著者
江原 朗
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.113-123, 2013-09-20 (Released:2013-09-27)
参考文献数
22
被引用文献数
4

医師数の増加によって医師1人あたりの患者数が減少すれば,医療機関は赤字経営に転落する。このため,小規模な市町村では診療が成立しない診療科もあり,また,人口に対する医師数も診療科ごとに上限があるはずである。そこで,2000年と2010年の医師歯科医師薬剤師調査および国勢調査を用いて,各診療科の診療が成立する人口規模と診療科群ごとの医師密度(医師数/人口)について実証研究を行った。診療が成立する(50%以上が医師の従業地となる)市区町村の人口規模をもとめると,内科ではすべての人口規模,小児科,外科,整形外科,眼科では1万人以上,循環器内科,消化器内科,皮膚科,精神科,泌尿器科,脳神経外科,耳鼻いんこう科,産婦人科では3万人以上,神経内科,放射線科,消化器外科,麻酔科では5万人以上,呼吸器内科,糖尿病内科,リハビリテーション科では7万人以上,腎臓内科,心療内科,呼吸器外科,心臓血管外科,形成外科,婦人科では10万人以上,血液内科,リウマチ科,乳腺外科,肛門外科では20万人以上,美容外科,小児外科,産科では30万人以上,アレルギー科では50万人以上であった。また,診療が成立する人口規模では診療科ごとの医師密度はほぼ一定であり,多くは総計値の±30%以内であった。
著者
江原 朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1029-1035, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

高齢化の進行や家庭の育児能力の低下から,夜間・休日の救急外来等の受診が増加し,勤務医の疲弊と退職が社会問題化している.こうした中で,病院における労働基準法違反が顕在化してきた.特に,当直が宿日直ではなく,夜間・休日の通常勤務であることが指摘されている.宿日直手当は,日給の3分の1程度の支給ですむものの,救急外来や臨時手術を夜間・休日に行った場合,割増賃金を支給する必要がある.継続性のある医療を構築するには,労働法規を遵守した労務管理が不可欠である.
著者
江原 朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.675-681, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1

日本の医師の労働時間を国際比較すると,欧米に比べて週当たりの労働時間が長い.長時間労働は,過労死の誘因ともなり,労働衛生の面から問題である.しかし,そればかりではない.医療事故を誘発し,患者に対する医療安全の面でも見過ごすことができないのである.しかし,病院における労務管理は,必ずしも労働法規を遵守しているとはいえない.全国の自治体病院399施設について,労働基準監督署から交付された是正勧告書を開示請求して解析したところ,過去9年間に約6割の自治体病院が労働法規に違反していたことが判明した.特に,ずさんな労働時間管理や時間外・休日・深夜における割増賃金の未払いが目立っていた.