2週間の冷凍処理により,最大で約1.9–2.3対数個の減少を認めた.40%の自然汚染率をあらわす鶏挽肉を同上温度での冷凍処理に供したところ,汚染率は1日後には半減し,一週間後にはさらにおよそ半減した.急速冷凍処理(Crust freezing)を行った食鳥部分肉(ムネ・ササミ・レバー・砂肝)は,チルド処理群に比べて,相対的に低いカンピロバクター汚染菌数を示した.しかし,モモ肉ではその差異は認められなかった.輸入冷凍鶏肉の本菌汚染率は,2.2%(1/45検体)と,国産チルド鶏肉検体の陽性率(26.7%, 12/45検体)に比べて顕著に低い値を示した.以上の成績より,冷凍処理は,鶏肉におけるカンピロバクター汚染を低減する一手法であることが示された.
著者
山本 詩織 秋元 真一郎 迫井 千晶 山田 研 壁谷 英則 杉山 広 髙井 伸二 前田 健 朝倉 宏
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.77-82, 2022-06-30 (Released:2022-07-07)
参考文献数
24

This study examined the thermal kinetics in wild deer and wild boar meats by low temperature cooking process as well as its bactericidal effect. The thermal processing so as to heat the inner-core of the samples at 65℃ for 15 min, 68℃ for 5 min, 75℃ for 1 min in steam convection oven exhibited faster elevation rate of the internal temperature of wild deer meat than wild boar meat, while their sterilization values after the thermal processes were estimated to be almost equal. Naturally contaminated fecal indicator bacteria were not recovered from all samples after the above-mentioned processing. Spike experiment resulted that approximately 6.6–7.8 log CFU/g of STEC O157 and/or Salmonella spp. were not recovered from the wild deer meats after the three types of thermal cooking. Thus, these data indicated aptitude of these low temperature cooking conditions to minimize the microbiological risks in the game meat.
著者
朝倉 宏 中村 寛海
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,食品媒介性感染症として世界中で多発するカンピロバクターがヒト生体内での感染過程で顕す遺伝子発現及び腸内細菌叢の動態を発症患者由来検体を研究対象にプロファイル化し,疫学情報及び原因菌株のゲノム特性と融合を通じ,本菌感染に伴う病態発現の分子基盤に係る基礎知見の集積を図ることを目的としている。ヒト腸管環境において本菌が顕す病態形成機構は依然として不明な点が多く、主たる病原因子の同定並びに微生物間クロストークに関する分子解明,ひいては予防治療に資する標的分子の特定や腸管環境下の細菌叢調節を通じた感染制御策の構築等へと波及することが期待される。
著者
塚本 真由美 苅谷 俊宏 山﨑 翔矢 小畑 麗 向島 幸司 村瀬 繁樹 朝倉 宏 森田 幸雄
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.e11-e17, 2023 (Released:2023-02-03)
参考文献数
9

ゼロトレランス検証の有用性を確認するため,獣毛(5),糞便(8),消化管内容物(6),レールダスト(5),フットカッター汚れ(5)が付着した黒毛和種牛枝肉を採材した.獣毛,糞便,消化管内容物間の一般細菌数と腸内細菌科菌群数に有意差がなかった.獣毛-糞便-消化管内容物検体の一般細菌数はレールダスト-フットカッター汚れ検体のそれと比べ高値であった.消化管内容物はFirmicutes 門,獣毛・レールダスト・フットカッター汚れはProteobacteria 門の比率が高く,糞便はFirmicutes 門とProteobacteria 門が高い比率の菌叢であった.付着異物ごとに菌叢の違いが確認された.食肉衛生上,糞便及び消化管内容物だけでなく獣毛が付着したと体表面はトリミングすることが必要であると思われた.
著者
富川 拓海 國吉 杏子 伊藤 史織 佐久川 さつき 石川 輝 齋藤 俊郎 小島 尚 朝倉 宏 池原 強 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.190-194, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
参考文献数
32
被引用文献数
3

シガテラ魚類食中毒は,シガトキシン類(CTXs)を含有する魚類による動物性自然毒食中毒で,主に熱帯・亜熱帯で発生している.日本では,沖縄県を中心に発生報告があるが,日本本土の太平洋岸産魚類による食中毒事例も散発的に発生し,原因魚種のほとんどがイシガキダイOplegnathus punctatus の老成個体である.イシガキダイにおけるCTXsの含有状況を調査するために,本州,四国,九州,奄美,沖縄,および小笠原の沿岸産176個体(標準体長:13.1~60.0 cm,体重:100~6,350 g,年齢:0~11歳)を収集し,LC-MS/MSによる分析を実施した.そのうち沖縄産2個体(全試料の1.1%)からCTXsが検出され,沖縄産14個体に限定した検出率は14%であった.CTXsが検出された2個体の魚肉中の総CTX含量は,0.014 μg/kgおよび0.040 μg/kgであり,いずれも米国FDAの推奨値0.01 μg CTX1B equivalent/kg以上であったが,ヒトの最小発症量(10 MU, CTX1B換算で70 ng)に達するには,1.5 kg以上の摂食が必要であるため,シガテラ魚類食中毒発症のリスクは高くないと考えられる.沖縄産イシガキダイのCTXs組成はCTX1B系列のみで,バラフエダイやバラハタなどの肉食魚が含有するCTX1Bおよび52-epi-54-deoxyCTX1Bに加えて,渦鞭毛藻が産生するCTX4AおよびCTX4BがCTX1Bと同程度のレベルで検出された.なお,CTX3C系列は検出されなかった.
著者
柿内 梨那 阿井 隆之介 堀内 雄太 朝倉 宏 中馬 猛久
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-109, 2019-06-30 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

Chicken-sashimi is a heat-seared poultry meat dish firmly established in the food culture of Kagoshima. It is now becoming widely consumed across Japan. The chicken-sashimi supplied in Kagoshima is heat-seared following carcass chilling, whereas that supplied in other regions is processed without heat-searing. Mounting epidemiological data has shown associations between non-heated-seared chicken-sashimi and Campylobacter food poisoning in most metropolitan areas, whereas chicken-sashimi-related food poisoning is rare in Kagoshima. We thus aimed to investigate the process-by-process (de-feathering, chilling, and heat-searing) dynamics of Campylobacter and fecal indicator bacterial levels in the production of chicken-sashimi from slaughtered birds at a poultry processing plant in Kagoshima. We examined 30 chicken-carcasses, and Campylobacter was detected in small quantities on the 5 samples of carcass surface after de-feathering, but was not detected in any swabs taken after chilling. E. coli and coliform were not detected, and general bacterial counts were held below 0.9 cfu/g after heat-searing, indicating that cauterization by heat-searing effectively reduced microbiological contamination of the chicken meat. This is the first report on a hygiene control strategy for chicken-sashimi, describing microbiological dynamics. Our data suggests that thorough treatment at each process enables the safe supply of chicken-sashimi for minimized risk of human infection.
著者
上間 匡 永田 文宏 朝倉 宏 野田 衛
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.102-107, 2018

カキは成長過程で海水中の微生物を取り込むことから,ヒトノロウイルス(NoV)等の糞便由来病原ウイルスによる汚染リスクが存在する。Pepper mild mottle virus(PMMoV)はヒト糞便や環境水に豊富に存在する植物ウイルスで,近年環境水中のヒト糞便汚染指標の候補ウイルスとして認識されている。本研究では2016年7月から2017年3月に国内13のカキ生産地の市販カキ138バッチを採取し,RT-PCRによりPMMoVとNoVの検出を比較した。PMMoVは116バッチ(84.1%),NoVは67(48.6%)バッチからそれぞれ検出され,両者が同時に検出されたのは52バッチ(37.7%)であった。PMMoVは2016年7月から2017年3月までのカキ採取期間を通してすべての月で検出されたが,NoVは11月から3月の冬季にのみ検出された。PMMoVは12の生産海域のカキから検出された。以上の結果は,我が国においてPMMoVがカキに幅広く分布していることを示唆する。PMMoVをカキやカキ生産海域におけるヒト糞便由来ウイルスの汚染指標として利用するためには,PMMoVと糞便由来病原ウイルスの定量検査の導入が必須であると考えられた。
著者
長沢 寛弥 國吉 杏子 谷川 敏明 小林 直樹 小西 良子 朝倉 宏 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.157-161, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

小笠原群島(聟島列島,父島列島および母島列島)におけるシガテラの実態を調査するために,周辺海域で漁獲されたバラハタVariola louti 65個体の筋肉を試料としてLC-MS/MSによるシガトキシン類(CTXs)分析を実施した.すべての試料からCTX1Bに近接するピークが検出されたが,CTX1Bの前駆体である52-epi-54-deoxyCTX1B,54-deoxyCTX1Bや,他のCTX類縁体は検出されなかった.バラハタ試料では通常,この3物質が同時に検出されることから夾雑物による影響を考え分析カラムを変更して分析した結果,全試料においてCTX1Bとは保持時間が異なったため夾雑物由来であると判断した.本研究に供したバラハタは体重2,170~7,000 gと大型の個体であったにも関わらず,65個体のいずれからもCTXsは検出されなかった.そのため,小笠原群島周辺海域のバラハタによるシガテラのリスクは低く,CTXs産生性渦鞭毛藻の分布密度は沖縄・奄美海域に比較して極めて低いことが示唆された.
著者
大城 直雅 富川 拓海 國吉 杏子 木村 圭介 小島 尚 安元 健 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.8-13, 2021-02-25 (Released:2021-03-04)
参考文献数
18
被引用文献数
10

世界最大規模の自然毒食中毒シガテラの未然防止のために,地方自治体では可能性のある魚種を指定して販売自粛を指導している.水産卸売市場で販売が自粛された魚類7種18試料についてLC-MS/MSによりシガトキシン類(CTXs)を分析した結果,5試料(バラフエダイ4試料およびバラハタ1試料)からCTXsが検出された.含量の高かった2試料(No. 5: 0.348 μg/kg, No. 8: 0.362 μg/kg)は200 g程度の摂食で発症すると推定され,販売自粛がCFPを未然に防止したことが示唆された.産地不明のバラフエダイ(1試料)からはCTX1B系列(CTX1B, 52-epi-54-deoxyCTX1Bおよび54-deoxyCTX1B)のみが検出され,沖縄・奄美産バラフエダイと組成が類似していることから沖縄・奄美海域で漁獲された可能性が示唆される.一方,和歌山産バラフエダイ(2試料)からはCTX1B系列とCTX3C系列(2,3-dihydroxyCTX3C, 2,3,51-tri­hydroxyCTX3C, 2-hydroxyCTX3C)の両方が検出された.なお,本州沿岸産魚類からCTXsを検出したのは初めての例である.
著者
杉山 広 森嶋 康之 賀川 千里 荒木 潤 巖城 隆 小松 謙之 味口 裕仁 生野 博 川上 泰 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.103-108, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2

回虫は土壌伝播蠕虫の代表となる寄生虫で,ヒトは虫卵に汚染された植物性食品を摂食して感染する.日本では少数の国内感染症例が継続的に報告されているが,症例数の推移や感染源となる植物性食品の汚染状況は不明な点が多い.そこで,近年の回虫症例発生状況および感染源を明らかにするため,日本臨床寄生虫学会誌,PubMedおよび医中誌Webを用いた文献検索,および臨床検査機関・食品検査機関を対象としたアンケートによる聞き取り調査を行った.文献検索の結果では,1990より2018年の29年間に計193例の回虫症例が確認された(年平均6.7例).しかし2002年以降の報告数は激減し,年平均1.3例にとどまった.臨床検体における回虫症例数も,2000から2008年の年平均19.7例が,2009年以降2.8例と激減した.回虫の感染源となる植物性食品は12,304検体が検査されたが,アニサキス類の幼虫が検出された(11例)ものの,回虫は検出されなかった.ただしキムチは,173検体中の1検体から虫卵が検出され,回虫の感染源であることが疑われた.回虫症例は減少傾向が明らかだが,いまだに発生は確認され,このために感染源を特定して予防対策を確立するために,食品の調査を今後も継続する必要があると考えられた.
著者
佐々木 貴正 岩田 剛敏 上間 匡 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.126-131, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
24
被引用文献数
3

カンピロバクターは,食品媒介性感染症における最も重要な原因菌の1つである.カンピロバクター感染症の際に抗菌薬が使用されることは稀であるが,症状が重度である場合や長期間持続する場合には使用されることがある.カンピロバクター感染症の原因の1つは,カンピロバクターに汚染された牛肝臓の喫食である.牛肝臓は,と畜場において胆汁により表面と内部が汚染される可能性がある.以上のことから,われわれは,と畜場において,胆汁のカンピロバクター汚染状況およびその分離株の性状を調査した.カンピロバクターは35.7%(55/154)から分離され,C. jejuniとC. fetusが上位2菌種であった.C. jejuniでは,テトラサイクリン(63.0%)とシプロフロキサシン(44.4%)に高率な耐性が認められた.Multi-locus sequence typingにより,C. jejuniは12型に分類され,ST806が最も多く,37.0%を占めていた.すべてのC. fetusは全身性疾患の原因となることがあるC. fetus subsp. fetusと同定された.C. fetusでは,シプロフロキサシン(66.6%),ストレプトマイシン(58.3%)およびテトラサイクリン(33.3%)に高率な耐性が認められた.すべてのC. fetusは,ST3 (16株)およびST6 (8株)に分類された.16株のST3のうち,15株(93.8%)はストレプトマイシンとシプロフロキサシンの両方に耐性であった.本調査結果は,牛胆汁の高率なカンピロバクター汚染とその分離株の高率な薬剤耐性を示していている.と畜場における牛肝臓の胆汁汚染防止は,カンピロバクター感染のリスク低減策の1つである.
著者
七堂 利幸 朝倉 宏之 藤田 誠
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.57-64, 1990-03-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
6

After examining the judging procedures relating to Chinese martial arts demonstrations it has become clear that using the score of the first person as a standard for judging the other participants produces an obvious upward trend in scoring, meaning that the later a person performs the better his or her score is likely to be, and therefore this cannot be considered an acceptable method of scoring. Furthermore, there is no standard for scoring for the larger part of the events; and for some, even if there are standards they are ignored in practice and the afore-said method of scoring is used. As to why there should be an upward trend in scoring, perhaps the judges feel reluctant to give out very high scores at first for fear that a truly exceptional participant will appear later. Therefore, one's order of appearance has a profound effect on one's score, and there is no proper discrimination in scoring. Regarding the reliability of scoring, there is also a problem with large discrepancies in scoring between preliminary and final rounds. The following standardized set of procedures should be adopted: Practitioners of one form should compete in one event, Events without set standards for scoring should be established and judged by persons specializing in that event. Ttraining and checking of judges should be implemented. The number of persons advancing to the finals should be determined by the number of people in the preliminaries. Scoring should be conducted independently and individually. And, most of all, the order of appearance of participants should be decided fairly and impartially. If these things are not done it will probably be impossible to establish this as a competition.