著者
西部 義久 永野 篤弘 上嶋 康秀
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Supplement1, pp.46-49, 2002-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
6

点鼻製剤は, 鼻腔局所で作用する薬物のみならず, 全身作用を目的とする薬物においても, 経口・注射に代わる投与経路として期待されている。しかしながら, 線毛運動等のクリアランス機構によって, 製剤の鼻腔内滞留時間は制限を受け, より効率的なデリバリー達成のためには薬物浸透性の向上が必要とされる。薬物浸透性を向上させる方法として, 吸収促進剤の添加, 粘膜付着性高分子の添加さらには粉剤化などが報告されている。今回, これらに代わる新規な薬物浸透性改善法を検討した結果, 懸濁製剤の浸透圧を低く調整することにより, 薬物浸透性が劇的に向上することを見出した。ウサギを用いたフルオレセイン経鼻吸収試験において懸濁製剤の低浸透圧化によりフルオレセインの生物学的利用率が顕著に向上した。懸濁製剤の低浸透圧化による薬物浸透性向上は, 吸収促進剤を一切使用しない, 安全な新規点鼻製剤技術としてその有用性が期待される。
著者
湯川 寛夫 町田 大輔 金成 正浩 永野 篤 藤澤 順 松川 博史 清水 哲 河野 尚美 利野 靖
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.476-480, 2006-04-01
被引用文献数
5

胆嚢原発腺内分泌細胞癌はまれな疾患であり予後不良といわれている.本邦では自験例を含め54例の報告をかぞえるのみである.今回,我々は原発巣に対し切除術を施行し予防的放射線化学療法を行った胆嚢腺内分泌細胞癌を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,US, CT, MRIにて胆嚢底部に腫瘤影を認め,腹腔鏡下に胆嚢摘出術を施行した.術中迅速診にて未分化癌疑いとの報告を受け,開腹に移行しD2+α郭清,肝床部切除を付加した.病理組織学所見ではHE染色で粘膜面では高分化型腺癌の像を呈するが,腫瘍の大部分ではN/C比の高い腫瘍細胞が充実性増殖し明らかな管腔形成は示さずrossetteを認めた.免疫染色ではNCAMが弱陽性を示し,腺内分泌細胞癌と診断した.術後,肺小細胞癌に準じて肝門部に放射線治療とcisplatin+etoposideの化学療法を2クール施行し,術後24か月無再発生存中である.