著者
桶谷 典弘 斉藤 博之 江部 達夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.983-988, 1996-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎の1例を報告した. 症例は72歳の女性で, 口内炎の治療のため半夏瀉心湯と白虎加人参湯を内服したところ, 8ヵ月後に労作時息切れと胸部X線写真上びまん性の斑状影が出現し, 間質性肺炎の疑いで入院した. 薬剤性肺臓炎を疑い, 内服薬を中止したところ, 臨床症状, 胸部X線写真の改善を認めた. 気管支肺胞洗浄の検査では, リンパ球の増加とCD4/CD8比の低下を認め, 肺生検の組織像では, 細気管支周辺および肺胞壁に, リンパ球を主とする細胞浸潤を認めた. 白血球遊走阻止試験では, 半夏瀉心湯に対し陽性を示し, 半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎と思われた. 当薬剤による薬剤性間質性肺炎の報告は, 本邦で第1例目と思われる.
著者
石田 啓一郎 畠山 忍 幸村 克喜 江部 達夫 荒井 奥弘
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.1852-1857, 1992-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

症例は24歳の女性で, 1989年7月19日の検診にて胸部異常陰影を指摘され, 精査治療のため当院呼吸器科に紹介となり11月2日入院した. 胸部X線写真では両側中・下肺野の末梢に強い浸潤影を認め, 胸部CTでは胸膜下の小葉性陰影と考えられる density の上昇を認めた. 以上より肺胞蛋白症を疑い, 右中葉気管支より気管支肺胞洗浄および右上葉, 下葉から経気管支肺生検を施行した. 気管支肺胞洗浄液の沈渣物と経気管支肺生検における組織の電顕像にて, 多数の multilamellar body を認め肺胞蛋白症と診断した. なおかつ間質領域にマクロファージの浸潤像がみられたことから, 比較的早期と考えられる肺胞蛋白症においても間質性病変が同時に, または先行して起こる可能性が示唆された. 治療に関して, 我々は Ambroxol を経口および吸入で使用し, ある程度の有効性を認めた.
著者
桶谷 典弘 斉藤 博之 江部 達夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 = The Japanese journal of thoracic diseases (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.983-988, 1996-09-25
被引用文献数
5

半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎の1例を報告した. 症例は72歳の女性で, 口内炎の治療のため半夏瀉心湯と白虎加人参湯を内服したところ, 8ヵ月後に労作時息切れと胸部X線写真上びまん性の斑状影が出現し, 間質性肺炎の疑いで入院した. 薬剤性肺臓炎を疑い, 内服薬を中止したところ, 臨床症状, 胸部X線写真の改善を認めた. 気管支肺胞洗浄の検査では, リンパ球の増加とCD4/CD8比の低下を認め, 肺生検の組織像では, 細気管支周辺および肺胞壁に, リンパ球を主とする細胞浸潤を認めた. 白血球遊走阻止試験では, 半夏瀉心湯に対し陽性を示し, 半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎と思われた. 当薬剤による薬剤性間質性肺炎の報告は, 本邦で第1例目と思われる.
著者
富樫 賢一 江部 達夫 佐藤 和弘 斎藤 博之
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 1998-02

原発性肺癌に対する外科治療の安全性をより向上させるためにはどうすべきかを,術後死亡(手術死亡十病院死亡)例を分析することにより検討した.対象は1979年より1996年までに手術を施行した1032例である.手術死亡(術後1ヵ月以内の死亡)は10例(1.0%),病院死亡は9例(0.9%)で,術後死亡率は約2%であった.高齢者ほど,また,手術侵襲が大きいほど術後死亡率は高い傾向にあった.手術死亡10例の原因は,心破裂1例,消化管出血1例,脳出血1例,脳梗塞1例,肺炎1例,気管支痩1例,ARDS2例,突然死2例であった.病院死亡9例の原因は腎不全1例以外すべて呼吸器系の合併症であり,気管支痩3例,ARDS2例,その他の呼吸不全3例であった.これらの死因は必ずしも予側や予防が可能とは思われなかったが,厳密な手術適応の決定と術後管理における迅速な対応が肝要と思われた.