- 著者
-
江上 徹也
野口 美和
上田 成一
- 出版者
- The Japanese Society for Medical Mycology
- 雑誌
- 日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.4, pp.277-283, 2003-10-30 (Released:2009-12-18)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
5
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耳鼻咽喉科領域の真菌症について総説的に述べた.最も一般的なものは外耳道真菌症で自験例について臨床的,菌学的検討を加えた.同定菌種はAspergillus(A.)terreusが最多で,A. flavus, A. nigerの順であった.アスペルギルス属は手術顕微鏡や内視鏡で外耳道を観察すると分生子頭と菌糸が認められるので,外来での視診時に診断が可能である.Candida属はイースト状の白色耳漏が治療に反応せず頑固に続く際に真菌検査を行って診断される事が多い.市販された抗菌剤の中ではアスペルギルス属に対してはラノコナゾールが抗菌力,殺菌力共に優れていた.A.terreusについて環境由来株と比較すると,外耳道真菌症由来株は麦芽寒天培地での生育速度が遅く,ゲノム上にも相違を認めた.副鼻腔真菌症ではアスペルギルス症が一般的でCT所見で上顎洞に石灰化様の濃痰まだらの粘膜肥厚像を認める.内視鏡下に中鼻道を拡大して,fungus ballと呼ばれる乾酪状物質を除去し,副鼻腔のdrainageと換気を改善すれば予後良好である.稀ではあるが眼症状,脳神経症状を合併する場合は致死的疾患としてムコール症を忘れてはならない.咽喉頭カンジダで成人の場合は免疫不全,特にエイズに注意が必要である.