著者
伊藤 和子 阿久津 智美 大山 高裕 渡邊 恒夫 山﨑 公位 角張 文紀 吉成 修一 荒井 一好 橋本 啓 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.30-37, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3 1

高い機能性と美しい色調を持つナス由来のアントシアニン色素「ナスニン」を,現在は廃棄されているナス下漬液から回収して有効活用することを目指して試験を行った.各種の合成吸着剤の吸着性能を検討し,最も吸着能の高い合成吸着剤としてHP-20を選定した.本吸着剤1mlはナス下漬液約100mlの色素成分を吸着する一方,下漬液中の食塩の95.7%,ミョウバン由来アルミニウムの99.1%が除去できた. 吸着した色素成分は5mol/l酢酸水溶液で効果的に溶出され,ナスニンの回収率は87%であった.しかし,調製された色素画分にはナスニン以外にクロロゲン酸と未同定のいくつかの成分も混在した.この色素粉末のORAC値は1g当たり10432μmol Trolox当量であり,クロロゲン酸の活性の69 %に匹敵する比較的高い抗酸化性が認められた.
著者
高橋 朝歌 松岡 寛樹 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.610-614, 2005-12-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

アリルイソチオシアナートを含む市販の加工食品 (調味浅漬, わさび漬け, のり佃煮) を用いて, 2-チオヒダントイン化合物の検索を行った. その結果, 調味浅漬とのり佃煮からグルタミン酸との反応物であるATH-Gluが生成していることを確認した. また, のり佃煮中にはATH-Val, ATH-Phe, ATH-Leuの存在も確認された.
著者
前田 安彦 小沢 好夫 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.261-268, 1979
被引用文献数
2 3

アブラナ科植物,およびその塩漬の風味成分である揮発性イソチオシアナートの分布を明らかにする目的で, 9種類の生鮮野菜,およびその中の5種類の塩漬についてGCおよびGC-MSによる分析を行った.<br> 1. 生鮮野菜のすべてから2-ブチル, 3-ブテニル, 4-ペンテニル, 2-フェネチルおよび5-メチルチオペンチルイソチオシアナートが見出された.<br> 2. アブラナ科植物の生鮮物では揮発性イソチオシアナートの分布に特徴が見られる3群に分けられた.ハクサイ,広島菜は3-ブテニル, 4-ペンテニル, 3-フェネチルイソチオシアナートを主成分とし,とくに4-ペンテニルイソチオシアナートの相対割合が高いこと,アリルイソチオシアナートを欠くことが特徴であった.野沢菜,日野菜カブ,天王寺カブ,金町コカブは3-ブテニル, 2-フェネチルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特微的な成分として4-メチルペンチル,および4-メチルチオブチルイソチオシアナートが存在していた.高菜,搾菜,蔵王菜はアリルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特徴的成分として<i>n</i>-ペンチルおよび3-メチルチオプロピルイソチオシアナートが存在していた.<br> 3. 塩漬野菜のイソチオシアナートはそれぞれの原料野菜における主要イソチオシアナートと一致していた.しかし塩漬中のイソチオシアナートの安定性が異なるためか,その相対割合は異なり2-フェネチルイソチオシアナートの安定性が高く思われた.<br> 4. 生鮮野菜,塩漬を通じてそれぞれ見出されたイソチオシアナートに相応するニトリルを含んでいた.
著者
宇田 靖 吉田 昭市 後藤 勝利 江頭 宏昌
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.559-562, 2007-12-15
被引用文献数
2

山形県在来のアブラナ科野菜である藤沢カブ(鶴岡市藤沢地区)と雪菜(米沢市上長井地区)およびそれらの漬物製品について特有成分であるグルコシノレート分解生成物をGC-MS分析した.<BR>生鮮藤沢カブでは,主なイソチオシアナート(ITC)は2-フェニルエチル-ITCであり,比較的少量の3-ブテニル-ITCおよび4-ペンテニル-ITCが存在した.しかし,揮発成分の大部分はこれらITCではなく,1-シアノエピチオアルカン類であった.<BR>一方,生鮮雪菜では3-ブテニル-ITCが主なイソチオシアナートであり,これに,比較的少量の4-ペンテニル-ITCと2-フェニルエチル-ITC, 4-メチルチオブチル-ITC, および5-メチルチオペンチル-ITCが検出されたが,生鮮雪菜の場合も藤沢カブと同様にニトリル類が高い割合で検出された.<BR>これに対して,両野菜の漬物では,いずれも生鮮物で多量副生した1-シアノエピチオアルカンの生成がほとんど見られず,ITCが主たる揮発成分となることが示された.したがって,両野菜の漬物はニトリルの生成が劇的に抑制された食物となっている.この点大変興味深い事象であり,このようなニトリル抑制機構については今後なお検討する必要がある.