著者
山辺 高司 永田 正毅 石蔵 文信 安田 聡 木村 晃二 宮武 邦夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.12-17, 1991-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)を施行するにあたりバルーン径設定が開大弁口面積,僧帽弁逆流に及ぼす影響について検討した.対象は僧帽弁狭窄症患者46例.旧型28mm仕様の井上バルーンカテーテルを用いてPTMCを施行した.設定バルーン径を<26mm,26mm,26mm<の3群に分けて開大弁口面積,僧帽弁逆流を比較した.設定バルーン径26mmの14例,26mm末満の5例について最大開大時の中央径をシネフィルム上で計測,検討した.また,バルーンの特性を知るため狭窄弁ロモデルとして設定径よりも小さな穴の中で開大し,内圧を測定した.開大弁口面積は,設定バルーン径が小さい場合に小さい傾向にあった.僧帽弁逆流は設定26mm未満の場合は認められなかった.設定バルーン径と実測バルーン径の比をとると,設定26mmでは平均0.94,設定26mm未満では平均O.83と有意な差を認めた.バルーン内圧は中央径の増大に伴い上昇した.バルーン中央部に抵抗がかからない状態では26mm設定と24mm設定の間の内圧の差は0.3kg/cm2程度であったが,抵抗が加わった場合その差は0.9~1.Okg/cm2になった.以上より,バルーン内圧の高い26mm設定の場合,より設定径に近く開大することが判明した.バルーン径を大きくすると僧帽弁逆流の増悪の頻度が増し,小さくすると内圧が下がり十分な開大の効果が得られなかった.目標とするバルーン径で十分な圧が得られるバルーンの開発が望まれる.