著者
江頭 宏昌
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.35-63, 2018-12-28 (Released:2021-11-24)
参考文献数
19

在来作物は戦前、全国どの地域でも当たり前に栽培され利用されていたが、戦後、生産性や市場価値の高い商業品種が登場すると、次第に姿を消していった。しかし二〇〇〇年ころを境に、再び全国で在来作物が見直されるようになった。筆者はそのころから、山形県の在来作物に関する調査研究や保全活動を始め、さまざまな業種の人々と関わってきた。本稿では、まず在来作物とは何かについて説明し、近年の山形県では在来作物をめぐるどんな動きがあったのか、人々が在来作物の栽培をやめたり、存続・復活したりする選択にはどのような要因が働いたのか、今後の課題について記述した。在来作物の消失には生産性や経済性を追求する価値観が働いた一方で、完全な消失をくい止めたのは、在来作物の美味しさや他者を喜ばせたいといった想いであることが分かった。さらに消失から復活に向かった背景には、お金に代えられない自然や地域や人とのつながりを重視する価値観が訪れたためと考えられた。
著者
高品 善 今西 茂 江頭 宏昌
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-37, 1997-03-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1

トマトの野生種 'peruvianum-complex'に属する Lycopersicon peruvianum の5系統, L. peruvianum var. humifusum の2系統,L. chilenseの2系統を花粉親とし,栽培種2品種を種子親とするF1雑種およびF1を花粉親とするB1F1戻し交雑種を胚珠選抜法によって育成した。F1およびB1F1の獲得効率は果実あたり発芽数(GOF)により評価した。F1および1994年と1995年のB1F1についてGOFの栽培品種間の相関係数を求め,さらに,それらを組み合わせた相関係数を求めたところ,正の有意な値となった(r=0,750**,d.f.=11)。年次問においても組み合わせた相関係数は有意な正の高い値となった(r=0,907^*,d.f.=3)。F1とB1F1間の相関係数は,2栽培品種とも正であるが有意ではなく,組み合わせた相関係数も有意にはならなかった(r=0,433,d.f.=3)。しかし,供試した系統の中で1系統がF1とB1F1間で全く異なるGOFを示したので,この系統を除くと,F1とB1F1の間に正の有意な相関係数が得られた(強力大型東光:r=O.754*, d.f.=5;Early Pink:r=O.924*,d.f.=3)。相関係数に関するこれらの結果は,栽培種に対する野生種の交雑不親和性に関して野生種系統間で差があり,さらにB1F1の獲得において野生種の各系統の交雑不親和性がF1の場合と同じように現れることを示している。供試した系統の交雑不親和性を3グループに分けるとおおよそ次のようになった。最も高いグループに L. peruvianum var. humifusumの2系統が入っており,中間のグループの全てはL. peruvianumであった。最も交雑不親和性の低いグループはL. chilenseの2系統であった。一方,F1とB1F1の回帰直線は,Y(B1Fl)=O.1082X (F1)+ 0.3364:強力大型東光, Y=O.1054X + O.0366:Early Pinkとなった。この結果から,予想に反してB1F1の獲得効率がF1よりも小さいことが推察された。
著者
宇田 靖 吉田 昭市 後藤 勝利 江頭 宏昌
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.559-562, 2007-12-15
被引用文献数
2

山形県在来のアブラナ科野菜である藤沢カブ(鶴岡市藤沢地区)と雪菜(米沢市上長井地区)およびそれらの漬物製品について特有成分であるグルコシノレート分解生成物をGC-MS分析した.<BR>生鮮藤沢カブでは,主なイソチオシアナート(ITC)は2-フェニルエチル-ITCであり,比較的少量の3-ブテニル-ITCおよび4-ペンテニル-ITCが存在した.しかし,揮発成分の大部分はこれらITCではなく,1-シアノエピチオアルカン類であった.<BR>一方,生鮮雪菜では3-ブテニル-ITCが主なイソチオシアナートであり,これに,比較的少量の4-ペンテニル-ITCと2-フェニルエチル-ITC, 4-メチルチオブチル-ITC, および5-メチルチオペンチル-ITCが検出されたが,生鮮雪菜の場合も藤沢カブと同様にニトリル類が高い割合で検出された.<BR>これに対して,両野菜の漬物では,いずれも生鮮物で多量副生した1-シアノエピチオアルカンの生成がほとんど見られず,ITCが主たる揮発成分となることが示された.したがって,両野菜の漬物はニトリルの生成が劇的に抑制された食物となっている.この点大変興味深い事象であり,このようなニトリル抑制機構については今後なお検討する必要がある.