著者
河原 慎之輔 佐藤 勉 白井 順也 沼田 幸司 羽鳥 慎祐 谷 和行 玉川 洋 湯川 寛夫 利野 靖 益田 宗孝
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.356-362, 2020 (Released:2021-09-01)
参考文献数
15

症例は80歳女性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腸炎の診断で腸管安静を指示され帰宅した.その後嘔吐・腹部膨満も自覚したため再度受診した.再受診時の腹部CTで腹水・腸管浮腫が出現しており,虫垂炎手術の既往もあるため癒着による絞扼性腸閉塞の可能性も考え,緊急開腹術を施行した.術中所見では回腸末端より10cm口側部に固い腸管内容物を触知し腸閉塞の原因となっていた.内容物はバウヒン弁を通過できなかったため小切開にて摘出すると線維性食塊であった.口側腸管にも同様の食物残渣を多量に認め可及的に排出し,切開創を縫合し終了とした.術後の問診でドライフルーツのリンゴを摂取したことを確認した.ドライフルーツが原因となった食餌性腸閉塞の症例は,本邦では自験例のほかに2例の報告を認めるのみと非常に稀であるが,食餌性腸閉塞の鑑別としてドライフルーツも念頭に置く必要があると考えられた.
著者
湯川 寛夫 赤池 信 杉政 征夫 武宮 省治 亀田 陽一 今田 敏夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.1443-1447, 2002-08-01
参考文献数
15
被引用文献数
15

症例は50歳の女性.1996年6月注腸検査,大腸内視鏡検査で肛門縁から10cmの直腸に2型病変をみとめ生検でanaplastics quamous cell carcinomaであった.術前CTにて傍直腸,大動脈周囲,左腸骨動脈周囲にリンパ節腫大を認めた.8月12日低位前方切除術施行,術中迅速診にて大動脈周囲リンパ節に転移陽性であり,根治度Cであった.病理組織診では直腸原発の小細胞癌と診断した.肺小細胞癌に準じ術後CDDP40mg×2日,VP-16100mg×3日(1クール)の化学療法を施行した.化学療法が奏効し術後9MのCTにて傍大動脈リンパ節腫大消失CRを得て以後2001年2月まで42か月,再発なく経過中である.小細胞癌の直腸原発例はまれであり,1クールにもかかわらず化学療法が奏効した1例を経験したので報告する.
著者
荒井 宏雅 利野 靖 山中 澄隆 湯川 寛夫 和田 修幸 益田 宗孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.2189-2192, 2008 (Released:2009-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は65歳,男性.胸腺腫を合併した重症筋無力症(MGFA分類IIIb期)の診断で当院神経内科に入院.抗コリンエステラーゼ薬内服,血漿交換療法,メチルプレドニゾロン1000mg/日×3日間のステロイドパルス療法を施行し,以後ステロイド50mg/日の内服となった.ステロイド導入後約1カ月の胸部CTでは指摘された腫瘤は画像上消失していた.拡大胸腺摘出術を施行し,術後病理診断は胸腺腫(Müller-Hermelink分類混合型,WHO分類Type B2)の退行性変化であった.術前にステロイド導入を行った胸腺腫合併重症筋無力症においては,胸腺腫の退縮の可能性もあることを念頭に置くことが肝要である.
著者
利野 靖 湯川 寛夫 山田 六平 佐藤 勉 稲垣 大輔 藤川 寛人 長谷川 慎一 大島 貴 吉川 貴己 益田 宗孝 今田 敏夫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.62-66, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
9

【目的】十全大補湯は病後の疲労倦怠,食欲不振,貧血に処方される漢方薬の一つである.再発胃癌の抗癌剤治療中の白血球減少,貧血,食思不振に悩んでいた症例に十全大補湯を処方したところ改善した症例を経験した.そこで胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で十全大補湯を処方した症例をretrospectiveに解析し,抗癌剤の副作用の発現率を検討することとした. 【対象と方法】進行再発胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で31例に十全大補湯を処方した.抗癌剤の副作用発現と,十全大補湯の副作用について検討した. 【結果】十全大補湯が不味くて飲めない症例が1例.17例の血液毒性では,11例(64.7%)でGradeの低下がみられ,有効と判定した.10例の非血液毒性(食思不振,倦怠感など)では,7例(70.0%)で効果がみられた. 【結語】抗癌剤治療の副作用に十全大補湯は有効であることが考えられた.
著者
樋口 晃生 齊藤 修治 池 秀之 三箇山 洋 原田 浩 三辺 大介 今田 敏夫 山本 直人 湯川 寛夫 利野 靖 益田 宗孝
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.68-73, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
12
被引用文献数
8 8

【目的】大腸癌術前症例に3D-CT angiography(3D-CTA)を施行し動脈の走行分類を行う.【方法】2012年3月から8月の新規大腸癌患者56例に対し3D-CTAを行い(1)右結腸動脈(2)中結腸動脈(3)左結腸動脈およびS状結腸動脈の分岐走行を分類した.【結果】(1)右結腸動脈:上腸間膜動脈からの独立分岐(Type A)が25.0%,中結腸動脈からの分岐(Type B)が37.5%,回結腸動脈からの分岐(Type C)が26.8%,欠損例(Type D)が10.7%であった.(2)中結腸動脈:右枝と左枝が共通幹を形成しているものが80.4%,右枝と左枝が独立して分岐しているものが12.5%であった.副中結腸動脈は33.9%に認められた.(3)左結腸動脈およびS状結腸動脈:左結腸動脈とS状結腸動脈が独立して分岐(独立分岐型)が51.8%,同じ部位から分岐(同時分岐型)が16.1%,共通幹形成(共通幹型)が32.1%であった.【結語】3D-CTAによる動脈走行分類は腹腔鏡下手術をはじめとしたすべての大腸癌手術に有用と思われる.
著者
湯川 寛夫 町田 大輔 金成 正浩 永野 篤 藤澤 順 松川 博史 清水 哲 河野 尚美 利野 靖
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.476-480, 2006-04-01
被引用文献数
5

胆嚢原発腺内分泌細胞癌はまれな疾患であり予後不良といわれている.本邦では自験例を含め54例の報告をかぞえるのみである.今回,我々は原発巣に対し切除術を施行し予防的放射線化学療法を行った胆嚢腺内分泌細胞癌を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,US, CT, MRIにて胆嚢底部に腫瘤影を認め,腹腔鏡下に胆嚢摘出術を施行した.術中迅速診にて未分化癌疑いとの報告を受け,開腹に移行しD2+α郭清,肝床部切除を付加した.病理組織学所見ではHE染色で粘膜面では高分化型腺癌の像を呈するが,腫瘍の大部分ではN/C比の高い腫瘍細胞が充実性増殖し明らかな管腔形成は示さずrossetteを認めた.免疫染色ではNCAMが弱陽性を示し,腺内分泌細胞癌と診断した.術後,肺小細胞癌に準じて肝門部に放射線治療とcisplatin+etoposideの化学療法を2クール施行し,術後24か月無再発生存中である.